KHR-1は、1968年(昭和43年)、川崎重工が製作し、飛行試験を行ったリジッド・ローターの実験機です。 新技術の研究のために1機だけ製造した実験用のヘリコプターです。
母機は当時川崎重工が製造していたKH-4というヘリコプターで、これはライセンス生産を行っていたベル47Gの能力向上型でした。
リジッド・ロータは無関節ロータとも呼ばれ、構造がシンプルで整備がしやすく操縦もしやすいという優れた特性を持っているため、最近の新しいヘリコプターの多くに採用されています。
KH-4はシーソーローターの機体でしたが、これを独自に開発した特殊鋼製板バネ式ハブの3枚ブレードのリジッド・ローターに置き換えた
試験の結果、リジッド・ローターの良好な操縦性が実証され、このリジッド・ロータをベースにして新たにKH-7ヘリコプターの開発が進められましたが、当時のオイルショックの影響を受けて、このKH-7ヘリコプターの開発は途中で中止されてしまいました。
しかし、同じクラスのヘリコプターの開発を目指していたドイツのMBB(メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム、現在のユーロコプター・ドイツ社)との共同開発のBK117へと発展しました。
しかし、BK117では、ローターシステムはMBBの担当となり、KHR-1で実証されたローターハブ技術は活かされることはありませんでした。
金属製のリジッド型ローターハブ。BK117とは全く異なる設計です。
BK117のハブはチタン製で、ほとんど固定翼機のプロペラ・ハブにようなもの。ヒンジの役割はブレードの根元部が担っています。
このハブは特殊鋼製板バネがフラッピングを担っています。
機械的なベアリングは、ブレードの迎え角を変えるためのフェザリング・ヒンジだけ。
フラッピングとリードラグのヒンジはありません。
BK117で独自ハブ設計を活かせなかった川崎重工は、その後OH-1につながる複合材ヒンジレス・ハブの開発を推し進めます。
OH-1では複合材料に変わって薄い板状のハブプレートが復活している。川崎重工のローター屋の執念とも言える。ヘリコプターの心臓部であるロータを開発した能力と実績は、その後のBK117ヘリコプターやOH-1観測ヘリコプターの開発に大きく貢献した。