東京都交通局5300形電車(とうきょうとこうつうきょく5300がたでんしゃ)とは、東京都交通局(都営地下鉄)浅草線用の通勤形電車である。
概要
車両冷房化などによるサービス向上と老朽化した5000形の置き換えを目的 に1991年(平成3年)3月31日から営業運転を開始した。
MT比4M(電動車)4T(付随車)構成の8両編成27本計216両が在籍する。
本形式のデザインは日立製作所デザイン研究所が行ったものである 。外観デザインは都営浅草線が走行する銀座などの都会的センスあふれるイメージを表現したものとし、内装デザインは浅草・隅田川など下町情緒や東京の粋を感じさせるものとした。
設計にあたっては、21世紀を目指して以下の項目をコンセプトにした 。
都会的センスあふれる斬新なデザイン
明るくさわやかな車内
乗り心地の良い車両
サービス向上で利用しやすい車両
新技術を取り入れメンテナンスフリー化
前面は傾斜した流線型で左右非対称のデザインとし、正面にはプラグドアの非常扉を設置した。行先表示器には都営地下鉄の車両で初めてLED式を採用した。表示器の左右には丸い通過標識灯が設置されている。
アルミニウム合金製車体であるが、大形押し出し形材を多く使用して、車両の軽量化を図っている。特に外観デザインは、先に落成した都営12号線(都営大江戸線)12-000形1次車のイメージを意識している。車体塗色は軽快感と明るさを感じさせる「アーバンホワイト」に、ラインカラーの「レッド」、それを引き締める「ダークブラウン」の2色の帯を配置した。
側面の行先表示器と車側灯の周囲は黒く塗装して一体に見えるようにしている。車体側面は客用ドアが片側3か所、側窓は扉間の2連窓が下降式、車端側は単窓で固定式である。
内装は東京の粋な町である「浅草」をイメージしたものとし、具体的には都営浅草線に沿って流れる隅田川を中心とした早春に川沿いに咲く「桜」を表現することとした。
このことから、化粧板は「桜」をイメージしたもので、壁面を白基調の「トレンドシティ柄」、天井は白色とした清潔感あるデザインとした。床敷物は中央部を石目調グレイッシュピンク色、外側を薄茶色とすることで、「桜の花びらでおおわれた小道」を表現している。
座席はバケット式ロングシートであり、表地の色は背ずり(背もたれ)は「桜」を表現するコーラルピンク色、座面は「土の香り」をイメージするダークグレー色とした。
シルバーシート(現・優先席)は高齢者や障害者への尊重を表現する紫色とした。1人分の座席掛け幅はドア間の8人掛け(一部5人掛け)長いすが460mmだが、車端部は5人掛け(一部は2人掛け)で560mmとやや広めに確保されている。ただし、その後は濃いピンク色、優先席は濃い青色への交換が進んでいる(後述、床敷物も同様、改良点も参照)。
客室は握り棒や袖仕切りなど丸みのあるデザインを採り入れた。荷棚はステンレスパイプ式、側窓の巻き上げカーテンは「隅田川のさざなみ」をイメージしたものとした。
天井はラインフローファン方式を採用し、中央に補助送風機であるラインデリア(先頭車5台・中間車6台)の収納された整風板、両端に冷房吹き出し口がある。消火器は優先席部の座席下に収納されている。連結面間の貫通路幅は1,100mmと広く、貫通扉は2両に1か所片側に設置(4号車と5号車の連結部は両側設置)の両開き式でドアクローザ式である。
つり革は三角形である。後年に乗務員室後部を除きドア上部の線路方向にも増設された。増設部の吊革は最初の増設編成の5303編成のみ丸型、他は通常部と同じ三角形である。2001年頃からは8人掛け部で10個のうち2個、車端部は一般席6個のうち1個(優先席部は3個)を100mm低くしている。また、優先席部は2006年初めからオレンジ色のものに交換されている。
走行機器など
主電動機の1時間定格出力は165kW(5327編成は180kW)で、電動車1両に4基を装備している。主回路制御はGTO素子によるVVVFインバータ制御(三菱電機製T-INV1形、素子容量は4500V・2000A)を採用している。1基のインバータで4個の電動機を駆動する「1C4M」制御である。磁励音は一定の音階のまま起動前進するタイプである。車内では主電動機三相交流化により、都営地下鉄の車両で初めて客室内の主電動機点検蓋(トラップドア)が省略された。
ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、遅れ込め制御を併用する。
台車は近畿車輛製の軸箱支持装置に軸ばね(コイルばね)の前後を筒型積層ゴムブッシュにより違う高さで軸箱と連結したダイレクトマウント式の空気ばね台車(電動台車:T-1B (KD302) /付随台車:T-1C (KD302A))を装着している。ただし、直通先である京浜急行電鉄(京急)の車両規定により、ボルスタレス台車は採用していない。基礎ブレーキ装置は、電動車が片押し式踏面ブレーキ、付随車は片押し式踏面ブレーキ併用ディスクブレーキである。レール塗油装置は5310・5316・5326編成の7号車の押上(京成成田・印旛日本医大)側に取り付けられている。
補助電源装置は135kW出力のDC-DCコンバータ方式であり、電源変換は架線からの直流1,500Vを直流600Vに降圧し、空気圧縮機や冷房装置に供給する。さらに、この直流600Vを内蔵の静止形インバータ(SIV)で単相交流200Vに変換、また整流装置で直流100Vに変換するシステムである[7]。
冷房装置は冷却能力48.9kW(42,000kcal/h)の集中式を1基搭載している[7]。制御方式はインバータによる容量可変式を採用し、DCコンバータからの直流600V電源を使用するものである[7]。
編成
直通先である京浜急行電鉄の車両規定に対応するため、制御電動車を先頭車に配した4M4T構成である。
2006年11月3日に5200形が運用を終了したことにより、浅草線の所属車両は本形式とE5000形電気機関車のみとなったが、浅草線に新型車両を2015年度末より順次導入(2015年度は5編成を予定)することとしていた。その後計画は2年程度延期となり、東京都交通局中期計画によると、2017年度に1編成、2018年度に7編成、2021年度までに全27編成を入れ替える計画となっていたが、その後調達計画に大幅な変更があり、2017年度の予算で一挙に19編成を導入することとなった。また、2016年12月6日付でこの新型車両は5500形と型式名が発表された。今後、当形式全27編成を順次新型車両へ置き換えていくとしている。
基本情報
運用者 東京都交通局
製造所 川崎重工業(2次車)
日立製作所(1・4・6次車)
日本車輌製造(3・5次車)
近畿車輛(5・7次車)
製造年 1990年 - 1997年
製造数 27編成216両
運用開始 1991年3月31日
投入先 浅草線
主要諸元
編成 8両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1,500V
(架空電車線方式)
最高運転速度 浅草線内 70 km/h
京成線内 105 km/h
京急線・北総線内 110 km/h
設計最高速度 110 km/h
5327編成は 120 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
自重 26.0 - 34.5 t
編成重量 242 t
全長 18,000 mm
全幅 2,800 mm
全高 4,050 mm
台車 ボルスタ付空気バネ台車
KD-302・KD-302A形(都形式:T-1B・T-1C形)
主電動機 かご形三相誘導電動機
主電動機出力 165kW
ただし5327編成は180kW
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 97:16 (6.0625)
制御方式 GTO-VVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 C-ATS