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JR東海313系電車 

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JR東海313系電車
313系電車(313けいでんしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)の直流近郊形電車である。

概要
1999年当時、JR東海は日本国有鉄道(国鉄)時代に製造された車両から省エネルギータイプの自社形車両への置き換えを進めており、特急形車両では定期列車の車両置き換えを完了していた。一方、近郊形車両においても211系5000番台や311系、213系5000番台を投入してきたが、両系列の投入完了後も103系・113系・115系・117系・119系・123系・165系といった国鉄形車両が半数以上を占めており、これらの国鉄形車両の置き換えを目的として登場した車両である。

車体断面は同社における最小の車両限界である身延線を基準に決定され、同社のすべての直流電化路線での走行を可能とした。性能面では従来の自社形車両と比べてもパワーアップが図られており、311系に代わって東海道本線における大多数の快速列車への集中投入といった都市部の近郊輸送に留まらず、後述するローカル区間でのワンマン運転や有料ライナー列車まで、あらゆる需要に対応しており、同社の標準車両と位置付けられる。そのため、車内仕様や機器構成により、当初から細かな番台区分が設定されている。

1998年度末に77両、1999年度に104両が投入され、いずれも1999年に営業運転を開始した。これにより同社の103系が全車廃車となり、165系も普通列車の定期運用から離脱し、東海道本線名古屋地区で113系の定期運用が消滅し、さらに113系0番台が全車廃車となるなど国鉄形車両の淘汰を進め、同社における自社形電車の比率を55%にまで向上させた。2001年にも6両が増備された。

2006年度には204両もの大量増備が行われ、総計391両を有する同社の最大両数系列在来線電車となるとともに、同社の国鉄形車両である113系2000番台、115系、123系を淘汰した。さらに、2010年から2013年にかけて120両が増備され、117系と119系の淘汰を完了した後は同社の在来線国鉄形電車は211系0番台8両を残すのみとなり、ほぼすべてが自社形車両に更新され、2014年度には2015年3月1日の武豊線電化に伴い、28両が増備された。これによって、313系は総計539両となり、同社の在来線電車の過半数を占める一大勢力となった。

313系は15年以上にわたって製造されたため、導入年次による仕様変更も多い。そのため、本稿ではまず各次車についての共通事項を述べ、続いて導入年次による仕様の差異を初期車、3次車、4次車、5次車に分けての紹介。


性能・仕様 共通事項
基本構造
313系は、同社の特急形車両である373系を基本とし、近郊形に応じた変更及び改良がなされている。また、編成は番台区分に応じ2・3・4・6両編成が存在する。

車体構造
211系以降の近郊形としては一般的な、片側3扉を有する軽量オールステンレス製車体であり、乗務員室部のみ普通鋼製で、連結時に通行可能な貫通扉と貫通幌(幌受)を備える。前面窓は側面に回り込むパノラミック・ウィンドウで、運転席側上部に行先表示器、助士席側上部に種別表示器、前照灯は前面窓下部と貫通扉上部に計4個、尾灯は前面窓下左右に前照灯と一体化されて2個設置されている。

1990年代以降に導入されたJR他社車両のステンレス車は側板のビード(浮き出し線)が省略されているものが多いが、本系列は211系や311系と同じ本数のビードがある。なお、雨樋部は張り上げ屋根構造である。扉間の客室窓は1枚固定式であり、窓柱は荷重を受けない構造として窓ガラスの内側に設け、車内仕様による窓割りの違いに対応している。戸袋窓・妻窓は設けられていない。連結面寄りの側窓は、非常時に上部が内側に折れて開けることのできる構造となっている。先頭部は白色に塗装され、前面から側面にかけJR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色の帯を巻いている。ただし、「セントラルライナー」用の8000番台は、有料ライナー列車であることを示すため、カラーリングを変えている。

用途や内装などの差により多様な番台区分があるが、車体の構造はいずれも同一である。開口が大きい扉間窓の上下内側前後方向に太い骨が通っており、吹寄(戸袋)部分に荷重が集中する構造となっている。側窓の天地寸法は950mmで、311系の870mmより拡大された。また、ワンマン運転を考慮し、先頭車の運転台と隣接する側扉は、運転台側に210mm寄せられている。側扉は、近郊形として一般的な1300mm幅の両開きドアを片側3箇所に設けている。戸閉力弱め機構を有した空圧式である。

