特急ゆふ(キハ185系気動車)
ゆふは、九州旅客鉄道(JR九州)が博多駅 - 大分駅・別府駅間を、鹿児島本線・久大本線・日豊本線経由で運転する特急列車である。
特急「ゆふ」は、1992年7月15日にそれまで博多駅 - 別府駅間で運行されていた急行「由布」(ゆふ)を、四国旅客鉄道(JR四国)から購入したキハ185系気動車を投入の上で特急に格上げする形で運行を開始した。「由布」自体が運行開始したのは1961年10月1日に博多駅 - 由布院駅 - 別府駅 - 門司港駅間で運転開始した準急列車としてで、この運転区間から分かるように循環列車に近い性格を持った列車であったが、1968年10月1日に博多駅を起終点とする循環急行「ゆのか」を吸収して2往復体制となった際に博多駅 - 別府駅間運転の急行に改められた。
1980年10月1日には別府駅 - 長崎駅・佐世保駅間を運行していた急行「西九州」を博多駅発着に変更のうえで「由布」に編入し、「由布」は3往復体制となった。以降、「ゆふ」への変更を経て2013年現在まで3往復体制で推移している。なお2004年3月13日から2011年1月10日まで、「ゆふ」の一部はキハ183系気動車を充当した「ゆふDX」(ゆふデラックス)として運行されていた。
特急「ゆふいんの森」は1989年3月11日に運転開始した観光列車で、現在九州各地で運行されている「D&S列車」(デザイン&ストーリー列車)の嚆矢となった。当初から専用編成に予備がない関係で臨時列車として運行されている。
なお、2017年7月に発生した九州北部豪雨により光岡駅 - 日田駅間の鉄橋が流出し、復旧のめどが立っていないため、当面「ゆふ」「ゆふいんの森」は本来と別の区間で臨時運転を行う。
列車名の由来
「由布」→「ゆふ」は、豊後富士とも呼ばれる大分県由布市にある由布岳が由来となっている。「ゆふいんの森」は由布岳と湯布院町(当時)にちなんでおり、牧歌的な風景をイメージしたものである。
基本的には「ゆふ」、「ゆふいんの森」と2系統の特急列車として運転されているが、「ゆふいんの森」の運休時には同一ダイヤで「ゆふ」が運転されている。由布院駅・大分駅方面への列車が下り、博多駅方面への列車が上りとして扱われている。
九州新幹線鹿児島ルートの全線開業以降は、日中に鹿児島本線鳥栖駅 - 久留米駅間を運行する唯一の特急列車になっている。
ゆふ
博多駅 - 別府駅間2往復(下り1・3号/上り4・6号)、博多駅 - 大分駅間1往復(下り5号/上り2号)の計3往復が運行されている。列車番号は号数+80Dである。
1992年の特急格上げ時点では3往復とも別府駅発着で運行されていたが、2001年に1往復が大分駅発着に変更され、さらに2008年3月15日からは大分駅高架化事業に伴い大分駅 - 別府駅間が臨時列車扱いになり、同年8月24日からは運行自体を休止していた。しかし高架化事業の進捗により、2008年3月ダイヤ改正以前に別府駅発着だった列車に関しては、2012年3月17日のダイヤ改正で別府駅発着に戻されている。
キハ185系気動車(キハ185けいきどうしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が開発し、1986年(昭和61年)から四国地区に投入された特急形気動車である。
1987年(昭和62年)4月の国鉄分割民営化に際しては、全車が四国旅客鉄道(JR四国)に引き継がれ、同社によっても増備が行われた。その後、一部の車両が九州旅客鉄道(JR九州)に譲渡されている。
製造者は、日本車輌製造、新潟鐵工所・富士重工業である。
1986年11月1日のダイヤ改正から営業運転を開始した。
JR九州
山岳路線におけるローカル特急に使用されている。2009年3月からは、車内にあった喫煙コーナーを撤去して全面禁煙としている。
九州横断特急とゆふ用の車両は大分鉄道事業部大分車両センター(分オイ)に、A列車で行こう用の車両は熊本鉄道事業部熊本車両センター(熊クマ)に配置。ただし、運用は久大本線系統・豊肥本線系統・三角線系統で分離されている。
豊肥本線系統:「九州横断特急」
