昭和33年に登場した電車特急「こだま」型の発展型で、熊本電化にあわせて誕生したのが交流・直流の両方で運転できる481系です。
この車両は昭和44年にクロ481-5として誕生、東北地方で活躍していましたが、昭和58年に鹿児島車両所に配属となり、普通座席車へ改造されてクハ 481-603と車号が変わりました。九州では特急「にちりん」、「かもめ」、「有明」として使用されたのち、平成9年以降は小倉工場で保存されていました。
■製造初年:1969
■製作社等:日本車両
クロ481-5 予算:43年第4次債務 落成日:1969.06.27
新製配置:仙台 九州地区転属:1983.10.31鹿児島
クハ481改造 603 廃車日:1995.03.24南福岡
九州鉄道記念館 静態保存車
クハ481-603(元・クロ481-5)
廃車後も解体されずJR九州小倉工場に留置されていたが、修復され2003年に開館した福岡県北九州市門司区の九州鉄道記念館で一般公開
1950年代半ば以降、国鉄は地方線区の電化では地上設備の低廉性などから交流電化を推進し、各地に直流電化方式との接続点となるデッドセクションが生じた。さらに特急列車の運転区間が地方線区に拡大され、上述の異電源方式区間への直通運転要求に応えるために製造されたのが本系列である。
1964年(昭和39年)から関西⇔北陸・九州用に直流/交流60Hz対応の481系電車が、翌1965年から関東⇔東北用に直流/交流50Hz対応の483系電車が製造された。
本系列は1979年(昭和54年)まで製造が行われ、四国を除く日本各地の特急列車に投入された。当初は主に東京・大阪・名古屋などの大都市圏と交流電化された東北・北陸・九州方面直通特急で、山陽・東北・上越の各新幹線開業後は新幹線連絡特急などで運用された。
1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化時には、北海道旅客鉄道(JR北海道)・東日本旅客鉄道(JR東日本)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・九州旅客鉄道(JR九州)に継承され、引続き特急運用に投入された。ただしJR北海道へは改造用種車として付随車のみの継承であったが、1両も改造されずに全車廃車となった。1990年代以降では団体専用列車用ジョイフルトレインへの改造も施工された。しかし新幹線の延伸開業などによる運用の減少・老朽化・後継系列の置換えにより廃車が進行し、2015年4月現在で他系列への改造車を除くと定期運用が存在するのはJR東日本のみであり、定期運用が終了したJR西日本は全車廃車。JR九州では波動運用対応車のみが車籍を有する。
外観は151・161系→181系の流れを踏襲しており、先頭部は同様のボンネット型を採用した。ただし1972年以降製造の後期形クハ481形は、ほぼ同時期に登場した183系電車と同様のデザインに変更されたため定員が8人増加した。
床下機器の寸法に合わせ床面の高さを近郊形・急行形の車両よりも10mm高い1,230mmとし、屋根高さも151系に比べて120mm高くなった。運用路線のプラットホーム高さに合せるべく扉にはステップを設置し、東北・北陸などの寒冷地区投入を考慮した耐雪耐寒構造で製造された。また側扉は当初は普通鋼製であったが、1968年以降の製造車は内側が無塗装のステンレス製に変更された。
サービス面では側面行先表示に当初は従来通りサボを使用したが、481系・483系では自動巻取式方向幕搭載準備工事が国鉄車両としては初めて施工され、1968年以降製造された485系では新製時より搭載された。装置は方向幕使用開始時は18コマ対応、後期形以降は40コマ対応となり後に後者へ統一された。
481系
交流60Hz対応車で新製時には向日町運転所(後の京都総合運転所→現・吹田総合車両所京都支所)へ集中配置された。
北陸本線金沢 - 富山操車場(現・富山貨物)間交流電化完成により1964年10月1日のダイヤ改正で新設された「雷鳥」「しらさぎ」に充当を目的にモハ481形・480形電動車ユニット11組22両と制御・付随車19両の計41両が新製されたが、車両落成が同年10月末と遅れた影響などにより運転開始は12月25日に延期された。
翌1965年には151系で運転されていた九州特急「つばめ」「はと」の下関以西電気機関車牽引ならびに山陽本線上り広島 - 八本松間補助機関車連結解消目的の置換えで増備された。
クロ481
1968年の奥羽本線山形・磐越西線喜多方電化完成により「やまばと」「あいづ 」が本系列化されることになったが、仙台運転所の編成には次の制約が課された。
奥羽本線板谷峠急勾配区間で自力走行のためM:T比2:1以上の確保。
磐越西線でのホーム有効長問題から食堂車と1等車を同時連結の上で9両化。
このため日本車輌製造で製造され仙台運転所に集中配置されたのが本形式である。定員は36名。車掌室・トイレ・洗面所・出入口を客室後位側に設置し、冷房装置はAU12形を4基搭載する。また既配置のサロ481形→クロ481形50番台改造工事も施工されたが、新造車も改造車に合わせた設計となったため全長はクハ481形0番台よりも短い21,100mmとなった。
1・2は1975年に南福岡へ、3 - 5は1983年に鹿児島車両管理所でクハ481形600番台へ改造施工された上で同所へ転出したが、1両はクロ481形に復元ならびに原番号復帰。全車とも分割民営化時にはJR九州に承継。1995年までに廃車となった。
クロ481-5 43年第4次債務 1969.06.27 1983.10.31
鹿児島 603 1995.03.24
南福岡 九州鉄道記念館
静態保存車