なお、客室内の騒音低減のため、床下には廃ゴムタイヤ破砕再用品である吸音材が詰められており、他社の新型車両と比較しても高水準の静粛性を有する。

主電動機・制御装置・台車
主電動機は373系で実績のあるC-MT66A形三相誘導電動機(出力185kW、端子電圧1,100V、電流125A、周波数86Hz、定格回転数2,525rpm)を使用し、MT比を1:1とすることで加速性能を向上させると同時に、10パーミル上り勾配での均衡速度は130km/hを確保している。MT比は編成にかかわらず固定され、3両編成には主電動機数を半分にした車両が組み込まれる。また、制御装置は373系のGTO素子に代わり、東芝製IGBT素子によるVVVFインバータ(PWM制御、1700V/1200A 1両2群・1C2M方式)が採用されている。

台車は、211系の流れをくむ円錐積層ゴム式の軽量ボルスタレス台車(C-DT63A形/C-TR251形)であり、空気ばね位置に改良を加えられたほか、ヨーダンパを装備する。付随台車は1軸2ディスクブレーキを採用するとともに、踏面清掃装置を備え、踏面ブレーキを省略している。また、全軸に滑走検知装置を備えている。

運転台は373系に準拠しており、貫通式であるためコンパクトにまとめられている。左手ワンハンドル式マスコン、右側にはタッチパネル式液晶モニタ装置を配備し、ボタン式のEB装置、定速制御を装備する。定速制御は一定速度以上で力行4段か5段でボタンを押すと作動する。力行は5段、ブレーキは抑速ブレーキと常用ブレーキ7段、非常ブレーキの計9段階である。

ブレーキ制御は電気指令式である。回生ブレーキを主、空気ブレーキを従として、編成全体のブレーキ力を確保する「T車遅れ込め機構」を有しており、空気ブレーキの作動を抑制することで褶動(しゅうどう)部のメンテナンス軽減を図っている。また、回生ブレーキは同一き電区間内に力行車両がないと失効しやすいことから、発電ブレーキ機構を一部の番台区分に併載している。さらに、回生ブレーキが失効した場合でも、その不足分のみを空気ブレーキと発電ブレーキで補うブレンディング制御を採用しており、回生効率の向上と回生失効時における衝動の抑制を図っている。これらのシステムは373系のものを継承している。電動空気圧縮機 (CP) は、実績のあるレシプロ(ピストン)式を採用しながらも、動力源を交流電動機に変更して騒音低減を図っている。
また、柔軟な運用にも配慮されており、在来車の211系、213系、311系と併結することができる。

車内仕様・サービス設備
座席は用途に応じ、転換クロスシート、固定クロスシート、ロングシートを適宜組み合わせて配置している。このうち、転換クロスシートは、まくら折れ機構を採用し、快適性を損なわずにシートピッチを詰めることに成功している。

側窓は固定式であり、車端部の側窓の上部のみが内側に折れて開く構造を採用し、非常時の換気に備えている。窓ガラスには紫外線 (UV) カットの複層ガラスを採用しているが、日除けも省略しておらず、フリーストップ式ロールカーテンもしくは横引きカーテンを備える。

交通バリアフリー法への対応として、全車にドアチャイムを備え、全編成に車椅子対応洋式トイレのほか、各扉上にLEDによる車内案内表示装置を備える(小文字2段表示が可能であるが、「締切中 NOT IN USE」の表示を除き専ら大文字1段表示で使用される)。また、乗降促進メロディと車外スピーカーを搭載する。さらに、一部の番台区分では押ボタン式の半自動扉機構を備えている。

車内照明は、311系に引き続いて客室全長に亘るカバー付き蛍光灯である。ただしカバーの断面形状が初期車と3次車以降で少し異なっており、前者が僅かに左右非対称の曲線形状、後者が左右対称の円弧形状となっている。5次車ではカバー付きのLEDへと変更になった。

その他の仕様
台車 - 軽量ボルスタレス台車(動力台車:C-DT63A形、付随車台車:C-TR251形)
集電装置 - C-PS27A形シングルアーム式パンタグラフ
冷房装置 - C-AU714A-G2形
製造 - 日本車輌製造・近畿車輛・東急車輛製造
備考 - 1999年度グッドデザイン賞受賞

形式
313系は4形式から構成される。各形式とも番台区分により機器・車内構成が異なる
クモハ313形
上り方(熱海・塩尻・亀山・国府津方)の制御電動車 (Mc) である。シングルアーム方式のパンタグラフや、一体型のVVVFインバータ制御装置と補助電源装置 (SIV) を搭載している。

