ゆげしま(JS Yugeshima, MSC-679、MCL-731)は、海上自衛隊の掃海艇。うわじま型掃海艇の8番艇。艇名は弓削島に由来する。うじしま型掃海艇「ゆげしま」に次いで日本の艦艇としては2代目である。
「ゆげしま」は、平成5年度計画掃海艇379号艇として、日立造船神奈川工場で1995年4月10日に起工され、1996年5月24日に進水、1996年12月11日に就役し、第1掃海隊群に編入され呉に配備された。
1996年12月25日、第1掃海隊群隷下に第1掃海隊が新編され、同日付で就役した「ながしま」とともに編入された。
2000年3月13日、掃海部隊の改編により、第1掃海隊が掃海隊群に隷下に編成替え。
2004年2月16日、大湊地方隊函館基地隊第45掃海隊に編成替え。
2005年8月4日、ロシア、ペトロパヴロフスク・カムチャツキー沖で浮上できなくなったロシア深海救難艇AS28の救助に潜水艦救難母艦「ちよだ」、掃海母艦「うらが」、掃海艇「うわじま」とともに派遣される。空輸されたイギリス無人潜航艇が救出に成功したため同月7日に帰投する。海上自衛隊として初の国際救難任務である。
2009年6月20日から6月29日、硫黄島周辺海域で平成21年度実機雷処分訓練に参加。
2011年3月11日、発生した東日本大震災の災害派遣に参加。宮古湾(日出島)北側などで捜索救難を実施した。
2012年4月15日、陸奥湾で墜落した第25航空隊所属SH-60Jの捜索に参加。
同年6月17日から6月21日、硫黄島周辺海域で実機雷処分訓練を実施。
2015年2月1日から2月10日、伊勢湾で平成26年度機雷戦訓練に参加。
同年6月19日から6月28日、硫黄島周辺海域で平成27年度実機雷処分訓練に参加。
同年11月16日午前5時頃、宗谷岬北東65kmを西に航行するロシア海軍のオスカー型原子力潜水艦1隻、ウダロイ級駆逐艦「マーシャル・シャポシニコフ」、アムガ級補給艦「ダウガヴァ」を発見し、監視した。その後日本海に入った。
2016年7月8日午後16時頃、宗谷岬北東85kmを航行するロシア海軍のキロ級潜水艦1隻を確認し、監視した。その後宗谷海峡を西に通峡した。又、同年7月10日午前1時頃にも、宗谷岬東北東110kmを航行するウダロイ級駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」、「アドミラル・トリブツ」、宗谷岬東110kmを航行するソブレメンヌイ級駆逐艦「ビストルイ」、宗谷岬北東95kmを航行するアリゲーター型揚陸艦「ニコライ・ヴィルコフ」を発見した。その後宗谷海峡を西に通峡した。
同年11月13日、除籍される「まえじま」に代わり、転籍準備のため呉に向けて函館を出港。その後、JMU因島工場に回航した。
2017年3月27日、掃海管制艇に種別変更され、艇籍番号がMCL-731に変更。掃海隊群第101掃海隊に編入され、定係港が呉に転籍。
建造所 日立造船神奈川工場
運用者 海上自衛隊
艦種 掃海管制艇(中型掃海艇)
級名 うわじま型
母港 呉
所属 掃海隊群第101掃海隊
艦歴
発注 1993年
起工 1995年4月10日
進水 1996年5月24日
就役 1996年12月11日
2017年3月27日(掃海管制艇に種別変更)
要目
排水量 基準 490トン
満載 570トン
長さ 58.0m
幅 9.4m
深さ 4.2m
吃水 2.9m
機関 CODOE方式
主機 三菱6NM-TA(B)Iディーゼル × 2基
出力 1,800PS
推進器 スクリュープロペラ × 2軸
速力 最大速 14ノット
乗員 40人
兵装 JM61-M 20mm多銃身機銃 × 1門
搭載艇 4.9m型複合作業艇 × 1隻
ジェミニ・ディンギー処分艇 × 1隻
レーダー OPS-39-Y 対水上捜索用
ソナー ZQS-3-1 機雷探知機
その他 機雷処分具S-7 1形
53式普通掃海具(O型)改6
