68式3連装短魚雷発射管
対潜兵器は基本的に第1世代DDと同構成だが、アスロックの発射機として、従来用いられてきた8連装発射機(Mk.16 GMLSあるいは74式アスロックランチャー)にかえて、垂直発射式のMk.41 mod.9 VLS(16セル)が搭載された。搭載位置は艦橋構造物前方で、甲板内に収容されている。Mk.48を含め、これらの垂直発射装置は、汎用護衛艦としては初めての搭載例である。魚雷発射管としては、68式3連装短魚雷発射管HOS-302を艦中部両舷に装備している。
なお魚雷対策用の曳航式デコイについても、58DDと同じく、アメリカ製のAN/SLQ-25ニクシーが装備された。
電子戦
マスト
第1世代DDにおいては、当初はNOLR-6電波探知装置(ESM)とOLR-9ミサイル警報装置(RWR)、OLT-3電波妨害装置(ECM)が搭載されていた。その後、60DDからはRWRの機能を統合した新型のNOLR-8電波探知装置が搭載されるとともに、OLT-3と連接して電子戦システムが構築されるようになっていた。
本型では統合を更に推し進めて、電子攻撃と電子戦支援を兼用できるNOLQ-3電波探知妨害装置が搭載されている。これは63DDGで搭載されたNOLQ-2と同系列で、アメリカ海軍のAN/SLQ-32にほぼ匹敵するものと見られている。
またデコイ発射機としては、チャフロケットシステム(Mk.137 6連装デコイ発射機)が艦橋構造中段の両舷に2基ずつ設置されている。ここから投射される弾薬としては、従来のチャフロケット弾やIRデコイ弾(フレア)などのほか、平成7年度計画艦以降では投棄型電波妨害機も搭載されている。
航空機
艦載ヘリコプターとしては、当初からSH-60J哨戒ヘリコプターの搭載を想定しており、艦尾甲板のヘリコプター甲板にはRAST(Recovery, Assist, Secure and Traverse)発着艦支援装置が設置されている。またSH-60Kの開発後は同機の搭載にも対応した。
なお海自DDでは、艦載ヘリコプターの定数はいずれも1機となっている。58DDではSH-60クラスのヘリコプター2機を格納可能なように拡張したものの、設計の最終段階で急遽行われた措置であったために、あくまで必要に迫られた場合に応急的に2機を収容できるスペースを確保したという程度で、実際に2機搭載が行われることはなかった。これを踏まえて、本型では当初よりSH-60ヘリコプター2機の収容を前提とした設計が行われることになった。RAST発着艦支援装置の機体移送軌条は1条しかないため、運用には若干の困難が伴うものの、自衛隊インド洋派遣やソマリア沖海賊の対策部隊派遣の際には、実際に2機での運用(1機搭載、1機格納)が実施されている。
艦歴
「さみだれ」は、中期防衛力整備計画に基づく平成7年度計画4,400トン型護衛艦2235号艦として、石川島播磨重工業東京第1工場で1997年9月11日に起工され、1998年9月24日に進水、2000年3月21日に就役し、第4護衛隊群第4護衛隊に編入され呉に配備された。
2001年5月16日から8月3日の間、護衛艦「ひえい」、「ちょうかい」とともに米国派遣訓練に参加。
2002年9月17日、テロ対策特別措置法に基づき、「ひえい」と共にインド洋に派遣。同年12月まで任務に従事し、2003年1月3日に帰国した。
2003年9月4日から8日にかけて護衛艦「しらね」とともにロシア・ウラジオストックを訪問、8日にはウラジオストック沖で日露共同訓練に参加した。
2004年2月15日、テロ対策特別措置法に基づきインド洋に派遣。同年5月まで任務に従事し、6月29日に帰国した。
2006年、環太平洋合同演習 (RIMPAC) に参加。
