キハ47形 日本国有鉄道(国鉄)が製造した一般・近郊形気動車のグループである国鉄キハ40系気動車の改造により発生した派生形式です。
キハ40系は1977年(昭和52年)から1982年(昭和57年)にかけて計888両が製造され、日本全国の非電化路線に投入された。2010年現在でもJR旅客鉄道各社に多数が在籍し、主に普通列車用として広く用いられている。
電車に近い車体構造の大型気動車で、客室設備の改善や走行機器の刷新なども図られている。その一方で、それ以前の在来型気動車と比較してエンジン出力は若干増加したものの重量も増加しており、動力性能はほとんど向上していない。
キハ47形 朱色
1.3m 幅の両開き扉を車体中央寄り2か所に配置した、いわゆる「近郊形」のレイアウトである。キハ40形・キハ48形よりもラッシュ時などの客扱い能力を重視した片運転台車であり、仕向け地とトイレの有無により細かな番台区分がある。車内の化粧板はクリーム色系だが、初期に製造されたキハ47 1 - 16は緑色系である。デッキは装備せず、北海道向けの酷寒地仕様も存在しない。客室窓は2段上昇式ユニット窓です。
1000番台
キハ47 139
2010年5月
温暖地向け仕様車で、0番台車はキハ40形100番台車と相前後して1977年上期に製造が開始された。金属バネ台車装備。トイレ付きの0番台車は1983年までに193両 (1 - 193) が、その後1978年から製造が開始されたトイレなしの1000番台車は1982年までに134両 (1001 - 1134) が製造された。この温暖地向けキハ47形327両が本系列の最大グループである。
全長21.3m(車体長20.8m)、幅2.9mという急行形気動車並の大型車体である。酷寒地や海岸沿いでの使用を考慮して外板、屋根板、床板には車両用耐候性高張力鋼板 (SPA) を用いており、耐久性を高めているが、板厚は例えば同じSPAを使用した201系電車と比較すると、外板厚が2.3mmに対して国鉄気動車標準の1.6mm、屋根板厚は1.6mmに対して1.2mmと薄く、台枠に設けた軽量孔とともに軽量化にも一応配慮している。落成時期の関係から、製造当初は全車が朱色5号と呼ばれる明るい朱色一色、一部地域で「首都圏色」と呼ばれる塗装で落成しており、従来の一般形気動車の標準塗装であったクリーム4号と朱色4号の2色塗り分けで落成した車両は存在しない[2]。
前頭部はキハ66系のものを踏襲したもので、踏切事故・衝突対策として高運転台化、運転室長さの350mm拡大、前面の外板を4.5mm厚に強化、床下前面にスカートを装着している。運転台窓は運転席からの展望性に配慮した側面部に回り込んだパノラミックウィンドウを用い、前照灯は前面窓上にRBS-24V形150/50Wシールドビームが2灯、尾灯は在来形気動車よりも高い位置に40Wのものが2灯、それぞれ左右に振り分けて設置され、貫通路直上には列車種別表示器も設けられている。なお、これらの構成は設計年次が近いキユニ28形などの改造車も同様で、当時の標準設計であった。
側窓は酷寒地形を除き、外はめ式のアルミ合金製2段ユニット窓として工数を削減している。酷寒地形は小型の1段上昇窓で、FRP製窓枠による内窓を組み合わせた、二重窓構造とし、冬季の車内保温を図っている。
キハ47形はやや車体中央寄り2か所に1.3m幅の両開き扉を設けている。いずれもステップ付で半自動扉であるが、ドアエンジンは在来車の様な当初からの半自動式用ではなく、自動式用ドアエンジンの指令回路のみを変更して半自動動作に対応させており、人力での開閉はやや重い。運転台は機器配置・座席形状共人間工学に配慮した構造となっている。また、投入線区の運用実態に配慮して製造時より側面にタブレットキャッチャーとその防護板を設け、タブレット閉塞式での通過運転に対応した。客室内壁の化粧板は、在来形気動車に比してやや明るい色調でまとめられている。