2011年3月 - 5月末までは観光特急「あそぼーい!」の代走として「阿蘇ゆるっと博号」に使用された。
2016年3月25日までは肥薩線人吉駅まで乗り入れ、特急「九州横断特急」の熊本駅-人吉駅間及び特急「くまがわ」にも使用されていた。
久大本線系統:「ゆふ」
三角線系統:「A列車で行こう」 - 改造された特別仕様編成(キハ185-4 + キハ185-1012)が使用される。
所有車両
キハ185形0番台 (Mc) 定員60名
5両(1・3・5・7・15)
キハ185形0番台 (Mc) 定員52名
6両(2・4・6・8・10・16)※車販準備室と電話室を設置。
キハ185形1000番台 (Mc') 定員64名
5両(1001・1004・1008・1011・1012)
キハ186形(元キロハ186形) (M) 定員56名
4両(3・5 - 7)(改番なし)
JR九州のキハ185系
2000系の増備でキハ185系は余剰気味となったことから、急行「由布」・「火の山」の車両置き換えを検討していたJR九州に20両が売却され、1992年に機関車牽引で小倉工場へ甲種輸送された。1992年7月ダイヤ改正より、特急「ゆふ」・「あそ」での運用が開始された。
JR九州への売却車両
JR九州に売却された車両は、以下のとおりである。いずれもJR四国の車籍抹消は1992年2月12日付、JR九州の再登録は営業運転開始と同日の同年7月15日付である。
キハ185-1 - 8・10・15・16・1001・1004・1008・1011・1012
キロハ186-3・5 - 7(譲受後全車キハ186形に改造)
JR九州での改造工事
JR九州へ売却された車両は「ゆふ」・「あそ」用に赤と銀を用いた塗色へと変更され、キハ185形の一部(-2、4、6、8、10、16)は電話室、車販準備室を設置した。また先述のように譲受したキロハ186形は豊肥本線や久大本線の勾配対策でエンジンを1基追加して2基搭載し、グリーン席を廃止したキハ186形に改造した。 このとき車内は787系とあわせた、グレーを基調とした内装に変更。シートモケットも787系にあわせた黒色ベースのものとなり、車内の雰囲気は大きく変化している。
さらに2004年には「あそ」の廃止と「九州横断特急」・「くまがわ」の運転開始により該当車両ではワンマン運転対応工事[が施工されるとともに、客室内装は木材を多用した明るい雰囲気へと再リニューアル、あわせてフォグランプ設置、外板塗装の変更といった改装が施された。 加えて2008年からは、順次エンジンを低公害のDMF11HZ系エンジン(コマツ製SA6D125HE-1,355ps)に換装、液体変速機もあわせて新型のものに交換されている。また、ATS改造工事を受けて、ATS-S形からATS-SK形に更新。その後、ATS-DK形への更新を受けている。
九州横断特急
特急「九州横断特急」は、2004年3月13日の九州新幹線鹿児島ルート部分開業の際、前述の特急「あそ」と、熊本駅 - 人吉駅間で運行していた急行「くまがわ」を系統統合する形で運行を開始した。この時に「あそ」と統合されなかった「くまがわ」に関しては同列車名・同区間のまま特急に格上げとしたため、熊本駅 - 人吉駅間には「九州横断特急」「くまがわ」の2系統の特急列車が運行されるようになった。
豊肥本線は古くから観光路線としての位置づけが強く、1954年に熊本駅 - 別府駅間運行の快速「火の山」(ひのやま)が設定されたのを端緒として多くの優等列車が設定された。それらの優等列車は、2006年に廃止された三角島原フェリーを介して阿蘇山と島原半島が観光ルートとして一体化してとらえられていたことから、三角線三角駅まで直通する列車も多く設定されていた。その後、豊肥本線の優等列車は1975年3月10日に急行「火の山」に一本化され、三角線への直通を終了した1986年11月1日以降は熊本駅 - 別府駅間で3往復の運行となり、四国旅客鉄道(JR四国)から購入したキハ185系気動車を充当して1992年7月15日に特急「あそ」に格上げされ[1]、九州新幹線鹿児島ルート部分開業までこの体制で推移していた。
