近江鉄道800系電車(おうみてつどう800けいでんしゃ)は、近江鉄道の通勤型電車である。
本系列は西武401系を1990年(平成2年)から1997年(平成9年)にかけて譲り受け、自社彦根工場にて改造の上で登場したもので、近江八幡・貴生川寄りからモハ800形(820形)-モハ1800形(1820形)の順に編成されている。。
ワンマン運転対応工事施工(車外バックミラー・料金表・運賃箱設置等)
空気制動の電気指令ブレーキ化
連結面寄り裾角の切り欠き
電気連結器の撤去
モハ800形の連結面寄りのパンタグラフ撤去
主要機器に関しては制動装置の改造以外はほぼ西武在籍当時のまま使用されている。車体塗装は西武時代と変わらず黄色一色とされており、本系列全編成の標準塗装となっている。また現在、従来ステンレス地むき出しで無塗装とされていた客用扉の黄色塗装化およびシートモケットの更新、つり革の交換が順次施工されている。
15編成計30両を数えた元401系譲受車のうち大半が本系列に改造され、2015年(平成27年)3月現在13編成26両が在籍している。
2015年(平成27年)後半から扉の開閉時に鳴動するドアチャイムの新設が行われている。
800系
本系列のうち11編成22両を占める基幹形式である。正面形状が220形類似の額縁タイプの三面折妻形態に、前照灯および標識灯が角型タイプの一体ケース収納型に改造されているが、本形式では非貫通構造とされた点が異なる。また、種車401系の形態上の相違点の存在[注釈 8]や、改造が長期にわたっていることから、編成ごとに形態の差異が見られる。
以下、編成ごとに仕様の詳細を述べる。なお、竣工に際しては全編成とも近江鉄道従来車の改造扱いとされ、西武鉄道時代からの車籍は継承されていない。
801F
モハ801-モハ1801
1999年(平成11年)登場。種車は元403Fである。普通屋根・露出型雨樋縦管の初期型車体を持ち、本系列のトップナンバー編成として1993年(平成5年)に竣工していたが、落成当初は1801が電装解除されて1M1T編成であったことや、パンタグラフが2基搭載のままとされていたこと、車体塗装が220形と同じライオンズカラーであったこと等がその後に登場した編成と異なっていた。しかし、竣工後八日市線の車両限界に抵触することが判明し、改良工事が完了するまで約6年もの間使用されることなく彦根工場構内に放置されていたという経歴を持つ。1999年(平成11年)にようやく営業運転を開始したが、その際801のパンタグラフを1基撤去し、1801を再度電装して他編成と仕様を揃えている。
長らく本系列唯一のライオンズカラー編成として使用されていたが、2009年(平成21年)の定期検査の際に黄色一色塗装化され、同時に客用扉の黄色塗装化も実施されている。なお、本編成は2代目ギャラリートレインとして使用されていたが、塗装変更を機にその座を805Fに譲っている。ちなみに塗装変更前のライオンズカラーでギャラリートレインだった時はギャラリートレインのヘッドマークが取り外されることがなかったため近年、デビュー時には見られた貫通扉に描かれているヘッドマークの下の「レオ」が見られることはなかった(同様のものは220形で見られる)。 2012年(平成24年)には特定健康診査・がん検診の受診を啓発する広告編成となり滋賀県のキャラクター「キャッフィー」をメインに、ピンク色を基調としたデザインになっている。
802F
モハ802-モハ1802
1998年(平成10年)登場。種車は元425Fである。前述のように801Fが遅れて営業運転に就いたため、事実上のトップナンバー編成として竣工している。当初より車体塗装が黄色一色とされたことや、2M編成として竣工したこと、パンタグラフが1基搭載とされたこと以外は801Fに準じるが、張り上げ屋根の後期型車体を持つため外観から受ける印象は異なる。
なお、本編成は2002年(平成14年)からダイドードリンコ社の広告編成となっており、橙塗装をベースに同社の広告がラッピングされた姿で使用されている。 2002年のデビュー当初はもとの黄色の車体に橙のラッピングテープを貼りつけたラッピング車であったがその後もダイドードリンコ社が広告として継続していたため2003年(平成15年)よりデザインを変更するとともに直接、車体に橙の塗装をしその上缶コーヒーなどの写真をシールとして貼るという形態に変更された。 その後もラッピングは継続し2006年(平成18年)のにも再びデザインが変更された。 なおをラッピングを実施されている期間中にも他の車両などの運用の都合によっては橙一色のまま彦根車庫に留置されたり運用されたりもしている。 2010年(平成22年)には、上半分が薄い橙、下半分が白、全体に缶コーヒーのシールとこげ茶色の斑点模様という、従来とは全く違うデザインに一新した。。
803F
モハ803-モハ1803
1999年(平成11年)登場。種車は元415Fである。801Fと同一形態の初期型車体を持つが、こちらは当初から黄色一色塗装で竣工した。初代ギャラリートレインとして使用された後、2008年(平成20年)にシートモケットの交換および客用扉の黄色塗装化が施工されている。
804F
モハ804-モハ1804
1999年(平成11年)登場。種車は元423Fである。本編成は普通屋根・埋め込み型雨樋縦管の中期型車体を持つが、客用扉窓固定支持が金属押さえタイプである他、座席肘掛が網棚一体型である等、後期型との折衷設計となっていることが特徴である。
805F
モハ805-モハ1805
2000年(平成12年)登場。種車は元417Fである。804Fと同一形態の中期型車体を持つが、こちらは客用扉固定支持がHゴムタイプで、座席肘掛も丸型である等、標準的な仕様とされている点が異なる。本編成も座席モケットの交換が施工され、現在3代目ギャラリートレインとして使用されている。
