複合艇は、ボートの形式のひとつ。硬式ゴムボートあるいは複合型ゴムボート(主に海上保安庁での呼称)と呼ばれることもある。
インフレータブルボートをもとに船底を繊維強化プラスチックなど硬質の素材としており、通常、船体はディープV型など滑走船型を採用している。これにより、低速時にはインフレータブルボートと同様に大きな予備浮力によって復原力が確保される一方、高速時の波浪衝撃にも耐えられる強度も確保されている。全体を硬性素材で製作したボートよりも軽量となるので高速を発揮でき、また、ブルワーク兼用のゴムチューブが防舷材としての機能を兼ねることから臨検などにおいて特に有用である。また、船底が硬性素材なので、通常のインフレータブルボートよりも船内作業時の足元が安定することから、民間用途でも多くが使われている。また、近年では、船底だけなく浮体も硬質材料で作ったものも登場しており、これはRBB(Rigid Buoyant Boat)と称される。RBBは通常のRHIBよりも丈夫なので独航型の小型哨戒艇などに採用されることが多い。
なお、RHIBは従来の搭載艇よりも軽量であることから、大掛かりなミランダ型ダビットではなく、より軽量なクレーンによる一点吊り下げ(シングル・ポイント・リフティング)による降下・揚収が可能となっている。近年では、乗員を乗せた状態で降下・揚収を行なえるクレーン・システムが主流になっている。
日本の海上自衛隊では、アメリカ海軍と同様の11メートル級RHIBを特別機動船(SB)の名称で採用し、特別警備隊が装備している。これはソマリア沖海賊の対策部隊派遣に参加した護衛艦にも、通常の内火艇に代えて搭載された。
また、これとは別に、7.5メートル級RHIB、6.3メートル級RHIBおよび4.9メートル級RHIBが複合型作業艇の名称で採用されている。7.5メートル級複合型作業艇は、海上自衛隊がもっとも初期から運用している複合艇で、アメリカ海軍やNATO諸国と同様、ゾディアック社製のハリケーンH733が採用されており、2005年より調達されはじめた改良型(MIDIO型)は、必要に応じて艦載化されるともされている。6.3メートル級複合型作業艇は28ノットの高速を発揮して臨検に用いることができるもので、はやぶさ型ミサイル艇やひうち型多用途支援艦に搭載されている。一方、4.9メートル級複合型作業艇は比較的低速で、従来型の作業艇と同様に洋上作業に重点を置いており、多くの護衛艦に搭載されるようになっている。
一方、海上保安庁や水産庁でも、複合型ゴムボートなどの呼称で、RHIBの採用が進められており、7メートル級RHIBは大型巡視船に、6メートル級RHIBは中・小型巡視船に、4.8メートル級RHIBは巡視船およびPC型巡視艇、漁業取締船に搭載されている。これらはいずれも高速力を発揮でき、臨検の任務に使用される。ただし救難用途では従来使用されてきた高速警備救難艇のほうが使い勝手が良いことから、これらも、RHIBと並行して搭載されることがある。