人命救助システム(じんめいきゅうじょシステム)は、自衛隊で採用され災害派遣等の際に使用される機材の事である。
1995年に発生した阪神淡路大震災のおり、自衛隊がそれまで有していた装備では対処が難しかった事を教訓に開発された。捜索・救助活動、負傷者の搬送まで完結した機能を有し、各器材はコンテナに収められヘリや車両で輸送される。これによって被災地での速やかな展開を可能としている。
地震・津波等による災害および航空機事故等の大規模な事故により倒壊した家屋や事故機等から被災者を捜索し、救助するために運用する事を目的として、全国各地の部隊に配備されている。器材の殆どは自衛隊専用に開発されたものではなく、民生品の流用である。
人命救助システムには平成7年度予算で取得したタイプの「人命救助システム I 型」と、平成10年度予算で取得したタイプの「人命救助システム II 型」の2種がある。明確な資料がないので詳細は不明だが、この2種の構成品には大差はなく、「I 型」は隊員100名が使用する各種救助用器材をトレーラー牽引式のコンテナに格納したもので、コンテナ本体は拡張・展開させて現場で救護所や指揮所として使用できるように、内部に照明設備やユニットタイプのトイレ・シャワー室を備えている。
これに対し「II 型」は各種器材を個人用器材・分隊用器材・小隊用器材・中隊用器材に分類し、専用のアルミ製コンテナに格納したものを指すようだ。このアルミコンテナは3 1/2tトラックに積載して運搬できる他、大型ヘリコプターや輸送機での空輸も可能となっている。「II 型」は1個中隊が使用できる50人用セットで、人数分の個人用器材の他、分隊用器材4セット、小隊用器材2セット、中隊用器材1セットで構成される。
運用要領として、警備隊区担任部隊長は災害発生に伴い、人命救助システムをすみやかに災害現場に搬送し、災害救援の初動を容易にする、となっている。また大規模な災害に際しては、必要により方面隊・師団等各級レベルの権限の範囲において、人命救助システムを災害現場に増加して対処する。状況次第では他方面隊からの転用も考慮される。
自衛隊の装備品は災害救助に転用できるものが多いが、純粋に災害派遣のためだけの装備というのはなかなか無い気もする。そういう意味でこの人命救助システムは自衛隊内では珍しい装備と言えるだろう。同様のシステムは海・空自衛隊の他、自治体等にも納入されている。
人命救助システムII 型 構成品
[個人用器材]
レスキューベスト レスキューリュック 多用途ナイフ
特殊作業手袋 スリングロープ ペンチ
ピック付き手斧(選択) 折畳み鋸(選択) 防塵マスク
防塵ゴーグル
[分隊用器材(10人用)]
エンジンカッター チェンソー 油圧式ジャッキ
油圧式カッター ピック付きバール ピストン式破壊工具
救助用ロープ サイレン付き警報機 捜索用投光器
組立て式簡易トイレ 収納ケース
[小隊用器材(25人用)]
エアジャッキ エンジン式削岩機 救助用誘導棒
背負い式消火ポンプ 作業用照明具 手動式ウインチ
収納ケース
[中隊用器材(50人用)]
破壊構造物探索機 探索用音響探知機 油圧エンジンポンプ
手動油圧ポンプ カッター(切断機) スプレッダ
ラムシリンダー 手動式コンビツール 可燃性ガス検知器
検電器 万能運搬具 三連伸縮梯子
救助用三脚 折畳式リヤカー 収納ケース
人命救助システムII型コンテナ
[その他分類不明・共通]
拡張式コンテナセット
広域作業用照明具
救助用ロープ発射機