PL42てわ あそ型巡視船(海上保安庁)
あそ型巡視船(あそがたじゅんしせん、英語: Aso-class patrol vessel)は、海上保安庁の巡視船の船級。分類上はPL(Patrol vessel Large)型、公称船型は1,000トン型。
予算要求時には高速高機能大型巡視船とも称されていた。建造費用は1隻あたり約53億円である。
1999年の能登半島沖不審船事件で出動した高速巡視艇は、船型過小のために外洋域で高速を維持できず、高速で逃走する不審船を追尾しきれなかった。この反省から、海上保安庁では、まず外洋域で高速を維持できる小型巡視船として同年度(平成11年度)の第2次補正計画で高速特殊警備船3隻を建造した。
また平成14年度計画では、改2-900トン型PL「むろと」の代船として1,000トン型PLの建造が盛り込まれていたが、こちらについても、不審船対処とともに、東シナ海および九州北方海域で、外国漁船の監視や不法入国・薬物密輸の取り締まりにあたることも視野に入れて、速力や操船性能の向上が企図されることになった。これによって建造されたのが本型のネームシップである。
その後、平成14年度予算の内示を受けた翌日、九州南西海域工作船事件が発生した。この事件で、不審船が予想以上に重武装であることが判明したことから、単独の巡視船ではなく、ユニット単位で対応する体制が整備されることになった。事件の教訓を反映して、ネームシップの設計・艤装が改正されるとともに、本型は、そのユニットの一員として期待されるようになった。
当初、警備救難部では、2,000トン型PL 1隻を指揮船として、本型2隻、高速特殊警備船3隻でユニット(機動船隊)を構成し、これを5隊整備することを構想した。しかし予算当局の査定を受けた結果、太平洋岸に配備予定だった2隊が削られるとともに、各ユニットからも1,000トン型1隻と高速特殊警備船1隻が削られて、4隻×3隊の整備となった。このため、本型も、平成15年度計画で2隻が追加建造されるにとどまった。
設計
上記の経緯より、本型は、北朝鮮の工作船に対処できる速力と武装を有する高速高機能大型巡視船として開発された。このことから、従来の1,000トン型PLがいずれも排水量型であったのに対し、本型では半滑走型の高速船型が採用された。また船殻重量軽減のため、250フィート級の大型船であるにも関わらず、船体は総アルミニウム合金製とされた。これは、総アルミの船体としては、当時世界最大のものであった。また推進器もウォータージェット推進とされている。
なお、2・3番船では、設計にあたり「高速船の安全に関する国際規則2000」(HSCコード)が適用された。このため、船橋構造や後部の吸気室など、艤装の一部が変更されている。
装備
主兵装としては、当初は30mm口径のブッシュマスターIIを、従来のエリコン 90口径35mm単装機銃と同様の単装砲塔に組み込んで搭載する予定であった。これは、赤外線捜索監視装置と連動することで射撃管制機能(FCS)を備え、精確な射撃を可能とすることとなっていた。
しかし九州南西海域工作船事件では、巡視船に対してRPG-7対戦車擲弾発射器が発射され、更に自沈した工作船を引き上げたところ、82mm無反動砲や携帯式防空ミサイルシステムのように、従来考えられていたよりも長射程で強力な兵器を搭載していたことが判明した。これらの兵器をアウトレンジして、遠距離(概ね5,000m以上)から威嚇射撃を行えるように、長射程の武装を搭載することが求められたことから、より大口径で長射程のボフォースMk.3 70口径40mm単装機銃に変更された。
センサとしては、FCSの一部となる赤外線捜索監視装置のほか、レーダーや遠隔監視採証装置を備えている。また船橋後部の舷側には夜間でも使用可能な停船命令等表示装置(電光掲示板)を装備した。
基本情報
種別 1,000トン型PL
命名基準 配備地付近の山岳の名前
就役期間 2005年 - 現在
前級 おじか型
次級 はてるま型
要目
総トン数 770トン
全長 79.0メートル (259.2 ft)
全幅 10.0メートル (32.8 ft)
深さ 6.0メートル (19.7 ft)
主機関 ディーゼルエンジン×4基
推進器 ウォータージェット推進器×4軸
速力 30ノット以上
乗員 30人
兵装 70口径40mm単装機銃×1基
搭載艇 7メートル型高速警備救難艇
複合型警備艇
FCS FCS射撃指揮装置 (40mm機銃用)
レーダー 対水上捜索用、航海用
光学機器 赤外線捜索監視装置 (FCS兼用)
遠隔監視採証装置