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宇宙服・セルフレスキュー用推進装置

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宇宙服(うちゅうふく)とは、宇宙飛行士が宇宙空間で安全に生存・活動するために着用する、生命維持装置を備えた気密服のこと。宇宙船内で着用する船内服(与圧服)と、船外活動時に着用する船外服に大別される。

宇宙服には主に次の機能が要求される。
気密性と気圧の調整。
動きやすさ(気圧差によって膨張して動きにくくなるため)。
呼吸に必要な酸素の供給と二酸化炭素他の除去(呼気を循環して再使用するため)。
体温の調整、特に冷却(宇宙空間は低温ではあるのだが、宇宙服には宇宙飛行士の体温を逃がす場がなく、また太陽光線も強烈であるから活動時は温度が上昇することになる)。
宇宙塵、デブリ、紫外線など宇宙線からの防護。
外部との通信。
船外活動時、宇宙服内は与圧されているが周囲は真空のため、服がパンパンに膨らみ身動きを取るのはかなり大変な事である。実際、ソビエト連邦の宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフが1965年に史上初の宇宙遊泳を行った際、宇宙服が風船のように膨張したため命綱をたぐり寄せて船内に戻るのが予想以上に困難となり、危うく宇宙船に帰還できないところであった。

アメリカ航空宇宙局(NASA)で船外活動に用いられている宇宙服 船外活動ユニット (EMU) は、宇宙服本体と背中に背負う生命維持システム、TVカメラと照明装置からなる。1980年代初めに使われた有人機動ユニット (MMU) は背中に背負うように装着し、窒素ガスの噴出によって宇宙空間での姿勢の制御、移動を可能にするものであったが、大型で実用的ではなかったためすぐに使われなくなった。代わって1990年代からは小型のSAFER (Simplified Aid For EVA Rescue) と呼ばれる緊急時以外は使用しないセルフレスキュー用の装置が開発され、国際宇宙ステーション(ISS)での船外活動 (EVA) ではSAFERの装着が義務づけられている。

NASAのEMUは、運用圧力が0.3 - 0.4気圧 (4.3psi)、重量約120kg、活動時間はおよそ7時間程度(最長8時間)である。ロシアのオーラン宇宙服の方は、約0.4気圧 (5.7psi) とEMUよりも若干圧力が高いため、作業性は劣るが、作業準備(プリブリーズ)時間が短縮できる利点がある。EMUは1人では装着できないのに対して、オーラン宇宙服は背中の扉を開いて中に入るタイプであり1人でも装着できる点も優れている。

宇宙服についている温度調節などの切り替えスイッチの文字は鏡に映したように、左右逆になっている。宇宙服の中に入った状態では、頭を動かしてスイッチを見ることが出来ないために、腕に取り付けられた手鏡状の金属でスイッチなどを映して操作する際に見やすくなるようにしているのである。

アメリカのEMU宇宙服は、1着あたり1,000万ドル(約10億5千万円)の費用とのことである。また、宇宙服のサイズの関係から、船外活動に携わる宇宙飛行士は165cm以上の身長を求められる。

宇宙服の靴底にアメリカ国旗を彫ることで、アポロ計画の月面歩行時に国旗を刻印しようという計画が上がったが、他国の反対及び宇宙条約に反することから、禁止となった。

日本の取り組み
2009年現在、宇宙服を開発・保有している国はアメリカ、ロシア及び中国のみである。また、カナダと欧州で、研究が進められている。

日本は2011年に完成した国際宇宙ステーション(ISS)計画に参加し、NASA等と共同で将来の月面探査計画にも参加を行うことを考慮して技術蓄積を行うために、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は国産宇宙服の検討を行っている。開発を検討するのは次世代型の船内服及び船外服で、船外服の最終目標は運用圧力1気圧、重量20kg、活動時間一週間を目指す。現在は手動で行われている温度管理を自律的に行い、燃料電池を搭載(現在のEMUは銀亜鉛電池を使用)、グローブやブーツにパワーアシスト機能を盛り込むなど、最先端の技術を結集するコンセプトで検討が行われているが、具体的に開発が行われているわけではない。

セルフレスキュー用推進装置
セルフレスキュー用推進装置SAFER(-ようすいしんそうち、Simplified Aid for EVA Rescue : SAFER)とは、スペースシャトルや国際宇宙ステーション (ISS) の乗組員が船外活動 (EVA) を行なう時に誤って飛ばされてしまった場合でも、自分で戻れるようにするための小型・独立型の緊急用の推進装置である。不測の事態でのみ使うことを目的として、有人機動ユニット (MMU) を小型化・簡略化したものである。

STS-88(2A)以降、ISSで米国の宇宙服船外活動ユニット (EMU) を装着する船外活動では、SAFERの装着が義務づけられている。SAFERは、ジョンソン宇宙センターにある NASA のロボット工学部門で開発された。初めて使われたのは STS-64 で、命綱無しでの飛行テストが行なわれた。STS-88から実用装備が開始された。SAFER は重さ約34kg(76lb)であり、窒素ガスの噴射で推進力を発生させるものであり、ΔVの合計は少なくとも3m/s(10ft/s)である。使用する時は、右側の腰の下からハンドコントローラを取り出し、胸の所に設置して、操縦を行う。2009年末まで、試験目的以外で使用されたことは1度もない。

STS-121においてピアーズ・セラーズがEVAの最中に、SAFERの左側面にあるラッチを意図せずに何かにぶつけて、ラッチ解除の位置に移動してしまったため、マイケル・E・フォッサムがテザーでSAFERが外れないように仮固定し、船外活動は続けられた。その後のSTS-121、STS-115の船外活動では、ラッチが不意に開かないようにカプトンテープで予防的に固定された。 STS-116からは、ラッチの誤動作防止のためのカバーが開発されて装備されている。


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