名鉄2000系電車(めいてつ2000けいでんしゃ)は、名古屋鉄道の特急形車両。車両愛称は「ミュースカイ」
空港線を介した中部国際空港(セントレア)へのアクセスを目的に開発された車両である。最初の編成は2004年(平成16年)5月に落成、翌2005年(平成17年)1月29日の空港線開業に合わせて運用を開始した。なお中部国際空港は少し遅れて同年2月17日に開港となった。
車両には「ミュースカイ」の愛称がある。これは就役を前に車両名を一般公募した際、名古屋鉄道の略称である名鉄(Meitetsu)の頭文字「M」と名鉄特急の特別車の愛称「μ(ミュー)」と空港をイメージさせる空の意味である「sky」を組み合わせた「ミュースカイ」がふさわしいと判断し命名した。2008年12月からはこの車両を用いる専用の列車種別としても使われている。
全車両の製造を日本車輌製造が担当した。2005年度のグッドデザイン賞、2006年度のローレル賞を受賞している。1000系全車特別車編成および1600系が撤退した現在、全車特別車特急の部類としては同系の後継車両としての意味合いが強くなっている。なお、名鉄内での運用上の略号は「C4」で、3両編成時代は「C3」であった。
2017年4月1日現在、4両編成12本48両が在籍している。このうち、1・2次車の10本は落成時は3両編成だったが、後に4両編成化されている。
車体長19.5m級軽量構造の鋼製の車体である。車体傾斜装置搭載のため車体幅は2,700mmと、やや狭く取られた。
1両当たり片側2つのドアを持ち、ドアは大きな荷物を持った旅客が利用しやすいようにとして幅を1,000mmと(高さ1,900mm)と広く取った両開き構造を採用した。2編成を連結して運用することに備え、先頭車両中央部に貫通扉を設けて連結した際にも通り抜けが出来るように配慮されているが、普段はカバーが掛けられて凹凸も少なく車体と一体感を出すように工夫されており、中部国際空港の愛称であるCentrair(セントレア)のロゴが貼られている。連結の際には運転席からのボタン操作一つでカバーが外れて幌が露出する「半自動幌装置」を採用した。動作指令は電気指令式で、動力源は圧縮空気である。開放の失念を防止するために幌連結中は自動解結装置の電源が断たれる回路構成となっている。前頭の灯具類は車体外殻に内蔵された形となっており、中心側から順に前灯・標識灯・フォグランプのHID3連式でそのすぐ下に横長のLED尾灯を備える。
カラーリングは白色を基調にアクセントに青色を採用するなど、これまでの名鉄の車両にイメージとは一変している。これは中部国際空港が伊勢湾の海上にあるため、空と海の爽快なイメージから連想する「青と白と水の透明感」をコンセプトとしたものとされている。
屋根上に搭載された冷房装置は集約分散式で、能力は従来の特別車と同じ15,000kcal/h×2だが、室外機カバーは標準的な蒲鉾形となった(型式:東芝 RPU-6026)。車体前面および側面の種別・行先表示器は従来の字幕式に代わり、三菱電機製のオーロラビジョン R-STAYが採用されたが、後に三菱が製造を中止したため、以後に登場した車両は全てLED式の行先表示である。
内装は基本的に先に登場した1600系に準ずる。
特急車両らしく出入り口と客室はデッキで仕切られているが、扉を大きな両開き構造とし荷物の出し入れや通勤・通学に配慮したものとなっている。客室内に入った通路両側には大型荷物置き場を設置されている。
客室内はライトグレーを基調とし、天井高さは2,240mmで1000系パノラマSuperよりも170mm高くされた。照明は落ち着いた間接照明の天井灯を主体に荷棚部分に補助ライトを備える。天井中央のLEDのスポットライトと列車運行に合わせて発光してゆっくり点滅制御を行い、中部国際空港駅などに接近すると空港の誘導灯のように雰囲気を作る荷棚飾灯でアクセントを付けている。座席は全車両・全ての座席が特別車仕様であり、背面に折りたたみテーブルを持つ2+2列の回転式リクライニングシートで生地の色は青緑色系となっている。シートピッチ(座席の前後間隔)は1000系と同じ1,000mmであるが、暖房用ヒーターの小型化などにより足元の空間が広く使えて居住性は向上している。側窓の天地寸法は805mm、窓框高さは735mmで名鉄特急の特徴、連続窓を採用、カーテンは車体傾斜を考慮して従来のプリーツカーテンを廃し、巻き上げロールカーテンのフリーストップ式とし、座席と同じコンセプトの模様にした。トイレは編成内の1両に車椅子対応仕様が備えられている。