2008年3月26日、護衛隊改編により第4護衛隊群第8護衛隊に編入された。
同年7月9日、オーストラリア海軍主催の多国間海上共同訓練カカドゥ2008に参加するため呉基地を出港する。7月30日に豪・ダーウィンに寄港、8月20日に呉基地に帰投する。
2009年3月14日、ソマリア沖の海賊対策のために護衛艦「さざなみ」と共に第1次派遣海賊対処行動水上部隊を編成し呉を出航、3月30日オマーンのサラーラ沖に到着した夕方から護衛活動を開始し、4月11日には、船員法第14条に基づきアデン湾西部でマルタ船籍商船を追跡していた不審船に対しソマリ語音声で海自艦艇を名乗り、不審船の商船追跡を中止させた。派遣期間中、計41回(121隻)の護衛活動を実施し、8月16日に帰国。
2011年3月7日、日中中間線に程近い白樺ガス田付近を警戒監視中のところ、中国国家海洋局所属のヘリコプターが水平約70m、高度約40mまで異常接近し翌8日に日本政府は中国政府に抗議している。
2011年6月20日、第9次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦「うみぎり」と共にソマリア沖・アデン湾に向かい呉基地から出航、34回の護衛を実施し同年12月3日帰国した。
2011年8月1日、編成替えにより第4護衛隊群第4護衛隊に編入された。
2013年11月13日、第17次派遣海賊対処行動水上部隊として「さざなみ」と共にソマリア沖へ向けて出航した。 同年12月10日から、第151合同任務部隊(CTF-151)の活動に初めて参加し、ゾーンディフェンスを行った。また、2014年3月2日には、エンジン故障で漂流中のイエメン船を救助する等の活動をし、同年5月17日に帰国した。
2017年4月23日から護衛艦「あしがら」とともにアメリカ合衆国海軍空母「カール・ヴィンソン」(CVN-70)を中心とした空母打撃群とともに共同巡航訓練を実施した。
2018年12月2日、第32次派遣海賊対処行動水上部隊としてソマリア沖・アデン湾に向けて呉基地から出航する。
登場作品
映画・テレビドラマ
『永遠の0』
「むらさめ」のヘリコプター格納庫や艦首・艦内などが、空母「瑞鶴」のものとして撮影に使用されている。
『ゴジラ×メカゴジラ』
「はるさめ」が登場。冒頭にて、千葉県館山市の港に停泊している。
『空へ-救いの翼 RESCUE WINGS-』
「はるさめ」が登場。クライマックスにて、主人公が乗る航空自衛隊のUH-60J救難ヘリコプターが燃料不足に陥ったことで、給油を行うため緊急着艦する。
『バトルシップ』
「あけぼの」が登場。冒頭にて、あたご型護衛艦「あたご」とともに、リムパック演習に参加するためパールハーバーに停泊しており、その後、リムパック演習に参加している様子が映されている。
『亡国のイージス』
「いかづち」と「はるさめ」が登場。
「いかづち」は、架空の護衛艦「うらかぜ」役で登場しており、反乱を起こした架空のイージス護衛艦「いそかぜ」と交戦し、「いそかぜ」から発射された2発のハープーンをシースパローと62口径76ミリ速射砲で迎撃するが、防ぎきれなかった1発が命中し、撃沈されてしまう。
「はるさめ」は、架空の護衛艦「はるかぜ」役で登場しており、現場に復帰した主人公の仙石先任伍長の新たな配属先となる。
『夢で逢いましょう』
「はるさめ」が登場。
アニメ・漫画
『WXIII 機動警察パトレイバー』
海上自衛隊の水中レイバー「りゅうじん」の運用護衛艦「DDL-181 つるぎ」の直衛(先導)艦として登場。また、船体にナックルラインの描写が見られる。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
