タキ1000形貨車は、1993年から製作されているガソリン専用の貨車(タンク車)である。日本石油輸送または日本オイルターミナルが所有する私有貨車で、日本貨物鉄道(JR貨物)に車籍編入されている。
1984年2月ダイヤ改正で貨物列車の輸送体系が拠点間直行方式に改められて以降、貨物列車の運用は行先別・荷種別に集約する「専用列車」への転換が進行した。コンテナ列車は従来よりコキ50000系やコキ100系などを用いた最高速度95km/h以上の高速貨物列車が主体となったが、タンク車など一般の車扱貨物に用いられる貨車は依然として最高速度は75km/hにとどまり、到達時分の短縮やダイヤを組成する際の懸案事項となっていた。
これを受け、専用列車のうち特に占める割合の大きい石油類専用貨物列車の高速化を図る目的で製作されたのが、本形式である。タンク車初の高速貨車として開発された本形式は、輸送効率と高速走行とを両立させた形式として、2016年現在も製作が続いている。
車体の基本構造はタキ43000形のフレームレス構造を踏襲したが、本形式では車高を下げてタンク体の形状を変更し、昇降ハシゴ・タンク上部の踏み板は軽量化のためアルミニウム合金を使用した。タンク体が大型化したため、車両限界に抵触しないよう手すり高さを低くしている。以上の仕様変更によって荷重はタキ43000形の43tから45tに増大した。台車はコキ100系のFT1形を基本とし、車高を下げるため直径810mmの小径車輪を用いたFT21形を採用した。最高速度は従来車両の75km/hから95km/hに向上している。軸重は15tのままで、運用線区は限定される。
外部塗色は所有者によって異なり、車体帯や標記類の有無で以下のパターンが存在する。日本石油輸送所有の車両は、タキ43000形243000番台の後期車と同一のグリーンとグレーの2色塗り分けとされた。新日本石油の油槽所と製油所の間で使用される一部車両については、タンク体右側に新日本石油の「ENEOS」ブランドマーク とエコレールマークの標記が施されており、アメリカ空軍横田基地のジェット燃料輸送に使用されている車両は、積載物を表す米軍表記(JP-8等)が施されている。日本オイルターミナル所有の車両は、同社伝統の青15号(インクブルー)で塗装されている。初期の車両 (93 - 102・303 - 347・373 - 417・443 - 462) はスカイブルーと銀色の帯を入れていたが、2004年 - 2005年製の643 - 676はタキ43000形・タキ44000形と同様の青単色塗装で導入されるようになり、2006年度以降製作の693 - 752は同社の40周年記念としてカラフルな「矢羽」をあしらったステッカーを車体に貼付していたが、いずれも後年の検査時に順次青単色塗装に変更されて消滅している。
2000年に日本オイルターミナル所有の338 - 347の10両が日本石油輸送に移籍し、全般検査まで旧社紋部分の上に新社紋を貼付する暫定措置を施された。2007年以降も同様の移籍車両が発生し、それらも検査時の再塗装まで暫定的に社紋の張り替えが行われている。2016年9月までに968両が製造され、日本オイルターミナルと日本石油輸送の両社が従来用いてきたタキ9900形・タキ35000形などの35t積タンク車、安全性は高いが積載効率に劣るタキ38000形 (36t積) やタキ40000形 (40t積) 、老朽化したタキ43000形の43t積車両を順次置き換えている。
主に名古屋地区から東北地区の地域で石油専用列車に使用され、線区によっては本形式のみの編成やコキ100系・コキ200形との混結で組成された最高速度95km/hの高速貨物列車(列車種別:高速貨B)にて運転されている。日本オイルターミナルでは本形式のみで組成された高速貨物列車の愛称を「スーパーオイルエクスプレス」と命名している。
JR貨物タキ1000形貨車
基本情報
車種 タンク車
運用者 日本貨物鉄道
所有者 日本石油輸送
日本オイルターミナル
製造所 日本車輌製造、川崎重工業
製造年 1993年 -
製造数 968両(2016年9月現在)
常備駅 郡山駅、根岸駅他
主要諸元
車体色 グリーン/グレー、青15号、他
専用種別 ガソリン
化成品分類番号 燃32
軌間 1,067 mm
全長 13,570 mm
全幅 2,960 mm
全高 3,918 mm
荷重 45 t
実容積 61.6 m3
自重 17.2 t
換算両数 積車 6.0
換算両数 空車 1.8
台車 FT21
車輪径 810 mm
台車中心間距離 9,370 mm
最高速度 95 km/h