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旅客機 コックピット

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旅客機のコックピットとは、旅客機の操縦室のことである。操縦室で操縦などの機械操作を行う乗務員のことは運航乗務員やコックピットクルーと呼ばれる。21世紀現在では、電子化された航法装置や通信装置、エンジン制御などのアビオニクスと呼ばれる航空機に搭載されている電子機器がコンピュータによって高機能化されたことにより、定常的な操作の多くが人手を介さずに自動的に制御されるようになり、計器表示も多機能ディスプレイによるグラスコックピット化されている。こういったことから、小人数の運航乗務員で操縦・運航できるようになっている。

第二次世界大戦後すぐの旅客機は戦中の爆撃機に準じたコクピットを持ち、コクピットクルーは機長、副操縦士、航空機関士、航空通信士、航空士の5人だった。このうち音声無線機の全面的な導入などで航空通信士が、航空保安無線施設と航法装置の進歩で航空士が必ずしも必要ではなくなり、ボーイング727の時代には機長・副操縦士・航空機関士の3人体制で運航される時代となった。一方、単通路のナローボディ機では1960年代半ばから後半に初飛行したダグラス・エアクラフト社のDC-9やボーイング社のB-737では航空機関士を廃して機長と副操縦士という2人の操縦士だけで運航するようになった。

それからしばらくは大型機は3人乗務、小型機は2人乗務という時代が続いたが、コンピュータなどの発達によって、1970年代後半の同時期に開発が開始されたボーイング757/767とエアバスA310では、システムの監視をコンピュータが行うようになりワイドボディ機としてはじめて航空機関士を廃した2人乗務とした。また、これらの機種ではメーター式の多数の計器から読み取っていた情報を、コンピュータによって見やすく整理されたかたちで画面上に適宜表示するように改善したグラスコックピットが採用された。これ以降ボーイングとエアバスが開発した旅客機はすべて2人乗務のグラスコックピット機となっており、時期の差こそあれ他メーカーも同様である。世界的に見れば、現在でも旧式の旅客機を運航する航空会社は、2人の操縦士に航空機関士、さらには航空通信士なども加えた3人、4人、またはそれ以上の乗務員を必要とする機種が空を飛んでいる。その後、旅客機の新機種では、表示装置がCRTから液晶ディスプレイへ変わるなど進歩している。

計器と操作(グラスコックピット化された旅客機の計器と操作の概要)
MCP
MCP とはモード・コントロール・パネル (Mode Control Panel) の略で、コックピットの計器の中でも最も上方にあり、横に細長い。このパネルは、グラスコックピット化される以前から現在まで、形態、機能、操作方法等ほとんど変わっていない。

このパネルでは速度、高度、方位、昇降率の指定がおこなわれる。また、オートパイロットの操作(フライト・ディレクタスイッチに代表される自動操縦と手動操縦の操作)もおこなわれることから、オートパイロット・パネルなどとも呼ばれる。

PFD
PFDとはプライマリ・フライト・ディスプレイ(Primary Flight Display)の略で、このディスプレイは右席と左席に1つずつある。

姿勢(機首の上げ下げ、傾斜角)、高度計規正値(気圧補正値)、速度、高度、昇降率、ILS(着陸装置)の状況などが表示される。ボーイング767では、このパネルをEADIと呼んでいる。また、次のNDとこのPFDを切り替えて表示させることも可能である。

ND
NDとはナビゲーション・ディスプレイ(Navigation Display)の略で、このディスプレイでは操縦している旅客機のナビゲーターやフライトプラン(運航路線)、風向、風速に関する情報が表示される。このディスプレイも、PFDと同様で左右に1つずつある。車で言えば、カーナビゲーションに当たる。また、切り替えて気象情報を表示させることも可能である。さらに、ボーイング737-800、787では、垂直方向の表示(VSD: Vertical Situation Display)[7]もされるようになった。

EICAS
EICAS(アイキャスと読む)とはエンジン・インディケーション・アンド・クルー・アラーティング・システム(Engine Indication and Crew Alerting System)の略で、NDにはさまれる形で中央に上と下で2つある。上方のディスプレイにはエンジン情報、燃料、油圧、客室温度、電気、フラップ情報、システム関連などが表示される。また、緊急事態の時の警告やメッセージもこのディスプレイに表示される。

下方のディスプレイは、このディスプレイの操作などがおこなわれるが、必要がないときは何も表示されないように設定出来る。B777-300では、地上にいる際には機体後方に設置されたカメラの映像を表示させることもできる(自動車でのバックガイドモニターに相当する機能)。

