エアロエースは、三菱ふそうトラック・バスが製造している大型観光バスのシリーズ名である。
スーパーハイデッカーのエアロクィーン (Aero Queen)とハイデッカーのエアロエース (Aero Ace)。 かつては、二階建てのエアロキング (Aero King)もあった。
エアロエース/エアロクィーン(3代目)
2007年(平成19年)6月、15年ぶりにフルモデルチェンジを実施し、3代目エアロシリーズが発表された(発売は同年8月29日)。
ハイデッカーは従来のエアロバスからエアロエース(Aero Ace)へと名称が変更された。スーパーハイデッカーにおいては従来と同じエアロクィーン(Aero Queen)の名称が継続して使用されている。
エンジンは先代PJ-MS86JP系で採用された6M70がキャリーオーバーされているが、コモンレール噴射方式、高精度クールドEGRの高効率化技術が採用されるなど、エンジン本体に大幅な改良が加えられた。
また排気後処理装置として尿素SCRシステムを採用されることになった。この尿素SCRシステムは日産ディーゼル(現・UDトラックス)との業務提携により、同社より供給が行われ、スペースウィングやスペースアローなどと同一のコンポーネントとなっている。尿素水の消費量は燃料の3 %と見積もられている。
これら総合的なエンジンの改良により、新長期規制に適合したのはもちろんだが、省燃費性能や経済性、さらには動力性能も先代モデルよりも一層向上した。
さらにドライブトレインにも、タイヤの扁平・小径化、また低回転域のトルク増大に伴う最終減速比の変更が行われ、これにより静粛性も先代モデルより一層向上した。
車体や内装は、次の4つのコンセプトを元にしている。
三菱ふそうらしさを表現「ファミリーアイデンティティ」
飽きのこないデザイン「エバーグリーン」
情緒的で存在感あるイメージも込められた「クール&エモーション」
使いやすさを追求「ユニバーサルデザイン」
全高は、サブエンジン冷房車の場合、エアロクィーンは3.52 m、エアロエースは3.26 mである。直結冷房はエアロエースにオプション設定されているが、エアロクィーンでは全高の増大を避けるため設定がない。サブエンジン式エアコンは三菱重工製が標準、デンソー製はオプション。直結式はデンソー製のみ。
なお、初代エアロバス以来のスケルトンとモノコックの複合構造だったボデー構造は、エボバス(英語版:EvoBus)との技術交流も生かされ、今回から角鋼管材を全面に使用したオールスケルトン(マルチチューブラーフレーム)構造になり、フロント/リアパネルにはFRPを、サイドのロアパネル、ラゲッジリッドはアルミ製となっている。
ドライバーズシートも、本モデルから2代目エアロバスに標準装備されていたサスペンションシートが廃止され、固定シートのみとなった。ワンマン運行も想定して、インパネには3DINオーディオを装備出来るスペースが用意されている。
また、この車両は日産ディーゼル工業(現・UDトラックス)にOEM供給され、スーパーハイデッカーが「スペースウィングA」、ハイデッカーが「スペースアローA」として発売される。
2007年(平成19年)10月、エアロクィーン、エアロエース共にグッドデザイン賞を受賞した。
2TG-MS06GP
2017年(平成29年)5月15日発表。ポスト・ポスト新長期規制適合となり排出ガス記号が変更となった。エンジンが13L級の6R10から7.7Lの6S10へ、同時に組み合わされるトランスミッションがフィンガーシフト式6MTから“SHIFT PILOT”と呼称する8速AMTに、標準装備またはオプション設定されるリターダは永久磁石式から流体式に変更されている。またシフトレバーがインパネからコラム左側へ変更となり、ワイパーレバーをウインカーレバーと統合した。 またレバー併設ハザードスイッチが道路運送車両法改正により認可されなくなり、ハザードボタンをインパネに新設している。
空調システムは直結式だが、熱交換器はエアロエースが全車天井設置となり、床下設置はエアロクィーンのみとなった(共にデンソー製)。外観上ではサイドウインドウの前方下部に「FUSO AERO」のエンブレムが施され(非装着車もあり)、リアウインドウに上位グレードにはLEDシグネチャーライトが標準装備となったほか、AdBlueタンクが左リアオーバーハングから左後輪前に移設、エンジンルームのルーバーが再び車両右側の片側側面のみとなっている。室内は日野・セレガと同様、通路と客席の間がフルフラット化され、段差が解消されたことに伴いトランクルームの容量が増大している。ホイールベースはMS96V系の6095mmから再び6000mmに戻り、リアオーバーハングが少し長くなっている。
運転席周りはステアリングホイールやメータークラスタが同日発表の大型トラック「スーパーグレート」と同様の新しいものに置き換えられたほか、衝突安全ブレーキ等の機能も強化され、安全性を大きく向上させている。エンジンは従来、標準出力(257kW/350㎰)と高出力(309kW/420㎰)の2種類があったが、今回の新型エンジン搭載と8速AMT搭載によりその中間出力である280kW/381㎰に一本化された。新型小排気量エンジンとAMTとのマッチングにより、ドライバビリティや燃費も格段に向上している。さらにエンジンの軽量化により車両重量も軽減され、エアロエースでは定員増が可能になり、一部グレードでは62人の乗車定員を実現しているほか、全車リアサスペンションにワイドサスの搭載も可能になり、乗客の快適性も大きく向上した。
この代から型式が従前のMS96VPからMS06GPへ変更されている。
2018年9月27日、エレベータ搭載モデルをエアロエースに追加した。車両メーカーとしてのエレベータの架装は初であり、車椅子の乗降時間短縮、天候に左右されず車椅子の乗り降りを可能とした。