京都市交通局10系電車(きょうとしこうつうきょく10けいでんしゃ)は、京都市交通局(京都市営地下鉄)烏丸線用の電車である。
1981年(昭和56年)5月の烏丸線開業時に4両編成9本が導入されたのち、延伸、近鉄京都線への乗り入れ開始などに対応して増備され、1997年(平成9年)6月の国際会館駅延伸以降は6両編成20本(120両)が在籍する。関西地区で初めての傾斜した前面形状を採用、 アルミ製の20 m級車体に両開き4扉を備える。京都らしい色として、京都市営バスと同じ緑色の帯が前面貫通扉部と側面窓上に入れられた。1981年(昭和56年)の烏丸線開業時に準備された9編成、その編成に後年追加された中間車、それ以外の車両ではそれぞれ外観、装備品などが異なる。
烏丸線開業時に投入された4両編成9本を1・2次車、4両編成を6両編成化する際に製造された車両を増結付随車、それ以外の車両を3次車以降、烏丸線京都駅で北側を北寄り、逆側を南寄りと表現する。編成単位で表現する必要があるときは、車両番号の下2桁を用い、第01編成などの様に表現する。
京都市交通局初の地下鉄路線として建設された烏丸線用の電車である。アルミ製、両開き片側4扉の車体構造をもち、側面窓上部と正面非常用貫通扉に京都らしい色として京都市営バスと共通の緑色の帯が入れられている。内装は暖色系で、シートは緑色、登場時から全車に冷房装置を備える。1981年(昭和56年)5月の烏丸線開業時に4両編成9本が準備されたのち、1988年(昭和63年)6月の竹田延伸開業時に中間車2両を追加して全編成が6両編成化されるとともに6両編成5本が増備された。烏丸線延伸などに伴って順次増備され、1997年(平成9年)までに合計で6両編成20本、120両が製造された。開業時に準備された車両と、それ以外の車両では外観、車内の装備、機器配置などが異なる。1988年(昭和63年)8月からは近畿日本鉄道(近鉄)との相互乗入が始まり、当初は新田辺までの普通列車[20]に、2000年(平成12年)3月からは新田辺発着の各駅停車に加えて急行として近鉄奈良まで運転する列車にも充当されている。
外観
アルミニウム製、20 m級の車体に1,300 mm幅の片側4箇所の両開き扉を備える。前面は関西の電車として初めて傾斜した形状が採用され、正面向かって左側に上下に分かれて開く構造の非常脱出用貫通扉が設けられた。正面中央上部に行先表示装置、その両側に前照灯が、正面窓の下部に標識灯と尾灯が設けられた。車体外観はアルミヘアライン仕上げに化粧皮膜がかけられ、京都らしい色として京都市営バスと同じ緑色の帯が正面貫通扉部と、側面幕板部に入れられた。連結部妻面には汚損防止のため、ステンレスの板が貼られた。烏丸線開業時に準備された4両9編成と、竹田開業時以降に製造された6両11編成とでは前面形状、正面貫通扉の窓有無などの外観上の相違がある。増結付随車の外観は編成を組む他の4両とほぼ同様となっている。
内装・運転室
車内はすべてロングシートであり、シートの表布は緑色、壁は花柄のベージュ、天井は白とされた。つり革は三角形のものが採用されている[24]。1・2次車の側窓は騒音低減と保守の容易化のため固定窓とされ、非常時の換気用として妻窓の上半分が下側に開く構造となったが、3次車以降は側窓が開閉式となったため、妻窓は固定されている。各車両に換気扇3台を設け、車内灯取り付け部の隙間などから車内の空気を吸い出す構造を採用した。1・2次車には扇風機などの送風装置は設けられなかったが、3次車以降と増結付随車ではラインフローファンを採用したため、天井の見つけが変更されている。北山開業までに用意された17編成には編成に1箇所、南から2両目(1200形)の北寄りに、国際会館延伸時に増備された3編成(6次車)については全車両に車椅子スペースが設置された。車椅子スペースの設置は日本の地下鉄車両として初である。乗客にドア開閉を予告するブザーが各扉に設けられている。車内灯は40 W(AC200 V・60 Hz)の蛍光灯が先頭車20台、中間車22台設置され、予備灯として20 W(DC100 V)の蛍光灯が各車に4台設置された。
運転室は全室式とされ、大きな正面ガラスを採用して視界の拡大がはかられた。デスクタイプ、力行、制動を別ハンドルで前後に操作する2ハンドル形の運転装置が採用された。乗務員室灯として20 W(DC100 V)の蛍光灯が2台設置された。
走行関係機器
保安装置は烏丸線内用として高周波連続誘導・車内信号式の日立製作所(以下、日立)製ATCが、近鉄線内用として三菱電機製変周式・デジタル形ATSが搭載された。ATCには75・60・45・25・15・01・02・Xの8段階の速度信号があり、信号系は三重、電源系は二重になっている。
主制御器は三菱電機製、1台で2両分8個の主電動機を制御するフロン沸騰冷却式の回生ブレーキ付サイリスタチョッパ制御装置が、制動装置は同じく三菱電機製の電気指令式ブレーキ(MBS-R)が採用された。ブレーキは常用、非常、予備の3系統を備え、ATCブレーキが運転士の手動操作に優先するようになっている。常用ブレーキは7段階あり、乗車250 %まで電空併用により一定の減速度が得られる。第15編成以降の主制御器には脱フロン化がほどこされている。
台車は住友金属工業(以下、住友金属)製S形ミンデン式FS505系が電動車に、FS005が付随車に使用されている。電動車の台車は先頭台車(FS505A)とそれ以外(FS505B)で形式末尾のサフィクスが異なっている。主電動機は東芝製直流直巻式SE-632(1時間定格出力130 kW・375 V・386 A)、駆動装置は住友金属製平行カルダン(歯車式)、歯車比は99:16 = 6.19のものが採用された。パンタグラフは東洋電機製造(以下、東洋)製下枠交差形PT4813-A-Mが、中間電動車に2基ずつ搭載された。先頭部の連結器は住友金属製CSD-90密着連結器が、編成中間部の連結器は同じく住友金属製のCSE-80半永久連結器が採用された。