FMS/CDU
FMS/CDUとはフライト・マネジメント・システム/コントロール・ディスプレイ・ユニット(Flight Management System/Control Unit)の略で、コックピットのやや下方にあり、左右に2つずつある。乗務員はこのユニットを操作し FMS に対し必要な情報の入力(燃料の搭載量や機体重量)および航法データの入手(目的地までの時間、距離、自機の位置)を行い、それらを元に航路の設定に用いる。

HUD
HUDとはヘッド・アップ・ディスプレイ(Head-up Display)の略で、操縦士の目線上に透明なスクリーンを置き、そこに情報を投影するものである。


EFB
EFBとはエレクトロニック・フライト・バッグ(Electronic Flight Bag)の略で、従来操縦士が持ち込んでいた紙に書かれたマニュアル類やチャートなどを電子化し、画面上に表示するものである。また、離着陸性能の計算をしたり、地上では空港の地図と自機の位置を表示することもできる。コックピットの両端に設置される。

操縦桿とサイドスティック
操縦輪とは、旅客機の操作をするもののひとつで、ハンドル状になっている。ピッチ(上昇と降下)とロール(左右の傾き、横滑り)などの操作をするための装置で、ハンドルにも無線の送信用・自動操縦解除などいくつかのボタンがついていることがある。また、エアバスが製造する旅客機では、エアバスA320シリーズから、操縦輪に換わってサイドスティックと呼ばれる装置が採用されている。これは操縦輪より小型でジョイスティックのように片手で操作でき、左席の左側と右席の右側に取り付けられている。操縦輪は引いたり押したり捻ったりだけで、回す必要がないので自動車のステアリングホイールのような全円ではない。

このように操縦桿とサイドスティックの2方式があるのには、ボーイングなどの操縦桿主流のメーカーと、エアバスのようなサイドスティック主流のメーカーとの考え方の違いに理由がある。例えばボーイングは、最終的に操縦判断を下すのはパイロット(人間)、対してエアバスはコンピューターが操縦において大きな役割を果たし、パイロットの操縦の負担を軽減する、という考え方を持っている。そのために、ボーイングは速度や姿勢などの微調整をそのまま行える、トリム・スイッチを取り付けられるよう操縦桿の方式を採用し、エアバスは逆に、単純化されたジョイスティックのようなサイドスティックの方式を採用したのである。どちらが効率的で安全かに関しては、現在でも議論が大きく分かれる(一例として、エアバス#エアバス航空機の特徴にあるように、自動操縦システムの設定が優先される仕様の問題など)。

スラストレバーとリバースレバー
スラストレバーとリバースレバーは、中央の下方にある。

スラストレバーはエンジンの噴射力を調節するためのレバーである。レバーは、エンジン毎に一つずつある。

リバースレバーは、エンジンの逆噴射をかけるためのレバーで、滑走路上に着地するとすぐに逆噴射と降着装置に備えられたブレーキが予め設定された強さで自動的にかかり減速する。逆噴射と聞くと強力そうだが、実はかなりの比率をブレーキが担っている。最近は環境や騒音問題、燃費向上の観点から、滑走路に余裕がある場合、アイドルリバースを多用する場合もある。ブレーキは油圧で動作し、油圧が動作しない駐機中は、すべての車輪に輪止めをはめる。このレバーもエンジンの数だけあるのが普通だが、エアバスA380の場合、エンジン4つに対し2本しかない。これは、エンジンの取り付け間隔が広く、万が一故障した際に直進が困難になることから第2、第3エンジンのみで逆噴射を行うためである。

予備計器
停電や故障したときなど、緊急事態に備えた予備計器も用意されている。水平・定針儀、速度計、高度計の3つはグラスコックピット化された当初、アナログ式が取り付けられた。ボーイング777以降は、ボーイング他社を含めてLCDタイプの予備計器物が搭載される傾向にあるが、アナログ式予備計器と同様に、常用計器とは別の情報源から表示を行なっており、主要計器の多重化が計られている。

レバーやスイッチ類
フラップ操作レバーはフラップの、降着装置(要は車輪である)操作レバーは車輪の形をしたノブが付いている。これは誤操作を防ぎ、視覚的にすぐ認識出来るようにした人間工学に基づくもので、旅客機に特有の作りである。

写真はボーイング747-400テクノジャンボを再現したものです。

 

 


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