座席はボックスシートを基本としてドア付近にのみロングシートを配したセミクロスシートとした。ボックスシートはシートピッチをキハ58系気動車までの急行形車両と同等の1,470mmとし、一般形気動車として初めて人間工学を採り入れた新形状のものとした。暖房はキハ22形やキハ56系と同じ温水暖房式であるが、機関廃熱および機関予熱器での軽油燃焼による熱を使用して床下の熱交換器で温風を作り車内に循環させる方式[3]を採用した。1両あたり2基搭載された熱交換器により暖房能力は公称30,000kcal/hとなり、従来の軽油燃焼式温風暖房に比して著しく強力な暖房能力を得た。これは機器搭載に床下スペースを必要とするという難点があるものの、温水を車体内に通す必要が無く、構造も単純であった。加えて運転室内には自動車用温水暖房装置が併設されている。
系列のエンジンは標準機関として従来のDMH17系エンジンに代えてDMF15HSA形を搭載する。このDMF15HSAは水平シリンダ形の予燃焼室式直列6気筒機関であり、TB11B形排気タービン過給器を装備、補機類はCW750D空気圧縮機、DM99AもしくはDM99B形4kVA交流発電機などで、いずれも歯車駆動としてVベルトを廃止している。
この機関は新系列大出力気動車の試作車であったキハ90形に搭載されていたDMF15HZAをルーツとするもので、ガスケット吹き抜け対策や新しいPE-P形燃料噴射ポンプの採用などの改良がなされたキハ66系用のDML30HSHを基本とし、これに加えてDMF15HS-Gの使用経験を反映させたものである。
なお、地方線区向けの本系列においてはキハ66系用DML30HSHの採用は重量・イニシャル・ランニングコスト共に増大するため現実的ではなく、6気筒のこちらを採用したものである。
キハ47系 番台区分1000 新造時形式・番台別特徴一覧
・運転台:片
・客扉:両開き
・仕向け地:暖地
・枕バネ:コイル
・デッキ:無
・便所:無
・番台区分1000の両数:134
・製造年:52年度1次債務 - 56年度1次債務
JR西日本
JR西日本には、キハ40形63両(すべて2000番台)、キハ47形189両(0番台108両・500番台3両・1000番台75両・1500番台3両)、キハ48形5両(0番台3両・1000番台2両)の計257両が承継された。これはJR旅客鉄道会社の中で最大である。
廃車はキハ48形の3両のみで、2018年現在は254両が所属している。JR西日本が保有する一般形気動車の半分以上が本系列で占められているが、現在も置き換え計画はなく、後継のキハ120形と共に中国・北陸地方の非電化区間の主力として活躍している。JR西日本の非電化区間では、線区や利用状況などで本系列とキハ120形を使い分けている。
形式と番台の変更を伴う改造は、キハ40形・キハ47形の座席のロングシート化による改番とキハ47形の両運転台化によるキハ41形への改形式、イベント用列車への改造に伴うもののみであるが、1989年度からキハ40形の全車とキハ47形の大半にワンマン運転対応化改造が実施されている。
また、広島支社(下関総合車両所)配属の車両については側面中央上部にLED式の行先表示器の増設が行われ、板式の行先標の使用を終了している。民営化に前後して様々な地域色が登場したが、2009年からは塗装工程の簡略化のため、首都圏色(朱色5号) への塗装変更が進んでいる。
キハ47形3500・4500番台
寒地形の500番台・1500番台および、その機関換装車である8500番台・9500番台に行われた。従来の一軸駆動を2軸駆動化し、同時に、500番台・1500番台は走行機関がコマツ製、変速機が新潟コンバーター製のものに換装された。これらは8500番台・9500番台と同一のものである。2005年には、500番台と1500番台1両ずつ、8500番台と9500番台1両ずつを改造した。番号は原番車ではプラス3000、再改造車では再改造前の車番からマイナス5000である。現在は熊本車両センターと大分車両センターに2両(3500番台と4500番台が各1両)ずつ配置されている。なお、JR西日本にもキハ47形3500番台が存在するが、これとは無関係であり、番号の重複も発生していない。
