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IKAROS 小型ソーラー電力セイル実証機(JSPEC/JAXA)

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IKAROS(イカロス)とは独立行政法人宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)及び月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC/JAXA)が開発した小型ソーラー電力セイル実証機である。名称は「太陽放射で加速する惑星間凧宇宙船」を意味する英語の「interplanetary kite-craft accelerated by radiation of the Sun」にちなむものであり、森治により、ギリシア神話の登場人物の一人イカロスにちなんでつけられた。

金星探査機「あかつき」と共に、2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、6月3日から6月10日にかけてセイルを展開、7月9日に太陽光(太陽風ではない)による光子加速の実証が確認された。12月8日には金星フライバイを行っている。

IKAROSはソーラーセイルを主推進として利用する世界初の惑星間航行宇宙機であり、主に以下の4つの項目について技術実証を行う計画である。

大型膜面及び展開機構の開発と展開制御技術の確立
太陽電池セルを搭載したソーラー電力セイルからの集電
光子セイルによる加速実証と加速性能の推定
操舵装置の搭載による光子セイルを用いた航行技術・方向制御技術の確立
打ち上げ後数週間で上記2項目(ミニマムサクセス)を達成し、その後約半年かけて下記2項目(フルサクセス)を達成した。 2010年12月8日には金星フライバイを行い、当初予定していたミッションをすべて成功させた。 今後も更なる技術検証および習得を目指して運用が行われる予定である。

本体とセイルに大別される。スピン安定であり、セイルの展開もスピンを利用して行われる。

本体
直径1.58m高さ0.9454mの円柱状であり、主に構造部、太陽指向面、ミッション部、バス部から構成される。構造部はロケット結合部、ロケット結合部と太陽指向面を接続し全体の構造強度を保つスラストチューブから構成される。太陽指向面には補助用太陽電池が配置される。ミッション部はセイルの収納、テザーの結合、ブラシレスモータを用いたセイルの展開等を行い、セイルとバス部の電気的接続を担う。バス部はスラストチューブ内に配置され、CPUなどの演算制御機器で構成される。バス部については、れいめいやはやぶさ、あかつき等で開発した部品を使用したり、開発が中止になったLUNAR-A母船の部品の一部を流用することで、リスクやコストの低減をはかっている。また2個のスプリング射出式分離カメラ(DCAM1, DCAM2)を装備しセイル展開状態の本体を撮影できるようになっている。

通信アンテナは、地球との通信用に低利得アンテナ (LGA) が表と裏に2基搭載されている。中利得アンテナ(MGA)も1基搭載しているが、金星フライバイまでに使われることはなかった。このほかVLBI用・DCAM用アンテナを別途搭載している。

セイル
ポリイミド製のセイルは膜厚7.5μmで14m四方の正方形であり、4枚の台形ペタルから構成されている。それぞれのペタルはブリッジで結合されており、本体とは16本のテザーによって結合されている。4つの頂点にはそれぞれ500gの重りが取り付けられており、スピン展開時には遠心力によって先導的な役割を果たす。薄膜太陽電池セルは膜厚25μmでセイルの半ばに本体を囲むように正方形に配置され、面積比ではおよそ10%を占める。セイル片面にはアルミ蒸着が施されており、電位差や電流分布から太陽風プラズマの観測が可能である。他に8ヶ所にダストカウンタが搭載され、宇宙塵の観測を行う。操舵装置として液晶を利用した電気式の調光フィルムが各頂点両側、合計8ヶ所に搭載される。これは、反射率を変化させることで光圧のバランスを崩し、発生したトルクによってセイルの姿勢制御を行うものである。


「IKAROS」は、2010年5月21日6時58分22秒(以下全て日本時間)に、種子島宇宙センターから金星探査機「あかつき」及び小型副衛星4機とともにH-IIAロケット17号機により打ち上げられた。ロケットは順調に飛行しあかつきは所定の軌道に投入された。IKAROSも計画通り分離信号を受け無事に分離された。5月24日、初期動作チェックを終え、実証実験へ移行した。

定常運用
6月3日にセイルの展開を開始し、6月10日に地球からの距離約770万kmにて、セイルの展張、及び薄膜太陽電池による発電を確認した。これによってミニマムサクセスは達成された。6月15日には分離カメラDCAM2を射出し、セイルを展張したIKAROS全体の撮影に成功した。6月19日にはもう一方の分離カメラDCAM1をより低速度で射出し、方向制御用の液晶デバイスの作動を確認した。

6月21日にはIKAROS本体に搭載されたガンマ線バースト観測器(GAP)が稼動し、22日にはセイルに搭載されたダスト検出器(ALADDIN)に電源が入った。7月7日にはGAPが運用開始後初めてガンマ線バーストを観測した。