国連軍の艦艇として登場。冒頭にて、国連軍の戦車隊やこんごう型護衛艦とともに、沿岸部から使徒の迎撃に当たる。
『ジパング』
アニメ版第1話に艦名不詳の同型艦が3隻登場。架空のイージス護衛艦「DDH-181 あすか」とともに、アメリカ海軍との合同演習に参加している。
『タクティカルロア』
直接の登場ではないが、「はるさめ」が取材協力艦となったことから、同作品の主役艦である「パスカルメイジ」の艦番号は、スタッフの「はるさめ」への感謝として「102」とされた。
小説
『MM9』
第1巻に架空艦「ひさめ」「しぐれ」が登場。直島諸島の荒神島に眠っていた怪獣「クトウリュウ」に対応すべく出動するも、目覚めたクトウリュウに2隻とも撃沈される。
『日本北朝鮮戦争 竹島沖大空海戦』
調査船「うずしお」の護衛艦隊構成艦として「ゆうだち」と「きりさめ」が登場。
「ゆうだち」は「うずしお」に乗り込んだ敵に対して機銃掃射を行い、「きりさめ」は敵潜水艦発見を知らせるため警笛を鳴らす。
『防衛庁特殊偵察救難隊』
第2巻と第4巻に「きりさめ」が登場。
第2巻では、難民の乗った船団に紛れて日本の領海に侵入しようとする東社会人民共和国海軍の高速戦闘艇群と戦闘を行い、数艇を撃沈するも、魚雷と機関砲による攻撃を受け損傷してしまう。
第4巻では、第2巻での戦闘で受けた損傷を修理するためにドック入りし、その際にイージスシステムを搭載する改修が行われる。復帰後、東人共和国が西日本へ侵攻してきたことで編成された、西日本統合任務艦隊に所属する第81任務艦隊の旗艦となり、艦隊を率いて再び東人共和国海軍と戦闘を繰り広げる。
ゲーム
『戦闘国家シリーズ』
日本の基本装備として組み込まれる。
その他
『JMSDF FLEET POWERS』
第1巻に「むらさめ」と「はるさめ」が登場。海上自衛隊の全面協力で実物の取材が行われており、対空戦闘訓練における実弾を使用した主砲の射撃、艦載ヘリの着艦・発艦訓練、洋上給油、CICをはじめとする艦内の様子などが映されている。
『奇跡体験!アンビリバボー』
番組内再現ドラマ「海の武士道」の撮影に「いかづち」が使用されている
さみだれ
基本情報
建造所 石川島播磨重工業東京第1工場
運用者 海上自衛隊
艦種 汎用護衛艦(DD)
級名 むらさめ型護衛艦
母港 呉
所属 第4護衛隊群第4護衛隊
艦歴
発注 1995年
起工 1997年9月11日
進水 1998年9月24日
就役 2000年3月21日
要目
基準排水量 4,550トン
満載排水量 6,100トン
全長 151m
最大幅 17.4m
深さ 10.9m
吃水 5.2m
機関 COGAG方式
主機 IHILM2500ガスタービン × 2基
川崎スペイSM1C × 2基
出力 60,000PS
推進器 スクリュープロペラ × 2軸
最大速力 30ノット
乗員 165名
兵装 62口径76mm単装速射砲 × 1門
Mk.15 Mod12 高性能20mm機関砲(CIWS) × 2基
90式艦対艦誘導弾 (SSM-1B)/ ハープーン4連装発射筒 × 2基
Mk.41 Mod6 VLS (VLA SUM) × 16セル
Mk.48 Mod4 VLS (ESSM 短SAM) × 16セル
HOS-302 3連装短魚雷発射管 × 2基
搭載機 SH-60J/K 哨戒ヘリコプター × 1/2機
C4ISTAR OYQ-9 戦術情報処理装置
OYQ-103 対潜情報処理装置
レーダー OPS-24B 対空
OPS-28D 水上
OPS-20 航海用
81式射撃指揮装置2型-31 × 2基
ソナー OQS-5
OQR-2C 曳航式
電子戦・
対抗手段 NOLQ-3-1 電波探知妨害装置
Mk.137 デコイ発射機 × 4基
その他 SLQ-25 対魚雷デコイ