PM-29 やまくに 350トン型巡視船 PM「とから」型
竣工:H21.06.29
造船所:USC京浜
管区:第七管区
配置:大分
総トン数 335t
全長 56.0メートル (183.7 ft)
全幅 8.5メートル (28 ft)
深さ 4.4メートル (14 ft)
機関 ディーゼル(5,000 hp)×3基
ウォータージェット推進×3基
速力 35ノット以上
兵装 JM61-RFS Mk.2 20mm多銃身機関砲×1門
搭載艇 6m型複合艇
C4ISTAR RFS射撃指揮装置(機関砲用)
赤外線捜索監視装置
遠隔監視採証装置
航行区域:近海
とから型巡視船は海上保安庁の巡視船。分類上はPM型、公称船型は350トン型巡視船(高機能型)。
1999年の能登半島沖不審船事件において、当時配備されていた海上保安庁の巡視船艇では、高速かつ重武装の北朝鮮工作船への対応が困難であることが明らかとなった。
このことから海上保安庁は、遠隔操作型JM61 20mm多銃身機関砲による精密射撃能力と、30ノット以上の大速力を備えた、警備機能強化型の中・小型巡視船の整備を計画した。
これによって開発された中型巡視船(PM)が本型である。一方、小型巡視船(PS)としてはつるぎ型(高速特殊警備船)が開発された。
小型のつるぎ型が不審船対応任務に特化しているのに対し、本型はより大型であることから、従来の500トン型巡視船が担っていた密漁、密輸の取り締まりや海難救助も含めた警備救難業務をもこなせる汎用性が求められ、その上で建造費用を抑えることを要求された。
本型は2001年度計画より建造を、2003年より就役を開始し、びほろ型巡視船の後継として急速に整備が進められ、てしお型巡視船をも代替する予定である。
1隻の建造費は25億円である。
本型の設計は、先行して配備された中型巡視船であるあまみ型をもとに、つるぎ型の技術を導入したものということができる。
船体全長はあまみ型と同じであるが、幅と上部構造を拡大しており、あまみ型と比べて、船首ブルワークを廃止しつつも優れた凌波性を実現している。一方、限られた予算の範囲内で建造せざるを得なかったため、機関部についてはつるぎ型と同じ構成が採用されており、5,000馬力のディーゼルエンジン 3基によって、3基のウォータージェット推進器を駆動する。つるぎ型と同じ機関構成で同等の公称速力を確保するため、船体は全アルミ合金製とされたほか、3基のウォータージェットのうち中央軸には推力偏向装置を装備しないなど、徹底した軽量化対策を施されている。また、部品、資機材には民生品を採用することに努め、船価の低減を図った。これらの努力により、調達価格は1隻あたり約25億円に抑えられる一方、35ノットを越える高速能力を獲得することに成功した。「くなしり」就役の際の公式資料で、速力は35ノット以上とされており、京都新聞が「えちぜん」を取材した際の報道や毎日新聞社の報道でも、とから型の最大速力は「時速64キロメートル(35ノット)以上」とされている。
なお、中型巡視船としては初めて公称速力30ノットを越えたことから、高速航行時の振動は想定を超える過酷なものとなっており、3番船以降では、体のホールド性に優れたハイバックシートが採用され、乗員への負担を軽減している。
主武装としては、つるぎ型(高特船)と同様、JM61 20mm多銃身機関砲の遠隔操作型単装砲塔をRFS射撃指揮システムと連接することで、遠距離において精密な射撃を行なうことを可能としている。
このRFS連接の遠隔操作型20mm機関砲システムは、一世代前の警備重視型巡視船であるあまみ型やびざん型、みはし型にもバックフィットされている。
本型の建造開始と同年に発生した九州南西海域工作船事件において、その威力を実証した。
赤外線捜索監視装置、遠隔監視採証装置、停船命令等表示装置、遠隔放水銃も装備している。
航走しながら作業が行える搭載艇の発進・揚収装置は本型で初めて採用されたものです。また3番船には体のホールド性に優れたハイバック・シートも巡視船として初めて採用されています。