セイル展開の成功を受け、7月よりフルサクセスの光子加速実証フェーズへと移行、7月9日、以前よりとれていたドップラー効果を利用した地球に対するIKAROSの相対加速度のデータに加え、新たに算出されたレンジアンドレンジレート(RARR)によるIKAROSの軌道決定により、IKAROSが太陽光を受けて光子加速を行っていることを確認した。その力は地球上で0.114グラムの重りがぶら下った程度の力とされる(約1.1×10−3 ニュートンに相当)。続けて7月13日に姿勢制御デバイス(液晶デバイス)によるセイルの姿勢制御実験が行われ、想定通りの姿勢制御性能を達成していることが確認された。

12月8日、日本標準時16時39分、IKAROSは金星から80,800kmの地点を通過。ソーラーセイル宇宙機としてははじめて、他の惑星の近傍に到達した。機体は良好な状態を保っている。

後期運用
2011年1月には、約6ヶ月間の定常運用を終了し、後期運用に入ったと報告された。期間は2012年3月末までで、後期運用終了時に継続運用の是非を判断する。 2011年10月には「膜面挙動・膜面形状の変化を積極的に引き出して展張状態の力学モデルを構築する」ことを目標に機体の回転方向を反転させる逆スピン運用が実施され、問題なく逆スピン状態になった。 2012年1月には、運用状況からIKAROSが冬眠モード(発生電力低下による搭載機器シャットダウン)に移行したことが確認された。

2012年3月の報告では後期運用中の低スピン運用や逆スピン運用、大姿勢変更運用によって膜面形状や膜面姿勢運動に関する想定外の現象が見られたことが報告された。また、2012年度の運用では6月から10月には冬眠モードから復旧しデータ取得ができる可能性が報告されていたが、9月6日に電波を発見し8日にIKAROSが冬眠モードから明けた(復旧)ことが確認できた。

その後まもなく、11月22日には再び冬眠モードに入ったことが確認された。その間はビーコン運用だけだったため、画像などの詳細なテレメトリこそ得られなかったが、それまでに得られたデータをまとめるため、翌2013年3月28日にプロジェクトチームの解散が発表された。なお同年初夏に予想されるIKAROSの冬眠開けに向け、運用継続が発表され、その後、予定通り電波の捕捉ができていることが報告された。9月には3度目の冬眠モードへ移行した。

2014年5月22日にも3回目の冬眠モード明けで電波の受信に成功し、8月7日には4回目の冬眠モードへ移行した。

2015年4月23日、4回目の冬眠モード明けで電波の受信に成功した。

ミッション終了後のイカロスは太陽の周りを約10ヶ月で公転しているが、姿勢制御をしていないため太陽電池に日が当たる期間に地球が電波の届く位置にないとテレメトリは得られない。今後も冬眠と冬眠明けを繰り返す事になる。

公式Twitterにおいて、運用チームのメンバーがIKAROSの擬人化キャラクター「イカロス君」としてミッションの進行状況を広報している。2010年9月9日、「イカロス君」が第8回Webクリエーション・アウォードにおいて一般投票の最多得票者に贈られる「気になるWeb人で賞」を受賞した。 2010年12月12日、IKAROSのミッションをわかりやすく解説した政府公刊物「イカロス君の大航海」が発行、2012年3月10日には東日本大震災復興支援プロジェクトとして「イカロス君のうた」(歌:間宮くるみ、作詞:ゆうきよしなり、作曲/編曲:真鍋旺嵩、中沢昭宏 (WEEAST)、ディレクション/ミックス:安保一生、イラスト/映像:みみみみドイツ)がIKAROS専門チャンネルにて公開された。子供から大人まで楽しめる内容になっている。

所属 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
主製造業者 NEC東芝スペースシステム
公式ページ 小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」
国際標識番号 2010-020E
カタログ番号 36577
状態 運用中
目的 ソーラー電力セイルの実証
計画の期間 半年
打上げ機 H-IIAロケット 17号機
打上げ日時 2010年5月21日
6時58分22秒(JST)
物理的特長
本体寸法 直径1.58 m × 高さ0.9454 m (円筒型)
最大寸法 直径20 m (約14m×約14mの四角型ソーラー電力セイル展開時)
質量 (打上げ時)310 kg
(ドライ)290kg
(膜面) 15kg
主な推進器 200m2ソーラー電力セイル
23NHFC-134a気液平衡スラスタ
姿勢制御方式 スピン安定制御
軌道要素
周回対象 太陽
軌道 地球-金星遷移軌道
近点高度 (hp) 0.7 au
遠点高度 (ha) 1 au
観測機器
ALADDIN 大面積薄膜ダスト検出アレイ
GAP ガンマ線バースト偏光検出器
DCAM1 スプリング射出式分離カメラ1
DCAM2 スプリング射出式分離カメラ2


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