国鉄115系電車は、日本国有鉄道(国鉄)が寒冷地区・急勾配路線での運用を目的に設計し、1963年(昭和38年)から製造を開始した直流近郊形電車。1950年代から首都圏を中心に各地で電化が進み、電車の中長距離運行が実施されるようになりました。国鉄でも近郊用に111系を1962年(昭和37年)から製造・投入していましたが、111系が搭載する出力100kWのMT46系主電動機では、山間部で使用する場合は性能不足であり、編成中に通常より多くの電動車を連結する(MT比を高くとる)必要がありました。
電動車が多いと製造コスト・運転コストが高くなり、不経済であることから、111系をベースにM車一両当たりの出力を増強して、少ない電動車で編成を組むことができる新系列として開発されたのが113系と115系です。
1983年(昭和58年)までの長期にわたり、改良を重ねながら2,000両近くも製造され、本州内の直流電化区間で普通列車に用いられました。また一時期に急行列車にも使用されたことがありました。国鉄分割民営化時には東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)が承継・保有し、一部の車両はしなの鉄道・伊豆急行に譲渡されました。初期形の多くは廃車されましたが、その汎用性の高さから2011年4月時点でも各地の直流電化区間で使用されています。
クハ115形
制御付随車。後位3位側隅にトイレを持つ。115系ではCPをモハ114形に集約したため、0番台・300番台ではクハ111形のようなCPの有無による番台区分はない。非冷房車の0番台は奇数・偶数双方向での使用が可能です。製造開始時からの形式です。
クハ115-199 前照灯ライト改造部分シールドビーム化
本系列0番台先頭車の前照灯は白熱灯2基を前面窓下に設置していましたが、1973年の300番台以降は小型で耐久性に優れたシールドビームが採用されました。そのため0番台車でもシールドビームへの交換が下記2種類の手法で施工されました。
ライトの口径が異なることから通常は前面強化工事と同時施工でライトケースごと撤去し、外見上の違和感がなくなるように300番台以降の車両と同じ形状に整形。
改造費節減の観点から、白熱灯用ライトケースに口径差を解消するリング状の枠を取付け、シールドビーム灯を設置する方式を開発
枠の色は一般的に周囲と同色にされるが、豊田車両センター所属訓練車編成クハ115-108に見られる灰色という例外もある。
2006年(平成18年)以降下関車両センター(現・下関総合車両所)で始まった交換改造では、枠ではなくシールドビーム灯部分をくり抜いただけの鉄板で塞ぐという方法を採っています。