名鉄特急の代名詞と言える展望車は連結時の貫通幌対応という条件と、バリアフリー化を優先させたため、設置を断念したが、代替として運転席にライブCCDカメラが設置されており、デッキとの仕切り扉上部に設置された22インチの液晶ディスプレイに表示されるようになっている。このディスプレイは客用案内表示も兼ねており、車両案内・車両の現在走行位置・中日新聞ニュースなども表示される。また、バリアフリー対策として一部に車椅子スペースを整備し、ドアチャイムの装備と、乗降扉の開閉時に注意喚起の自動放送が流れる様になっている。
運転・走行機器
名鉄の積年の課題だった曲線区間の高速走行のため、1601Fで試験を行った空気バネを用いた「車体傾斜装置」を採用して車体を最大2度傾斜させ、曲線の多い常滑線において曲線通過速度を既存車に比べて5 - 15km/h向上させている。
主電動機(モーター)の制御方式は、IGBT素子を用いたVVVFインバータを採用した。主電動機出力は170kW/基となっている。動力車の数を減らしたために空転が多発した1600系の反省を活かし、動力車を3両編成中2両としたが、従来通りの1両4個モーター搭載では過剰性能となるため、1両に搭載する主電動機を3個とし、4軸のうち1軸はモーター非搭載の実質3/4M車としており、モーター非搭載の軸にモーターを追設し、新たに付随車(T車)を増結することで将来の4両編成化も見据えたものとしていた。後述のように、この増結は早くも2006年度中に行われたが、実際には新造車の4軸のうち2軸にモーターを装架した2/4M車が増結されている。したがって車軸数で見た場合のMT比は登場時より1:1で変わっていない。
起動加速度は2.3km/h/sで近年のVVVFインバータ制御車としては低い部類に留まる反面、名鉄の特急形電車の常として高速性能は十分に確保されており、平坦線において起動から50秒で100km/h、65秒で120km/hに達する。
補助電源装置は、当初3両分を負担する120kVAのSIVがモ2100のみに搭載され、さらに4両化時に増結されたモ2150にも同じものが搭載された。電動空気圧縮機はク2000にC-1500型、モ2150にはC-1000型が搭載され、1組成中に2種類混在する。
電気指令式ブレーキを採用し、同じシステムを持つ3000番台通勤形電車との連結(総括制御)運転が可能である。本系列については車体傾斜装置が活かせなくなるため営業運転では実施しないことになっているが、試運転や回送列車で行われている。
保安装置
自動列車停止装置(ATS)と列車無線を備える。ATSは名鉄独自のM式ATSに加え、ATS-Pが併設されている。これはM式ATSが地上子の配列によって制限パターンを発生し速度超過時には非常ブレーキを作動させる機構であり、一部の曲線においては通常の制限速度に合わせ地上子が設置されているため、本則を超えた速度での通過を許容しないためである。これを解決するためにATSの制限を変更しては他の車両の安全性(と乗り心地)に悪影響を及ぼすため、データ通信により車種判別のできるATS-Pを設置し本系列のみ制限を緩めている。ATS-P設置区間は常滑線、空港線のみであり他線区では車体傾斜機能は使用しない。
運用
2013年現在の定期運用では以下の区間で専用種別「ミュースカイ」としてのみ運転されている。
常滑線・空港線:全線(神宮前駅 - 中部国際空港駅)
名古屋本線:神宮前駅 - 名鉄名古屋駅 - 名鉄岐阜駅
犬山線:全線(枇杷島分岐点 - 新鵜沼駅)
各務原線:新鵜沼駅 - 三柿野駅
広見線:犬山駅 - 新可児駅
なお、臨時列車などでは上記区間以外に名古屋本線の伊奈駅まで[2]、尾西線、蒲郡線[3]、河和線、知多新線と西尾線や各務原線経由で名鉄岐阜駅までの入線実績がある。
他系列車両との併結は原則的にはないが、平日に限り名鉄岐阜 - 茶所検車場間の回送列車で3100系または3150系との併結が見られる。
主要諸元
起動加速度:2.3km/h/s(単独走行時)2.0km/h/s(3500系、3700系、3100系、3300系、3150系と併結した場合)
減速度:3.5km/h/s(常用)4.2km/h/s(非常:単独走行時)4.0km/h/s(非常:3500系、3700系、3100系、3300系、3150系と併結した場合)
営業最高速度:120km/h(130km/h準備)
平坦均衡速度:130km/h以上
主電動機:かご形三相誘導電動機(170kW・1,100V・114A・1,960rpm)
歯車比:96:17=5.65:1
定員:特別席138名→181名*1(2000系)
2006年度以降4両化に伴って順次181名に増強された。