機器の構成により4種に分けられる。
Mc1 - 3・4両編成に組み込まれる。SIVの容量は150KVAである(0/1000/1100番台、1500/1600番台、2500番台、8500番台)。
Mc2 - 2両編成に組み込まれる。SIVの容量は80KVAである(300番台、1300番台)。
Mc3 - 3・4・6両編成に組み込まれる。Mc1の機器構成に加え、発電ブレーキ装置(ブレーキチョッパ装置・抵抗器)を搭載する(1700番台、2600番台、5000番台)。SIV容量の関係上、6両編成を組む場合は編成中に後述のM5が組み込まれる。
Mc4 - 2両編成に組み込まれる。Mc2の機器構成に加え、発電ブレーキ装置(ブレーキチョッパ装置・抵抗器)を搭載する(3000/3100番台、2300/2350番台、5300番台)。
モハ313形
中間電動車 (M) である。VVVFインバータ制御装置を搭載するほか、一部の車両はSIVか空気圧縮機 (CP) を搭載する。

機器の構成により6種に分けられる。
M1 - 4両編成に組み込まれる。パンタグラフを搭載する(0番台、1000/1100番台)。
M2 - 3両編成に組み込まれる。MT比1:1とするため奇数側の台車のみに主電動機を搭載し、制御装置もそれに応じたものとなっている。パンタグラフは搭載しない(8500番台、1500番台)。
M3 - 6両編成に組み込まれる。M1の機器構成に加え、発電ブレーキ装置(ブレーキチョッパ装置・抵抗器)を搭載する(5000番台)。
M4 - 3両編成に組み込まれる。M2の機器構成に加え、容量1kl/minのCPを搭載する(1600番台、2500番台)。
M5 - 6両編成に組み込まれる。M3の仕様に加え、容量80KVAのSIVを搭載する(5300番台)。
M6 - 3両編成に組み込まれる。M4の機器構成に加え、発電ブレーキ装置(ブレーキチョッパ装置・抵抗器)を搭載する(1700番台、2600番台)。
クハ312形
下り方(米原・甲府方)の制御車 (Tc') である。CP、蓄電池 (BAT) を搭載するほか、車内にトイレが設置されている。

機器の構成により2種に分けられる。

Tc'1 - 3・4両編成に組み込まれる。CPの容量は2kl/minである(0番台、8000番台)。
Tc'2 - 2・3・4・6両編成に組み込まれる。CPの容量は1kl/minである(300/400番台、3000/3100番台、2300番台、5000番台、5300番台、1300番台)。CP容量の関係上、3両編成に組む場合は編成中に前述のM4またはM6が、4両編成を組む場合はT2が、6両編成を組む場合はT2とT3が組み込まれる。


サハ313形
中間付随車 (T) で、一部の車両はCPやBATを搭載する。

機器の構成により3種に分けられる。
T1 - 4両編成に組み込まれる(0番台、1000番台)。CPを搭載しないため、編成中に前述のTc'1が組み込まれる。
T2 - 4・6両編成に組み込まれる。T1の機器構成に加え、容量1kl/minのCPを搭載する(1100番台、5000番台)。
T3 - 6両編成に組み込まれる。T2の機器構成に加え、BATを搭載する(5300番台)。


JR東海313系電車
基本情報
運用者 東海旅客鉄道
製造所 日本車輌製造
近畿車輛(3次車まで)
東急車輛製造(初期車のみ)
製造年 1999年 - 2014年
2019年(代替新造)
製造数 541両(代替2両を含む)
運用開始 1999年5月6日
主要諸元
編成 6・4・3・2両
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
最高運転速度 120 km/h
130 km/h (8000番台)
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.6 km/h/s
減速度(常用) 4.3 km/h/s
減速度(非常) 4.3 km/h/s
(3次車以降)
5.1 km/h/s
車両定員 56(席)+100(立)=156名*1
自重 平均30t
編成重量 128.4t(0番台4連)
127.9t(1000番台4連)
68.3t(3000番台2連)
100.6t(8000番台3連)
(いずれも製造時)
全長 20,000 mm
20,100 mm (先頭車)
全幅 2,978 mm
全高 4,020 mm
車体 ステンレス
(前頭部のみ普通鋼)
台車 円錐積層ゴム式ボルスタレス台車(ヨーダンパ付)
C-DT63A(動力台車)
C-TR251(付随台車)
(3次車以降)
C-DT63B(動力台車)
C-TR251A(付随台車)
主電動機 C-MT66A(1・2次車)
C-MT66C(3次車以降)
主電動機出力 185 kW / 基
駆動方式 TD継手式(中実軸)平行カルダン
歯車比 1:6.53
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御(1C2M方式)
制動装置 電気指令式(直通・回生・抑速)
T車遅れ込め制御・耐雪ブレーキ
発電ブレーキ*3
保安装置 ATS-ST・ATS-PT
EB・TE装置
備考 *1 - 0・1000番台中間車
*2 - 一部の車両


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