北陸鉄道に在籍した電気機関車の1形式です。1954年に東洋工機によって1両が製造され、竣工直後より2010年の廃車まで、終始石川総線(石川線)在籍でした。
製造された1954年当時、石川総線においては南部の金名線沿線を流れる、手取川の支流である大日川の上流に大日川ダムおよび大日川第1・第2発電所の建設が1952年より開始されており、膨大な量の資材輸送が実施されていました。そのため西金沢で国鉄線と接続し、資材輸送に好適な条件を備えていた石川総線の貨物輸送量は急速に増大しつつありました。
この時点で、石川総線には前身である金沢電気軌道時代に新造された20t級凸型機であるED201と、ダム着工に先立つ1951年に加南線から転用された木造箱形機のED251の2両が本線用電気機関車として在籍していましたがED201の性能不足や検査時の予備車確保を含めて考慮すると、これら2両では到底資材輸送の需要を充足できず、またED251は戦時中に粗製濫造された木造車であったため、その車体の疲弊が目立っていました。このような状況下で北陸鉄道は新規に本格的かつ強力な箱形30t級電気機関車の導入を決定、車体を担当する東洋工機を主契約社として製造されたのが本形式です。
竣工後、大出力とこれによる大きな牽引力によって本形式は石川総線貨物列車運用の主力車となりました。また、本形式の投入によって予備が確保されたことから1956年には自社工場でED251の鋼体化工事が実施されることとなり、台枠を流用しつつ本形式の構成を参考にした車体を新造、新たにED311として竣工しました。1960年には、石川総線の架線改修工事が完了したため、本形式は集電装置が一旦トロリーポールおよびZ型パンタグラフの併設となった後、通常の菱枠パンタグラフに変更されています。以後はED201、ED311、それに本形式の電気機関車3両体制でダム工事資材輸送が完遂されたが、その終了後、沿線貨物需要の減少で1973年にED311が余剰廃車となり、さらに1976年4月には石川総線の貨物営業そのものが廃止されるに至りました。このため、それ以降本形式は冬季の除雪用としてED201と共にデッキへの補強枠取り付けによる大型スノープラウ装着を実施の上で残されることとなりました。もっとも豪雪時にはその大きな自重と出力が頼りになることから、本形式は金名線の短縮時にも廃車されることはなくその後も折を見て改修の手が入れられており、1994年には老朽化した台車・電装品が交換され、台車と主電動機が西武鉄道から購入した同社701系用住友金属工業FS342および日立製作所HS836Frbに、主制御器も自社手持ちのHL-74に、ブレーキはFS342が台車ブレーキ方式であることから電車用のSME非常直通ブレーキへそれぞれ交換され、併せて大幅な出力アップが実現している。以後も本形式は待機状態が長く続いたが、最終的に2010年に廃車となりました。廃車後、本形式は無償譲渡され、鳥取県八頭町の若桜鉄道若桜線隼駅にて保存されることとなり、同年11月に同地へ輸送、設置されています。
全長:11,600mm
全幅:2,700mm
全高:4,150mm
運転整備重量:30.0t
電気方式:直流600V(架空電車線方式)
軸配置:B-B
台車形式:住友金属工業 FS342形
主電動機:日立製作所 HS836Frb (120kW)×4基
歯車比:1:5.6
1時間定格出力:480kW
動力伝達方式:歯車1段減速、中空軸平行カルダン駆動方式
制御方式:抵抗制御、2段組み合わせ制御
制御装置:東洋電機製造 HL-74形電磁空気単位スイッチ式
ブレーキ方式:SME非常直通ブレーキ、手ブレーキ