救命ボート(きゅうめいボート)とは、船舶における海難・水難事故(沈没も含む)時における脱出用や、水害時の被災者の救出、タグボートと同じ扱いで船を引っぱる際に使用する小型ボートのこと。転じて、船舶の体を成していなくても非常脱出・船舶補助用の機器・装置をこう呼ぶ場合がある。
概要
船舶に搭載するものでは、古くはカッターボートが用いられてきたが、素材の改良に伴いゴムボートも普及している。旅客機などの航空機では、洋上への不時着に備えてコンパクトに収納された、自動的に膨らむゴムボートが標準的に積まれている。
軍艦や一部の商船では銅板で作った浮体をぴったり並べて楕円形を作り、キャンバスで包んで床を張った救命いかだ(カーリーフロート)も盛んに用いられた。大型船舶に常備されるほか、水辺の監視所や水防倉庫・防災倉庫などにも配置される。水防倉庫や防災倉庫などに収納されているものの中には、アルミなどによる折り畳み式のものもみられる。北方洋で操業する漁船に積まれているものなどでは、大波に晒された悪天候下でも転覆しないようFRP樹脂製の密閉カプセル型のものもあり、被災者の生存率を高めるための様々な工夫が凝らされている。
船舶や航空機に積まれている脱出用の救命ボートや救命いかだの場合は、脱出後の漂流(サバイバル)に備えて様々な物が備え付けられている。(これらは船舶救命設備規則「第十四条第三項」の一覧にて定められている。) 代表的なものに非常食や通信機・飲料水ないし蒸留器、釣具や医療キット・発煙浮信号(救命浮標・救命浮環、(en:Lifebuoy)とセットで使い、遭難者に浮環の場所を知らせる)、捜索隊に存在を知らせる海面染色剤などがある。
陸上に常備しておくものとして、津波救命艇もある。
船舶に常備される救命ボート
救命ボートを軽視して乗船人数分の半分程度しか用意していなかったために大勢の犠牲者が出たタイタニック号の沈没事故を教訓に、現在の船舶では、本船乗員乗客数以上の救命ボート定員確保が義務付けられている。木製や金属製のボートの他、着水時に自動的に膨らむゴム、ナイロン製の救命いかだ(通常時はカプセルに詰められている)などが配備されている。これらは海で目立つよう白色、オレンジ色に着色されている。
動力は人力によるものや簡易の帆を持つものもあるが、その一方で電動機による船外機を持つものも見られる。より大型のものや水害時用のものでは、ガソリンエンジンによる大型の船外機が用いられる。ただし漂流物が多い場合はスクリューを損傷する恐れがあるため、やはり人力によるオールに頼らざるをえない。