キハ47 8509・9509 → 3509・4509 (2軸駆動化改造、原番マイナス5000)
キハ47 510・1510 → 3510・4510(2軸駆動化改造+機関換装、原番プラス3000)
JR九州
JR九州には、キハ40形2000番台36両と、キハ47形0番台61両、500番台2両、1000番台41両、1500番台2両の計106両、合わせて142両が承継された[116]。2012年にJR四国で廃車されたキハ47形2両(0番台1両・1500番台1両)を譲り受けている。廃車は、1993年の日豊本線竜ヶ水駅の土石流災害で被災したキハ40形2両のみだったが、2019年より置き換えが開始され、新型車両の導入により改番していない車両の廃車が進んでいる。2020年時点で132両を所有し、長崎地区を除く九州島内各地で運用している。YC1系の長崎地区投入に伴うキハ200形・キハ220形の転属に伴い、2021年3月に大分地区での運用を終了した。
本系列に対して初めて冷房改造が行われたのが九州であった。民営化後も1987年から1989年にかけて全車に対して冷房改造が実施された。国鉄時代はバス用の装置を転用したサブエンジン式のAU34、民営化後はAU34を改良したAU600Kを搭載した。現在は屋根上の通風器が撤去されている。ワンマン改造は、大多数に対し施行済みであるが、線区の事情に応じて内容が異なる。また機関出力向上は1990年から数種の方法で行われており、それぞれ新形式または新番台区分となった。
九州地区
筑豊篠栗鉄道事業部直方車両センター
直方運用・日田彦運用・竹下運用に分かれている。なお直方運用(筑豊本線折尾 - 若松間ほか)は2017年3月3日に、竹下運用(香椎線)は2019年3月15日に、それぞれBEC819系電車に置き換えられて運用を終了した。
日田彦運用
直方車両センターに常駐。
日田彦山線
後藤寺線(午前中の普通列車数往復と快速列車)
筑豊本線(桂川駅 - 原田駅間)
日豊本線(小倉駅 - 城野駅間〈日田彦山線直通列車〉)]
久大本線(夜明駅- 日田駅間〈日田彦山線直通列車〉)
唐津鉄道事業部唐津車両センター
長崎本線(佐賀駅 - 久保田駅間 〈唐津線直通列車〉)
唐津線
筑肥線(山本駅 - 伊万里駅間)
長崎鉄道事業部佐世保車両センター
長崎地区ではキハ66系やキハ200系に置き換えられ、キハ40系の定期運用はキロシ47形「或る列車」のみとなっている。
久大本線(日田 - 大分駅間〈或る列車 大分ルート〉)
長崎本線(鳥栖駅 - 長与駅 - 長崎駅間 〈或る列車 長崎ルート〉)
鹿児島本線(博多駅駅 - 鳥栖駅間 〈或る列車 長崎ルート〉)
佐世保線(或る列車 長崎ルート)
大村線(或る列車 長崎ルート)
熊本鉄道事業部熊本車両センター
鹿児島本線(熊本駅 - 八代駅間〈肥薩線・三角線直通列車〉)
豊肥本線(熊本駅 - 肥後大津駅間)
三角線
肥薩線(普通・快速列車、いさぶろう・しんぺい、かわせみ やませみ)
大分鉄道事業部大分車両センター
久大本線(日田駅・庄内駅 - 大分駅間)
豊肥本線(大分駅 - 豊後荻駅間)
鹿児島鉄道事業部鹿児島車両センター
鹿児島本線(鹿児島中央駅 - 鹿児島駅間)
日豊本線(宮崎駅 - 都城駅〈吉都線直通列車〉、国分駅 - 鹿児島駅間)
肥薩線(普通列車〈吉都線直通列車含む〉、はやとの風)
指宿枕崎線(普通列車[170]、指宿のたまて箱)
吉都線(肥薩線・日豊本線直通列車含む)
宮崎総合鉄道事業部宮崎車両センター
日豊本線(高鍋駅 - 西都城駅間)
吉都線
日南線