びざん型巡視船は、海上保安庁の巡視船の一種である。分類上はPS型巡視船で、船種は180トン型。配置替えに伴い、びざん型巡視船→ばんな型巡視船→らいざん型巡視船と名称を変遷してきた。
みはし型巡視船(現しんざん型巡視船)の連続行動時間の延長を図る目的で建造が計画された。乗組員の居住性を向上させるために船型を拡大し、食料や水の搭載量も増やした。主機関はみはし型のものを踏襲して、SEMT ピルスティク製(富士ディーゼル、後に新潟鐵工所によりライセンス生産)の4サイクル高速ディーゼルエンジンを3基搭載しており、V型16気筒型の16PA4V-200VGA(単機出力3,500馬力)を両舷に配してスクリュープロペラ各1軸(計2軸)を、V型12気筒型の12PA4V-200VGA(単機出力2,400馬力)を中央機として低速用ウォータージェット推進機1基を駆動する。
また7番船「みずき」は、新日韓漁業協定によって増加した韓国・朝鮮系の密漁船に対応するために「捕捉機能強化型」に指定され、中央機を両舷機と同機種として出力を増強している。また8番船「こうや」以降は、九州南西海域工作船事件を受けて、推進システムをウォータージェットのみの2軸推進に変更し、軽量化、水中抵抗の軽減、操縦性の向上を図り、操舵室のシートにはホールド性のよいハイバック・シートを採用している。
また、遠隔放水銃、赤外線捜索監視装置、停船命令表示装置、5.4m型複合艇も装備している。現場からの評判は高く、現在でも建造が継続されている。
当初は1番船は非武装、2~6番船は甲板に海上保安官が身を乗り出して射撃する13mm単装機銃(ブローニングM2重機関銃)を搭載していたが、現在は全船、目標追尾型遠隔操縦機能(RFS)付き20mm多銃身機関砲に換装され、防弾ガラスも装備している。
ネームシップのびざん(現らいざん)はかむいより船番号が遅いが、これは配属地によるもので、あくまでもびざんの方が計画・進水とも早い。
本来は巡視船艇の船名は転属に伴って改名されるが、九州南西海域工作船事件に従事した7番船のみずきはその功績から例外として転属後もその名を留めている。なお、みずきは2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件にも従事しており、2012年7月には魚釣島の領海を侵犯した台湾の海岸巡防署の巡視船と衝突している。
建造費は20億円である。
種別 180トン型巡視船
就役期間 1994年 - 現在
前級 みはし型巡視船
次級 つるぎ型巡視船
総トン数 197トン
全長 46.0m
全幅 7.5m
深さ 4.1m
機関 ディーゼルエンジン×3基
スクリュープロペラ×2軸
+ウォータージェット×1基
機関出力 9,400 hp/7,000 kW
速力 35ノット
航続距離 600海里
乗員 15名
兵装 JM61 20mm多銃身機関砲×1門
搭載艇 5.4m型複合艇
C4ISTAR RFS射撃指揮装置(機関砲用)
航行区域:沿海