指宿のたまて箱(いぶすきのたまてばこ)は、九州旅客鉄道(JR九州)が指宿枕崎線の鹿児島中央駅 - 指宿駅間で運行している特急列車である。愛称「いぶたま」。
JR九州は新幹線の開業効果を沿線外にも広めるため観光列車の新設を行っており、「指宿のたまて箱」も2011年(平成23年)3月12日の九州新幹線(鹿児島ルート)の全線開業にともなって翌13日から運転を開始した。特別快速「なのはなDX」を置き換えて、指宿枕崎線では初めての定期特急列車の運転となった。当列車は日本で最も南を運行する特急列車となっている。
平日昼に指宿駅を発着する列車では、指宿市役所職員の有志が沿線や駅ホームに立ち、手を振って歓迎する光景がみられる。
列車名の由来
薩摩半島の最南端にある長崎鼻一帯に伝わる浦島太郎伝説の玉手箱にちなんでおり、「いぶたま」の愛称で運転される。
運行概況
日中3往復運行されている。所要時間は約55分で前身の「なのはなDX」とほぼ同じ。
全席指定席となっている。
列車は2両運転時は車掌の乗務しないワンマン運転で、客室乗務員が乗務し検札や車内販売・観光案内などを行う。3両運転時には車掌が乗務する。
停車駅
鹿児島中央駅 - 喜入駅 - 指宿駅
特別快速「なのはなDX」の代替であるものの、途中の停車駅は喜入駅のみに削減されている。
使用車両
通常は2両編成で、キハ47形気動車の改造車(キハ47 8060・キハ47 9079)で運転されている。土・日・祝日や連休などの繁忙期には1両増結(キハ140 2066)して3両編成で運行される。また、地方交通線である指宿枕崎線の軌道の不整によるレールの継目部の落込みである継目落ちにより発生する上下振動を低減するため、減衰力制御弁付きの可変減衰上下動ダンパを初めて採用しており、台車の枕ばね(コイルばね)に平行して取付けられていた、従来の上下動オイルダンパと交換する形で装備されており、車体には4つの加速度センサーと制御装置を搭載して、加速度センサーにより検知された上下振動加速度を元に制御装置が減衰力指令値を計算して、可変減衰上下動ダンパにその指令値を送り、減衰力を可変させることで上下振動を抑制している。
デザインは水戸岡鋭治。小倉工場で約1億6000万円をかけて改造された。外部塗装は海側(下り方向に向かって左側)側面と前面の海側半分が白色、山側(下り方向に向かって右側)側面と前面の山側半分が黒色。
車内は2人掛け回転リクライニングシート、大型のテーブルが設置された4人用のコンパートメント席・ソファー席・海側の窓側を向いた1人掛け席が用意されており、座席の種類はバラエティに富んだものになっている。このほかにも子供用に海側を向いたキッズチェアが用意されており、その後ろには保護者が監視するためのソファー席が用意されているが、これらはフリースペースの設備の一部のため、マルスでの座席番号の割り当てはない。また浦島太郎伝説にちなみ、ドアが開いた際には玉手箱の煙に見立てたミストが連結面寄りの噴出口より噴射される。
車両検査時は「はやとの風」で運用されている車両を使用する場合もあった が2012年(平成24年)3月19日からは元「はやとの風」用のキハ140 2066が塗装変更され予備車・増結車として加わっている。
また、専用車両の検査の際は1両ずつ検査に出し、残った1両と予備車両(キハ140 2066)で運行される。このため、専用編成が検査に出ている時期は土日であっても2両で運行される場合がある。また、予備車両は「はやとの風」の予備車両としても使用されるため、「はやとの風」の車両が検査に出ている時期も常時2両編成で運行される。
指宿枕崎線の観光特急として
2011年(平成23年)3月12日:特別快速「なのはなDX」を廃止し、代替として特急「指宿のたまて箱」を鹿児島中央駅 - 指宿駅間に3往復新設。しかしこの日は東北地方太平洋沖地震による津波警報発令で指宿枕崎線が運休となっていたため、実際の運転開始は翌13日からである。
2012年(平成24年)3月19日:元「はやとの風」用のキハ140 2066が予備車・増結車として加わり、3両体制となる。
2014年(平成26年)
2月4日:指宿駅 - 枕崎駅で臨時列車として試験的に運行。
6月21日:午前11時5分頃、生見駅 - 薩摩今和泉駅間で、指宿発鹿児島中央行き「指宿のたまて箱2号」が線路内に流入した木および土砂に乗り上げ、1両目のほぼ半分が脱線、乗客・乗員47名中、乗客13名と乗員2名の計15名が負傷。
6月28日:喜入駅 - 指宿駅間の運行再開。「指宿のたまて箱」は引き続き運休し、「指宿のたまて箱」と同じ運転時刻・停車駅で全車自由席の臨時快速列車を運転開始。
7月12日:「指宿のたまて箱」運転再開。
指宿のたまて箱
概要
国 日本
種類 特別急行列車
現況 運行中
地域 鹿児島県
前身 特別快速「なのはなDX」
運行開始 2011年3月12日
運営者 九州旅客鉄道(JR九州)
路線
起点 鹿児島中央駅
終点 指宿駅
営業距離 45.7 km (28.4 mi)
使用路線 指宿枕崎線
車内サービス
クラス 普通車
座席 普通車指定席
技術
車両 キハ140形2000番台・キハ47形8000・9000番台気動車(鹿児島車両センター)
軌間 1,067 mm
電化 非電化