営団05系電車(05N系)
05系電車(05けいでんしゃ)は、1988年(昭和63年)11月16日より営業運転を開始した通勤形電車である。帝都高速度交通営団(営団)ならびに東京地下鉄(東京メトロ)により東西線用として設計・製造された。2014年(平成26年)4月28日からは千代田線北綾瀬支線(綾瀬駅 - 北綾瀬駅間)でも運用されている。
1988年(昭和63年)に東西線の輸送力増強及び5000系を置き換えるために登場し、幾度の仕様変更を経ながら2004年(平成16年)度までに10両編成43本(430両)が製造された。長さ20 m・片側4扉のアルミニウム製車体を持つ。車体には東西線用については同線のラインカラーであるスカイブルーの帯をメインに、アクセントとしてホワイトとダークブルーの帯を配している。一方、千代田線北綾瀬支線用については同線本線の16000系に準じたグリーンとホワイトの帯を配する。
05系の車両数は1994年(平成6年)を以て5000系を上回っている。当初、東西線の車両冷房化はすべて05系の新製で対応する予定であったが、同線は車両数が多く更新完了までの期間が長くなることが予想された。このため、5000系に対しても冷房化改造をはじめとした延命工事を行い、最終的に同系列の置き換えは2007年(平成19年)となり、それまでの銀座・丸ノ内・日比谷各線に比べ19年という長期間かかった。
また、計画では2005年(平成17年)度に最終編成として10両編成4本(40両)を新製し、最後まで残存する5000系をすべて置き換える計画であったが、有楽町線・副都心線用の新型車両10000系の投入による計画の変更で07系が転入することとなり、05系の増備は中止された。また、東西線の混雑緩和・遅延防止を目的として2010年度から2011年度にかけて導入されたワイドドア車体の新型車両15000系も当初は本系列の第14次車として計画されていたが、10000系の仕様を取り入れたことによる仕様の変更で新系列となる15000系として製造された。
帝都高速度交通営団(私鉄の車両22) 巌, 飯島 ネコ・パブリッシング
15000系の導入により、本系列の第01 - 13編成は運用を離脱し、置き換えが実施された。このうち一部車両は廃車され、また第01・03・06・13編成の4本については3両編成への短縮などの転籍改造を施工の上で、千代田線北綾瀬支線用へと転用されている。
05系は16年間にわたって製造されており、また途中での仕様の変更も多い(同じ仕様で続けて3年間製造されたことがないほどである)。先頭車の前面形状も7次車までと8次車以降で大きく異なっている。
05N系
第24編成の投入で東西線からは5000系の非冷房車が一掃され、冷房車は延命工事も受けていたため、05系の投入は一旦中断し、1999年度から投入が再開された。
同編成の落成以来から5年が経過していたため、新造車であることを強くアピールするために全面的に設計変更され、別形式とも思わせるスタイルで登場した。
外観はデザインコンセプトは「スピード感」だが、正面のデザインをマイナーチェンジし、縦曲線主体の形状とした。フロントガラスも縦曲面で、全体的に八角形に近い形となった。下部には新たにスカートが設置された。前照灯と尾灯は丸型となり斜めに設置され、この部分には前照灯と尾灯を納める成形品が装着されている。
車体ラインカラー2本は、濃い方の帯は紺色に近くなり、明るい色の帯の色も変更され、2色の帯の色の差が大きくなった。
さらに営団車両であることを強調するため、側面の乗務員室扉直後へ大形「S」マークの貼り付け、さらに側窓上の「S」マークもやや大きくした。(東京メトロ発足後に落成した13次車を除く。)このほかに行先表示器はLED式で変わりないが、正面・側面ともに高輝度のLEDを使用し、視認性の向上を図った。車両間転落防止幌が新製時から取り付けられた。
鉄道ピクトリアル 1987年12月増刊号 帝都高速度交通営団 鉄道図書刊行会 鉄道図書刊行会
客室内装は全面的に変更され、カラースキームが茶色系をベースとした色調に一新された。座席は側壁で支持する片持ち式となり、バケット形状も変更された。乗務員室においても配色が見直され 、また運転台は左手操作式のワンハンドルマスコンとなるなど仕様が大幅に見直された。
これらのことから「05N系」や「新05系」とも呼ばれるが、正式の称号は従来通り05系のままである。鉄道雑誌など会社(当時は営団)が発信する外部向け資料には正式に「05N系」と表記されていることが多いため、ここでは表記を「05N系」に統一する。ただしNが05系の前に表記されて「N05系」とされることもある。なお、2000年2月に発売されたデビュー記念SFメトロカードや2007年1月27日開催の「さよなら5000系イベント」の告知には「新05系」と表記されているほか、東西線40周年イベントでは「05系最新車」と案内されていた。
第34 - 39編成(11 - 12次車)
同時期に半蔵門線用として製造される08系の設計思想を取り入れ、仕様変更により安全性の向上、コストダウン等を図った。08系同様に2000年(平成12年)3月に発生した日比谷線脱線事故を踏まえた車体構造の強化と安全性の向上を目的に設計変更した台車を採用した。
車体の窓割は営団とこれに乗り入れる鉄道事業者で協議して定めた規格に基づいたものとなり、座席配置は標準的な3-7-7-7-3人掛けとなっている。車体は構造が見直され、側構体は中空押出形材構成としてシングルスキン構造からダブルスキン構造(セミダブルスキン構造)に変更したほか、車体隅柱には厚肉化した三角形断面の衝突柱を設置して衝突事故時における車体強度の向上を図った。