806F
モハ806-モハ1806
2000年(平成12年)登場。種車は元421Fである。805Fと同一形態の中期型車体で、各種仕様も同一である。2006年(平成18年)の定期検査の際、車体再塗装と同時に客用扉の黄色塗装化が施工され、この形態が標準仕様として現在他編成にも波及しつつある。また本編成も座席モケットの交換を施工しているが、同時に乗務員室直後の座席が撤去され、車椅子スペースが新設されている。
2011年(平成23年)には、近江鉄道で映画「けいおん!」公開記念スタンプラリーが実施されたのに伴い、スタンプラリー告知の車体シールが掲出された。スタンプラリー告知の車体シールの掲出期間はスタンプラリー実施期間の12月3日から12月31日と同期間と近江鉄道ホームページでは告知したが終了が年末ということもあり、年が明けて2012年(平成24年)になってもしばらく掲出されたままだった。
2012年(平成24年)9月よりBIWAKOビエンナーレ2012の開催に伴ってBIWAKOビエンナーレの告知の車体シールが掲出され、当編成を使用した電車茶会も開催された。
807F
モハ807-モハ1807
2002年(平成14年)登場。種車は元413Fである。801F・803Fと同一形態の初期型車体を持つが、本編成より車内外の仕様に変化が生じている。
投入金額表示機能付の新型運賃箱設置
乗務員室直後の座席を撤去し、車椅子スペースを新設
連結面に転落防止外幌を新設
上記仕様は以降の本系列改造に際しても踏襲されることとなった。また、本編成より改造時に車体全体の再塗装が行われるようになっている。本編成はイベント用電気回路を装備しており、毎年夏季に運行されるビア電「一番絞り号」等イベント列車運行の際は本編成が使用される。なお、本編成も座席モケットの交換が施工されている。
808F
モハ808-モハ1808
2002年(平成14年)登場。種車は元433Fである。802Fと同一形態の後期型車体である他は807Fの仕様を踏襲している。
本編成は2006年(平成18年)よりエレベーター大手製造会社フジテックの広告編成となり、赤塗装をベースに同社の広告がラッピングされた姿で使用されていた。
2017年(平成29年)年2月11日より、「豊郷あかね」ラッピング車両として運転されている。
809F
モハ809-モハ1809
2003年(平成15年)登場。種車は元435Fである。802F・808Fと同一形態の後期型車体で、各種仕様も809Fに準じるが、運賃箱が廃車となったLE10形12からの発生品であったことが異なる。
本編成は2009年(平成21年)4月より近江キャラ電「いしだみつにゃん&しまさこにゃん号」として運行を開始し、802F同様のオレンジ塗装をベースにキャラクターのラッピングが施された他、車内座席モケットも水色地にキャラクターの画像がプリントされた専用のものと交換されている。また、同時に運賃箱が807F以降で採用された新型のものに交換された。
810F
モハ810-モハ1810
2005年(平成17年)4月登場。種車は元427Fである。本編成は802F・808F・809Fと同様後期型車体であるものの、客用扉窓固定支持がHゴムタイプである他、座席肘掛が丸型である等、初期・中期型との折衷設計となっていることが特徴である。なお、本編成は当初700系702Fとして竣工予定であったが、諸事情から急遽800系に設計変更された経歴を持つ。本編成も座席モケットの交換を施工されている。
本編成は2010年(平成22年)4月より日本コカ・コーラ社の広告編成となり、白と赤のツートンカラーに塗装変更された上でコカ・コーラのロゴなどのラッピングが施されている。
2015年(平成27年)09月よりピンク一色の塗装になっている。この時点ではラッピングされるのかは不明だった。
2015年(平成27年)10月より特定健康診査・がん検診の受診を啓発する滋賀県のキャラクター「しがのハグ&クミ」をメインにした広告編成となり、ピンク色を基調としたデザインになっている。
811F
モハ811-モハ1811
2009年(平成21年)4月登場。種車は元411Fで、801F・803F・807Fと同一形態の初期型車体を持つ。なお、本編成は当初から客用扉が黄色塗装とされ、座席モケットも青色モケットに交換された上で竣工している。
2012年(平成24年)に、11月2日公開の映画「のぼうの城」に合わせ沿線が舞台ということもあり、10月1日より『映画「のぼうの城」公開記念ラッピング電車&ロケ写真展号』が運転されており車内では、映画「のぼうの城」写真展を開催している。またラッピング電車の運行に合わせて10月14日から近江鉄道では映画「のぼうの城」公開記念乗車券も発売された。
本編成は2015年(平成27年)4月より伊藤園の広告編成となり、黄緑と濃緑に塗装変更された上でお〜いお茶のロゴなどのラッピングが施されている。
運用者 近江鉄道
製造所 西武所沢車両工場
種車 西武401系
改造所 近江鉄道彦根工場
改造年 1993年 -
改造数 22両
運用開始 1999年
主要諸元
編成 2両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流 1,500 V
車両定員 136 名(座席56名)
自重 37.8 t
全長 20,000 mm
全幅 2,937 mm
全高 4,150 mm
主電動機 直巻電動機HS-836-Frb
主電動機出力 120 kW / 個
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比 15:84=1:5.60
編成出力 960 kW
制御方式 抵抗制御
制御装置 MMC-HT-20A
制動装置 HRD電気指令ブレーキ
備考 数値はモハ800形のもの。