車載された各機器の状態を監視し、非常時の対応指示を運転台背後のディスプレイに示すモニタ装置が設置されている。
空調装置
車両中央の2基は一体のカバーに納められ、2基の間に換気装置がある
全車両の屋上に4基冷房能力12.2 kW(10,500 kcal/h)の三菱電機製CU194冷房装置が搭載された。車両中央の2基は一体に見えるカバーに納められた。3次車以降と増結付随車は電力消費低減を図ったロータリー形に変更されている。各車に3台換気装置が設けられ、3次車以降と増結付随車では冷房効率向上のためラインフローファンが追加された。換気装置には強制的に3台を運転するモードと、乗車率150 %未満の時は1台、それ以上の時は3台を運転するモードがある。暖房装置は1・2次車では反射式、3次車以降と増結付随車ではシーズ線式のものが座席下に設置された。
形式構成
10系は下記の6形式で構成され、各形式20両が製造された。付随車1300形・1600形を除き、下2桁01 - 09が1・2次車に、10 - 20が3次車 - 6次車に属する。1300形、1600形は末尾01 - 09が増結付随車、10 - 20が3次車 - 6次車である。1400形、1500形は8両編成化を想定した欠番となっている。車両番号の上二桁が形式番号、下二桁が編成番号で、たとえば第16編成の1200形は1216となる[16]。
1100形
1100形の西側面と1800形の東側面に京都サンガF.C.の応援ステッカーが貼られている
南寄り先頭に連結される制御電動車である。全車に電動空気圧縮機が、1・2次車9両にはBL-MGが搭載されている。1・2次車と3次車以降では前面形状、側窓構造・形状、車内天井レイアウトなどが異なる。
1200形
南寄りから2両目に連結される電動車である。主制御器と、パンタグラフ2基をもつ。北寄りに車椅子スペースを備える。1・2次車と3次車以降では側窓構造・形状、車内天井レイアウトなどが異なる。
1300形
南寄りから3両目に連結される付随車である。1・2次車に組み込まれる1301 - 1309は3次車に相当するが外観は1 - 2次車と同一仕様である。3次車以降に組み込まれた1310 - 1320はBL-MGを搭載している。
1600形
南寄りから4両目に連結される付随車である。1・2次車に組み込まれる1601 - 1609は1300形1301 - 1309と同じく1 - 2次車仕様の外観で新造された。また全車にBL-MGが搭載されている点が1300形と異なる。
1700形
南寄りから5両目に連結される電動車である。装備、1・2次車と3次車以降の差は1200形と同様であるが、6次車以外は車椅子スペースがない。
1800形
北寄り先頭に連結される制御電動車である。装備、1・2次車と3次車以降の差は1100形と同様である。
運用:1981年(昭和56年)烏丸線開業にあたって用意された4両編成9本は、当時本格的な車両基地がなかったため、北大路駅西側に設けられた検車設備を用いて維持作業が行われた。開業時は9編成すべてを地下に下ろすと車両の入換が出来なくなることから、1編成は北大路駅の車両搬入口から地上に搬出して保管されていた。当初烏丸線は他路線と接続されていなかったため北大路 - 京都間のみで10系電車は運用され、1988年(昭和63年)8月の近鉄京都線との相互乗り入れ開始以降は各駅停車として新田辺まで運転されるようになった。竹田開業前後に4両編成で製造された編成も6両編成化されている。近鉄側では烏丸線乗入用に3200系6両編成7本を準備している。その後2000年(平成12年)3月のダイヤ改正より国際会館 - 近鉄奈良間の急行が設定された。近鉄ではこの改正に伴う烏丸線乗入運用の増加に伴い、3220系6両編成3本を新造している。烏丸線内の最高速度は75 km/h、近鉄線内での最高速度は105 km/hである。
京都市交通局10系電車
基本情報
運用者 京都市交通局
製造所 近畿車輛、日立製作所
製造年 1980年 - 1997年
製造数 120両
運用開始 1981年5月29日
投入先 (京都市交通局)烏丸線
(近畿日本鉄道)京都線・奈良線
主要諸元
編成 4両(登場時)
6両(1988年以降)
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1,500 V
(架空電車線方式)
最高運転速度 105 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
車両定員 144人(中間車)
130人(先頭車)
全長 20,500 mm
車体長 20,000mm
全幅 2,872 mm
車体幅 2,780 mm
全高 4,040(パンタグラフ無)mm
4,200(パンタグラフ付)[6] mm
床面高さ 1,200 mm
車体 アルミニウム
台車 S形ミンデン式空気ばね台車
車輪径 860 mm
固定軸距 2,100 mm
台車中心間距離 14,100 mm
主電動機
直流直巻電動機 (未更新車)
かご型三相交流電動機(更新車)
主電動機出力 130 kW
搭載数 4基 / 両
駆動方式 平行カルダン(歯車式)
歯車比 99/16 = 6.19
編成出力 2,080 kW
制御装置
サイリスタチョッパ制御
SiCハイブリッドモジュールVVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ(MBS-R)
保安装置 ATC
近鉄型ATS
備考 情報は製造時。制御装置