「九州横断特急」は2011年3月12日のダイヤ改正で人吉駅発着列車の約半数について熊本駅 - 人吉駅間を「くまがわ」として系統分離し、2013年3月16日のダイヤ改正で「くまがわ」を再統合していた。2016年3月26日のダイヤ改正で「九州横断特急」の熊本駅 - 人吉駅間および「くまがわ」が廃止され、「九州横断特急」の運行区間は「あそ」と同様になったが、その直後の4月14日夜から発生した一連の熊本地震の影響で、現在も熊本駅 - 阿蘇駅間が運休中である
運行概況
阿蘇駅 - 大分駅間1往復、阿蘇駅 - 別府駅間1往復の計2往復が運行されている。号数は71 - 74号が与えられている。
「あそ」時代は3往復、全列車3両編成での運行で、号数は熊本駅発が下り、別府駅発が上りとなっていたが、「九州横断特急」に改組された際に4往復、全列車2両編成での運行となり、JRグループの特急としては異例のワンマン運転が導入された(多客期など、3両以上で運転する際には車掌が乗務していた)。また号数は鹿児島本線・肥薩線内での方向に合わせて、別府駅発が下り、人吉駅・熊本駅発が上りと改められた。2016年3月26日のダイヤ改正で全列車熊本駅 - 別府駅間の運行になったのに合わせて3往復、全列車3両での運行となり、車掌乗務開始、号数も「あそ」時代と同様に戻されていたが、約半月後の4月14日に熊本地震が発生して全区間運休となった。7月9日に阿蘇駅以東で運行を再開した際は全列車2両での運行となり、ワンマン運転が復活している。2017年3月4日のダイヤ改正では2往復に削減され、さらに「九州横断特急」としては初めて大分駅発着の列車が設定された。なお、2016年7月9日の運行再開時点では阿蘇駅 - 宮地駅間は快速列車扱いで、この区間は「九州横断特急」以外の列車は運行されていなかったが、2017年3月4日より普通列車の運行が再開されたことを受けて阿蘇駅 - 宮地駅間も特急列車として運行されるようになった。
大分駅は高架化工事により高架化されたが、工事進捗の都合により2008年3月15日から2012年3月16日までは日豊本線は地上ホーム、豊肥本線・久大本線は高架ホームと分けられていた。そのため日豊本線と豊肥本線・久大本線の直通運転は中断されていたが、「九州横断特急」のみは別に設けられた渡り線を経由して地上ホームに発着しており、この期間も別府駅発着で運行されていた。
立野駅は本線自体がスイッチバック構造となっており、下り列車の場合、肥後大津方面から走って来た列車は立野駅構内に入線した後、いったん逆方向に走ってスイッチバックの頂点で停車し、方向を元に戻して赤水方面へと出発していく。
人吉駅に乗り入れていた時期は、熊本駅 - 人吉駅間は熊本駅 - 松橋駅 - 新八代駅 - 八代駅 - 坂本駅 - 球泉洞駅 - 一勝地駅 - 渡駅 - 人吉駅に停車していた(松橋駅・球泉洞駅は一部のみ停車)。また人吉駅発着列車は熊本駅で列車の進行方向を変えていた。
編成
大分鉄道事業部大分車両センターに配置されているキハ185系気動車「九州横断特急」仕様の2両編成を充当している。普通車のみの編成で、指定席と自由席が1両ずつ設定されている。通常は九州横断特急ロゴ入りの専用塗装車が使用されるが、キハ186形が組み込まれた場合や専用塗装車が検査等の場合には「ゆふ」塗装車が運用に入ることがよくある。車体ロゴが「ASO YUFU」となっているが、この場合でも車内には差異はほとんどない。
製造所 日本車輌製造・新潟鐵工所・富士重工業
主要諸元
最高速度 110km/h
車両定員 60名(キハ185形0番台)
自重 39.0t(キハ185形0番台)
最大寸法
(長・幅・高) 21,300mm×2,903mm×3,845mm
車体材質 ステンレス
台車 円錐積層ゴム式ボルスタレス台車
DT55(動力台車)・TR240(付随台車)
機関出力 250ps(DMF13HS)×2(キハ185形)
変速段 変速1段・直結1段
駆動方式 液体式(TC2A/DF115A)
制動装置 電磁自動空気ブレーキ(CLE)
保安装置
ATS-SS(JR四国)
ATS-SK、ATS-Dk(JR九州)
備考
第27回(1987年)
ローレル賞受賞車両