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ハニフ1形式(デ963形)

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1904年の電化に伴って甲武鉄道が導入した電車は、全長10mあまりの二軸車であった。しかしながら、これらの電車は総括制御機能が備えられており、郊外電車として連結運転が可能で、単車で運行する路面電車とは一線を画する車両であった。主電動機や、制御装置等の電装品はアメリカのゼネラル・エレクトリック社から、台車は同じくブリル社製の二軸台車21Eを輸入し、自社の飯田町工場で車体を新製した。この二軸台車の軸距は10ft(約3m)で車体の割に短く、ピッチング(前後のゆれ)が激しかったという。
電動機は、1904年の車両にはゼネラル・エレクトリック社製の出力45PSのものを、1906年以降増備の車両にはウェスチングハウス社製の出力50馬力が使用され、どちらも1両に2個装備した。集電装置は2線式のトロリーポールで、両運転台車は車体前後の屋根上に1対ずつ4本、片運転台車は後部に1対2本のポールを装備した。
車体は、前後に開放式の出入り台を設けたオープンデッキ式で、出入り台の中央部に運転台が設けられていたが、出入り台には一般旅客と運転手の間に仕切りはなかった。また、前面の窓部は前方に張り出しており、5枚の窓が設けられていた。側面は2個一組の下降窓が6対並び、その上部の幕板にはアーチ状の飾り窓が設けられていた。屋根は、客室部のみをモニタールーフとしていた。
この電車は、1904年に二等三等合造車3両を含む16両が製造され、電化区間の延伸に伴って1906年度に12両を増備、さらに国有化後の1909年(明治42年)度に新宿車庫で4両が製造され、計32両が出揃った。この他に、客車改造の制御車が4両製作されている。
基本形式
1907年の国有化時には28両の電車が引き継がれたが、当面は甲武鉄道時代の記号番号のまま使用され、1909年に鉄道院によって追造された車両もその続番が付与された。1910年(明治43年)3月には、鉄道院による新しい車両形式称号規程の制定により、車内設備と運転台が片側か両側かで3形式に分けられた。その後、前述の付随車が改造により製作されている。

デ963形
計26両が製造された、甲武鉄道の電車を代表する形式で、甲武鉄道の4輪(2軸)電車全体をデ963系と呼称することもある。甲武鉄道時代には、1904年には1, 3, 6 - 13の10両、1906年には17 - 27の11両は飯田町工場で、は28が新宿車庫で製造され、国有化後の1909年には、ハ29 - 32の4両が新宿車庫で製造されている。外観はニデ950形、デ960形とほとんど変わることがない。1910年、鉄道院の車両形式称号規程の制定時には、番号順にデ963形(963 - 988)に改められた。
前述のように、1912年に3両が半室荷物車に改造され、ニデ950形に編入された。その後は後継のボギー車の増備にともなって電装品を流用され、1914年(大正3年)度の時点では、973 - 979, 981 - 987の14両が両運転台式の制御電動車、残りの963 - 965, 967 - 970, 972, 988の9両が片運転台式の制御車となっていた。

甲武鉄道の電動車のホイールベースは10ftであったが、車体長の割にホイールベースが短いため、前後の動揺(ピッチング)や蛇行動(ヨーイング)が激しく、その改善のため、1909年に一部の車両についてホイールベースの延長が行われた。台車を分割してその間に鋼材を継ぎ足し、2ft6in延長したものである。この改造は、これらが私鉄に譲渡された後にも行われている。これらの4輪電車は、後継のボギー電車(ホデ1形。後のホデ6100形)の増備にともなって余剰となり、1914年度から1915年(大正4年)度にかけて電装品を新製車に譲り渡して客車として、当時勃興しつつあった地方私鉄の開業用に譲渡された。

 

本系列のうち、信濃鉄道から松本電気鉄道に移ったデ968 → ハニフ1については、国鉄電車の祖としての価値が認められ、廃車後も同社新村車庫に設けられた専用の庫内に保存された。その間、何度も国鉄による保存計画が取り沙汰されたものの、実現に至ることはなかった。しかし、2007年(平成19年)10月14日にさいたま市大宮区に開館した鉄道博物館で保存展示されることが決定し、同車は同年3月に松本電気鉄道から東日本旅客鉄道へ寄贈され、当面はハニフ1のままで展示されている。デ968への復元は、今後検討されることとなっている。


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