JR西日本287特急「くろしお」
287系電車は、川崎重工業・近畿車輛が車両の製造している西日本旅客鉄道(JR西日本)の直流特急形車両です。南紀方面の特急「くろしお」用として、6両編成6本(36両)と、3両編成5本(15両)の計51両も製造し運転開始。2012年3月17日のダイヤ改正より、12両(6両編成2本)が「くろしお」の4往復で営業運転を開始し、同年6月1日に9両(6両編成1本、3両編成2本)が追加投入されました。2012年6月1日現在、京都駅 - 白浜駅間で運用されています。
2009年6月1日から特急「サンダーバード」で営業運転を開始した683系4000番台の設計概念が踏襲されており、全電動車編成とすることによって、車両構体の共通化によるコスト削減が図られています。具体的には、パンタグラフ搭載スペースは全車種に2か所ずつ設けられたほか、どの車種にも車両制御装置・空気圧縮機・蓄電池を搭載できる。
アルミダブルスキン構造を採用し、オフセット衝突対策や衝撃吸収構造によって構造が強化されています。これは、2010年5月に落成した近郊形電車である225系電車に続き2例目です。車体配色も683系に準じているが、客室側窓下部のラインカラー帯については北近畿方面用の車両は、「北近畿」で馴染みがあり沿線の緑豊かな地域に映えるダークレッドを採用し、「くろしお」用の車両は283系電車で既に採用されているオーシャングリーンを採用しています。681系と同じ旋律のミュージックホーンが引き続き採用されています。
客室内にLED式の車内案内表示装置が設置され、グリーン車の全席と普通車の車端部座席にモバイル機器などの使用に対応したコンセントが設置されています。
3両に2両の割合で便所(小便器1か所と洋式大便器1か所)が設置。そのうち、編成中に1か所、女性専用トイレが設けられています。さらに、バリアフリー設備として多目的室や車いすスペースを編成中に1か所設置されています。
座席は683系4000番台に準じた回転リクライニングシートを採用し、グリーン車は茶色表地の1+2列配置で1,160mmピッチ、普通車は青色表地の2+2列配置で970mmピッチで展開しています。
「くろしお」で運用される車両は3両編成と6両編成です。
125系や321系、225系で採用された、0.5Mシステムと呼ばれる、運転に必要な機器類を1両にまとめて搭載する考え方を基本とし、すべての車両が電動車である。そのため、全車両に車両制御装置を搭載するが、集電装置・空気圧縮機の有無によって287形と286形の区別を行っています。車両制御装置 (WPC15A-G2) は東洋電機製造と東芝が製造を担当した。主回路部はIGBT素子による2レベル電圧形PWMインバータ1基で2基の電動機を制御する、いわゆる1C2M構成のVVVFインバータを搭載し、速度センスレスベクトル制御および純電気ブレーキに対応している。これに対し補助電源部は三相交流440V、75kVAの容量を有しています。主回路部と同じくIGBTを用いた2レベル電圧形PWMインバータをCVCF制御し、他車の補助電源部と並列運転を行うことで故障時の編成全体での冗長性を確保する設計です。集電装置はシングルアーム型パンタグラフ (WPS28C) が採用され、287形に搭載されています。バネ上昇、空気下降式で電磁カギ外し装置および上昇検知装置を備える。北近畿方面の特急列車用として落成した3両編成の一部と4両編成では、各車あたり2基搭載されるが、それ以外の編成では各車あたり1基搭載されています。なお、中間車両(モハ287形)では、集電装置の関節を車端側に向けているが、先頭車両(クモハ287形)の場合は、城崎温泉側に向けています。
主電動機は、センサレスベクトル制御を採用した1時間定格出力270kWのかご形三相誘導電動機 (WMT106A-G1) が1両当たり2基搭載。電動空気圧縮機は、285系、223系2000番台などの実績である除湿装置一体型の低騒音形スクリュー式 WMH3098-WRC1600 を採用し、モハ287形・クモハ287形に1基搭載されています。車両情報システムとして、321系・225系と同様のデジタル転送装置を採用した。伝達速度の高速化・高容量化を図っています。空調機器は、集中式の WAU704E が1両あたり1基屋根上に搭載される。冷凍能力は39,000kcal/hであり、フロン規制対応冷媒 (R407C) を使用しています。