併せて台車はモノリンク式ボルスタレス方式で変更はないが、曲線通過性の向上や保守性の向上を目的に構造を変更したものとなった。なお、製造メーカーは異なるが、08系で採用した日本車輌製のND-730形と同一構造である(本系列は住友金属製のSS161・SS061形)。
さらにバリアフリーの観点から床面高さをそれまでの1,150 mmから1,140 mmへ低下させた。前照灯は自動車などにも普及しているHID灯を搭載し、視認性の確保も併せて行っている。車外の車両番号表記など各種表記をプレート式からステッカー貼り付け式に変更している。これは車内の各種表記も同様である。(車外の「S」マーク表記はプレート式を踏襲。)
側窓はドア間で均等な配置となり、ドア間の7人掛け部は2分割で開閉可能な窓、車端部は固定式の単窓に変更された。連結面はすべてに妻面窓が設置されたが、それまでよりも若干小さくなった。そのほか、袖仕切形状が変更されたほか、網棚形状(荷棚受け、荷棚網)も簡易な構造となった。7人掛けロングシート部には3+4で区切るスタンションポール(握り棒)が設けられたほか、車いすスペース部にあった座席は廃止した。
帝都高速度交通営団 銀座線 新橋~外苑前 モハ1514 鉄道走行音 鉄音工房 鉄音工房
乗務員室内ほぼ同じだがブレーキ指示計(減速度km/h/s表示)はアナログ計器式から08系と同様の力行ノッチも表示するLED表示灯式のものとなった。車掌スイッチは機械式から間接制御式(リレー式)に変更した。
また、機器についても変更点があり、MT比はチョッパ制御車と同じ5M5Tに戻っている。
VVVFインバータ制御装置は11・13次車が三菱製、12次車が日立製となっている。いずれも磁励音は8 - 10次車とは異なっている。
変更に伴い、1C4M1群/2群制御方式となる。
主電動機出力165 kW/台。165 kW車の歯車比は6.21である。
電動車比率を5M5Tと引き上げたため、編成全体出力は3,280 kWから3,300 kWとなっている。設計最高速度が120 km/hに向上した。
車両外観
7次車まで(05系)と8次車以降(05N系)でデザインが大幅に異なっている。しかし、基本的な窓配置は、車外から見て右半分を占める大窓上部に行先表示器があり、その左側に非常扉窓があり、上部に白字で車両番号が表記され、さらに左側に細長い窓があり、上部に運行番号表示器が収められている。尾灯は全車LED式である。
ワイパーは右側の大窓のみに設置されている。連結器は密着連結器である。非常扉はプラグドアを採用し、車外から見て左側にスライドする。電気笛は07系などより音の低いものが使用されている。現在は第04編成を除いて運転席前の大窓に遮光フィルムを貼り付けする。なお、運転台上部には日除けとしてアクリル製の光線ヨケ(遮光パネル)がある。
製造年次によって側窓配置が異なっているが、どの編成も側窓の上部と側扉の上部の高さがほぼ揃っている。開閉可能窓はすべて1段下降窓である。
車外放送用スピーカーは5次車までは車体側面に直接取り付けられているが、6次車以降は冷房装置キセに内蔵されている。屋根構造は13次車のみ張り上げ屋根となっている。
連結間にある車両間転落防止幌は、05系では1999年 - 2000年頃に改造で設置したが、05N系では全車が新製時より設置されている。
ラインカラーの帯は前述のように7次車までと05N系で異なっているが、共に側面には腰部に貼られており、側扉及び乗務員室扉にも貼られている。05N系の方が貼り付け位置はやや低く、太い帯(水色帯)の幅がやや広くなっている。7次車までは前面と帯がつながっているが、05N系ではデザイン上前面の帯とはつながっていない。
東京地下鉄全駅ガイド 東京都交通局 人文社
営団地下鉄・東京メトロ05系電車
基本情報
運用者
帝都高速度交通営団
東京地下鉄
製造所
日本車輌製造
川崎重工業車両カンパニー
近畿車輛
日立製作所笠戸事業所
東急車輛製造
製造年 1988年 - 2005年
製造数 43編成430両
運用開始 1988年11月16日
投入先 東西線ほか
主要諸元
編成
10両編成(東西線)
3両編成(千代田線北綾瀬支線)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V(架空電車線方式)
最高運転速度 東西線 100 km/h
設計最高速度
第01 - 33編成 110 km/h
第34編成以降 120 km/h
起動加速度
3.3 km/h/s
第14編成改修前 3.0 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 5.0 km/h/s
全長
先頭車 20,270 mm
中間車 20,000 mm
全幅 2,800 mm
全高
4,022 - 4,135 mm
パンタ付車両 4,080 - 4,145 mm
台車 ボルスタレス方式空気ばね台車
主電動機
直流分巻電動機
かご形三相誘導電動機
永久磁石同期電動機
駆動方式 WN駆動方式
制御方式
高周波分巻チョッパ制御
VVVFインバータ制御
制動装置 ATC連動電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
保安装置
東西線用:新CS-ATC
JR線用:ATS-P
東葉高速線用:WS-ATC
備考 東西線車両(改修工事車を含む)のデータ。
東京地下鉄道日比谷線建設史 (1969年) 帝都高速度交通営団 帝都高速度交通営団