85式磁気掃海具S-6
71式音響掃海具S-2改1
うわじま型掃海艇は、海上自衛隊の中型掃海艇(Mine Sweeper Coastal, MSC)の艦級。
従来の掃海艇よりも深い中深度域に敷設された機雷への対処能力が付与されており、61中期防および03中期防において計9隻が建造された。
1970年代初期、優勢なアメリカ海軍原子力潜水艦に対抗して、ソビエト連邦軍は機雷の高性能化・深深度化を進めており、アンテナ機雷や短係止上昇式機雷のなかには水深2,000メートルまで敷設可能なものも出現してきた。このような深深度に敷設された機雷には、従来の掃海艇では対処困難であり、海中を航行する潜水艦にとって大きな脅威となった。
海上自衛隊においては、特に豊後水道・浦賀水道の2つのチョークポイントに機雷を設置された場合、それぞれ呉基地の第1潜水隊群、横須賀基地の第2潜水隊群の活動が大きく掣肘されることから、深深度の対潜機雷への対処能力の整備は非常に切迫したものとなった。このことから、61中期防においては、中深度域での機雷対処能力を備えた掃海艇(MSC)と、深深度機雷に対処するための1,000トン型掃海艦を整備することとされた。後者として整備されたのがやえやま型(01MSO)であり、前者として整備されたのが本型である。
設計は、おおむね先行するはつしま型最終型(62MSC)を踏襲している。使用樹種は下記のとおりで、キール摩材がケヤキとされた以外はおおむね62MSCと同一である。
ベイマツ - キール・スケグ、船底縦通材、チャイン材、フレーム、外板・甲板
ケヤキ - キール摩材
タモ - 合板
主機関は、62MSCと同系列で出力を増強した6NMU-TA(B)Iに更新された。これは三菱重工業のSU系列ディーゼル(S6U)を非磁性化して技術研究本部が開発した4サイクル6気筒ディーゼルエンジンである。また感応掃海具の電力を賄うための掃海発電機は、62MSCと同じく6NMU-TK-II型1基を搭載する。
装備
センサ
機雷探知機としては、62MSCで搭載されたZQS-2をもとに中深度海域に対応して発展させたZQS-3-1 機雷探知機が搭載された。原型となったZQS-2は、イギリス・プレッシー社のASDIC 193型を参考に技術研究本部が開発したもので、機雷探知用として100キロヘルツ、機雷類別用として300キロヘルツを使用することで、目標を探知すると共に確実に機雷と類別できるようになっていた。
また、対水上捜索レーダーも、62MSCで搭載されたOPS-9の改良型であるOPS-39-Yとされている。
機雷掃討
本型では、機雷処分具は中深度に対応したS-7 1形に更新された。これは有線式の遠隔操作無人探査機(ROV)で、円筒形の機体の後方には可動式のスラスターが、前方には上下動用のスラスターがトンネルを設けて設置されている。先端には精密走査用のイメージング・ソナー(超音波水中映像装置)、低光量ビデオカメラおよびサーチライトが装備されている。
機雷処分用として胴体下に処分爆雷1発を搭載しており、海底の機雷に向けて投下して破壊する。
機雷掃海
係維掃海具
係維機雷に対しては、28MSC以来装備化されたオロペサ型係維掃海具である53式普通掃海具(O型)をもとに、対艇掃海によって中深度域の掃海に対応した53式普通掃海具(O型)改6が搭載された。オロペサ型係維掃海具は、展開器と呼ばれる水中凧によって掃海索を左右数百メートルに展開するとともに沈降器によって一定深度に沈下させて曳航し、機雷の係維索を引っ掛けて、掃海索の数カ所に装備した切断器によってこれを切断していくものである。
感応掃海具
磁気機雷に対しては、62MSCと同じく85式磁気掃海具S-6が搭載された。一方、音響機雷に対しては、62MSCの搭載機を発展させた71式音響掃海具S-2改1が搭載された。これは1個の発音体で低周波と中周波を同時発生することができた。