81mm迫撃砲 L16
L16 81mm 迫撃砲(L16 81mm Mortar)は、イギリスで開発された迫撃砲であり、イギリス陸軍ほか各国で採用されている。アメリカ陸軍ではM252、陸上自衛隊では81mm迫撃砲 L16の名称が与えられた。L16の"L"とは口径長のことで、16口径の砲であることを表す。
第二次世界大戦でイギリス軍が使用したML 3インチ迫撃砲の後継として、1965年に正式採用された。砲身など3部分に分解することで人力でも運搬が可能なことから、歩兵に追随して山中などでも運用が容易になっている。砲身は滑腔砲身を採用しているほか、放熱のため、その下部外面にはフィンが設けられている。81mmクラスの迫撃砲としてはずば抜けて軽量であり、これが多数の国に採用された最大の理由となっている。
イギリス陸軍は1960年代より運用を開始し、FV432装甲兵員輸送車などに搭載したが、特にフォークランド紛争では、歩兵が分解して携帯することも多かった。
陸上自衛隊でも64式81mm迫撃砲の後継として、豊和工業でのライセンス生産品を1990年代初頭より採用しており、64式同様に普通科中隊の主たる火力として運用されている。現在でも調達が続けられており、平成24年度は6門の調達が予定されている。価格は約1,000万円。64式81mm迫撃砲との違いとして、素材に鍛造によるアルミ合金が使用されています。これにより約52kgから約38kgまで軽量化されました。有効射程も約3.5kmから約5.6kmまで延長され、有効射程の向上と軽量化が共に実現しています。
L16の構造
81mm迫撃砲L16の構造として、円形のベースプレート(底板)、砲身、二脚支持架、照準器の4つのパーツに分解することができます。数名の隊員により各パーツを持ち運んで移動することも可能です。通常、陣地展開などでは1/2tトラック(73式小型トラック)にトレーラーを牽引して砲弾と共に搭載して運搬されます。
ベースプレートと砲身部分の接合部分がボールジョイントになっているため、目標の状況に応じて射撃方向を柔軟に変更できる様になっています。また砲身下部にはギザギザの溝が全周に彫られています。これは射撃時に生じる熱を放熱するための構造です。自動車のラジエターの様に空気に触れる面積を広くして放熱効率を上げという工業製品にもよく使われている加工です。
二脚支持架は通常の二股の支えではなく、左右の脚が非対称のアシンメトリー構造になっているのもL16の特徴的です。
使用砲弾には専用の81mm迫撃砲L16用弾薬を使用し、榴弾、発煙弾、照明弾を使い分けることが可能です。弾薬も国内生産され、ダイキン工業と小松製作所により生産されています。
砲身内には砲弾を回転させて安定して砲弾を撃ち出すためのライフリングはありません。その代わりに砲弾自体に安定翼が付けられ、安定した放物弾道を維持できる様に工夫がされています。
L16の射撃方法と運用
81mm迫撃砲L16|実弾射撃L16の実弾射撃
砲弾は通常の迫撃砲同様に砲口から装填して射撃する前装式です。砲身内に装填された砲弾が砲身の底にある撃針に接触することで、砲弾の発射薬に点火されて撃ち出されます。
個人運搬可能な小型の火砲ですが迫撃砲射撃時の衝撃波はとても大きく、砲弾が撃ち出されるときには周囲の隊員は耳をふさぐ必要がある程の衝撃が発生します。
81mm迫撃砲L16の運用方法として1砲班に指示者となる班長、狙いを定める照準手、砲弾に射撃距離にあわせて装薬などを設定する弾薬手、砲弾を装填する装填手から構成されます。
高機動車により牽引運搬される普通科部隊最大火砲の120mm迫撃砲RTは、普通科内の重迫撃砲中隊規模での運用になります。81mm迫撃砲L16は中隊内の迫撃砲小隊で使われ、120mm迫撃砲RTに比べれば射程や威力は低下しますが、より前線の小銃小隊などへの密接支援が可能なのが軽迫撃砲の強みです。
新たに配備される"60mm迫撃砲"や小銃に取り付けて使用する"小銃擲弾(てきだん)"など、火力支援の規模や状況によって選択肢を広く持ちこれからの防衛力の維持・強化に努めています。
アニメ・漫画
『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』
異世界へ派遣された自衛隊の装備として登場。
アニメ版では、帝国の議員たちに向けて行われた装備展示会で使用され、自衛隊の兵器の威力を見せつける。
漫画版では、翡翠宮を攻める帝国軍に第1空挺団が使用する。
『続・戦国自衛隊』
漫画・小説版に、戦国時代へタイムスリップした自衛隊の装備として登場。特に小説版では、発煙弾を使用して敵の視界を遮ったり、89式装甲戦闘車の兵員室に積みこんで移動し、下車展開後に設置して砲撃を行ったりと、重火器の主力として活躍する。
小説
『日本北朝鮮戦争 自衛隊武装蜂起』
陸上自衛隊夜間警備部隊に89式5.56mm小銃・5.56mm機関銃MINIMIとともに配布される。
『日本北朝鮮戦争 竹島沖大空海戦』
陸上自衛隊敦賀原発防衛部隊が使用する装備の1つとして登場。北朝鮮工作員との夜間戦闘の際には2門配置されており、それぞれ1発ずつ照明弾を打ち上げる。その後、夜が明けた際にも再度北朝鮮工作員による攻撃を受け、1門に減ってはいたが榴弾を発射し、突撃してくる北朝鮮工作員を何人か吹き飛ばす。
ゲーム
『Wargame Red Dragon(英語版)』
NATO陣営で使用可能な哨戒艇「フリーマントル」の武装としてL16A2が登場する。
諸元・性能
諸元
種別: 迫撃砲
口径: 81mm
砲身長: 1,280mm
重量: 36.6kg
砲身:12.7kg
支持架:12.3kg
底板:11.6kg
砲員数: 3名
性能
旋回角: 全周
砲口初速: 225m/s
有効射程: 100-5,650m
最大射程: 5,650m
発射速度: 20発/分(最大)、12発/分(持続)
砲弾・装薬
弾薬: 81mm迫撃砲弾・装薬(NATO標準規格)
開 発 ロイヤル・オーディナンス社(英)(現:BAEシステムズ)
製 造 豊和工業(ライセンス生産)