海上自衛隊の「たかなみ型護衛艦」と「こんごう型ミサイル護衛艦」の主砲に採用されているオート・メラーラ 127 mm 砲です。
オート・メラーラ 127 mm 砲 (Oto Melara 127 mm gun) は、イタリアのオート・メラーラ社が開発した艦載砲システム。高発射速度と軽量化を両立し、優れた性能を有する。従来使用されてきた54口径長モデル (127/54 Compact) に加え、近年、新型の長射程弾に対応した軽量化64口径長モデル (127/64 Light Weight) も開発されました。
オート・メラーラ 76mmコンパクト砲のスケールアップ・モデルとして、オート・メラーラ社によって開発された速射砲システム。この当時使用されていたMk 42 54口径5インチ単装速射砲と同等以上の発射速度を維持しつつ、問題視されていた砲塔の重量化を解決し、40.6トンまでの軽量化を実現。
アメリカ海軍がMk 42の後継として開発したMk 45 5インチ砲とは異なるアプローチとして各国海軍より注目され、開発国イタリアをはじめとして、カナダ海軍や日本の海上自衛隊、韓国海軍などでも採用されました。
本砲システムは、露天甲板上の砲塔部と、その直下の即応弾マガジン・ドラム、さらにその下の下部揚弾ホイストおよび管制室より構成されます。
弾薬は、弾火薬倉から人力で取り出されて2系統の下部揚弾ホイストに給弾され、即応弾マガジン・ドラムに装填される。使用する弾薬は半固定弾薬で、Mk 42などで使用されるアメリカ軍の54口径127ミリ砲用の弾薬も使用可能です。また、新型の64口径長モデルにおいて対地支援射撃に使用するため、ヴォルケーノ減口径弾も開発されています。
即応弾マガジン・ドラムは3つ設置されており、砲塔旋回軸を中心に等間隔で配置され、各22発(計66発)が装填されている。各ドラムには異なった種類の弾薬を装填可能であり、従って、最大で3種類の弾種を即応準備弾として用意することができます。127/64 Light Weight では4つのドラムに各14発が装填される。
マガジン・ドラムに装填された弾薬は、コントロール・パネルの操作で必要な弾種が選択され、砲塔軸上に設置された上部揚弾ホイストによって砲塔内に運弾される。砲塔内の弾薬装填装置上で信管が調整され、砲に装填されることになる。発砲後、薬莢は砲身下部の排出口より砲塔外に排出されます。
砲塔は完全防水構造の強化プラスチック製シールドを備えており、Mk 45と同様、砲塔内は無人化されています。ただし下部揚弾ホイストへの給弾は人力であり、各ホイストあたり少なくとも2名の給弾手が必要であり、最大発射速度で発砲する場合、8名が配置されます。
2003年より、オート・メラーラ社は本砲の砲塔を軽量化するとともに砲身を64口径長に延長し、ヴォルケーノ減口径弾の射撃能力を付与する計画を実施。この計画に基づいて開発された砲は127/64ライト・ウェイトと呼称され、砲塔重量は25トンに軽量化されているが、発射速度は毎分35発に低下し、旋回速度も遅くなっており、対空射撃の比重が減ったかわりに、対地支援が重視されているものと見られています。
ヴォルケーノ減口径弾は推進薬と弾丸が一体化したユニタリー弾 (単弾頭弾) で、ペイロードは従来の半分に過ぎないが、射程は、従来弾の16キロメートルに対し約120キロメートルにまで延伸される。
通常砲弾のほか、対水上射撃を主眼とした赤外線誘導弾、沿岸射撃を主眼としたINS/GPS誘導弾が開発されています。
海上自衛隊は従来の汎用護衛艦では、はつゆき型以降オート・メラーラ製の76ミリ(コンパット)速射砲が装備されていたが、たかなみ型ではオート・メラーラ製の127ミリ砲が装備されました。これは、むらさめ型が76ミリ砲を搭載したことに対して、満載排水量で6,000トンにも及ぶ艦体に比してやや過小であるとの指摘がなされたことへの対応であると同時に、ヘリコプター搭載護衛艦としてはるな型(43/45DDH)を代替するひゅうが型(16/18DDH)が主砲を装備していないため、護衛隊群当たり127ミリ砲2門の火力減となることへの危惧と退役護衛艦「ながつき」を標的に行われた実艦的射撃訓練において76ミリ砲の対艦攻撃能力の低さが露呈したことも影響していると思われます。
この127ミリ砲はこんごう型に装備されているものと同様で、毎分40発程度の発射が可能である。127ミリ砲(弾重量32kg程度)は76ミリ砲(弾重量6kg程度)の毎分100発に比べると発射速度は低いが、射程距離と一発あたりの破壊力が向上したために、総体としての対空火力は拡大しています。
また、砲弾の威力が重視される対艦、対地攻撃能力も向上。さらに新規開発された76ミリ砲用の05式近接信管と新型の狭指向性HE弾頭とセットでの近接防空能力が確認されれば、今まで見送られてきた127ミリ砲用の新近接信管の開発も進む可能性があり、艦隊全体の近接防空能力の向上も期待しうる。なお、本級では対地・対艦射撃については、射撃指揮装置2型(FCS-2)を用いないモードがシステムに組み込まれています。
127ミリ砲の重量はシステム全体で40トン近くあり、約7.5トンしかない76ミリ砲に比べると約5倍あるため、艦内構造はかなりの変更が施された。(砲塔の重量支持も、76ミリ砲は上甲板支持だが、127ミリ砲では下層甲板支持であり異なる。)76ミリ砲搭載のむらさめ型より砲と艦体の大きさの釣り合いが取れた艦容となったが、VLSを統合させたこともあって艦体前部の重量が大きくなり、むらさめ型よりも凌波性能は悪化しました。
艦の前後に搭載された高性能20ミリ機関砲2基は、主として対空迎撃に使用されるが、FCS-2と連接することにより対水上射撃を行うことも可能です。
なお、4番艦からはオペレーターが赤外線カメラを目視しながら対水上目標への射撃が可能なブロック1bに変更されました。また、艦橋構造両舷のフラット前部に12.7mm重機関銃M2の銃座が設置できるほか、簡易マウントを使用してさらに74式車載7.62mm機関銃などの増設も可能です。
口径 127 mm (5 インチ)
システムの重量 37.5t (砲弾を除く、64口径型では25 t)
弾倉 66発 (3台のドラムに装填した場合)
弾丸重量 888 mm 砲弾: 15.44 kg
665 mm 砲弾: 31.75 kg
発射速度 45 発/分
連続発射可能弾 44発
上下角 最低俯角 -15°
最大仰角 +83°
射程 ±30 km (誘導式VOLCANO弾の場合100 km)
回転制限 右舷と左舷に165°(全部で330°)
回転速度 40°/s (加速度 45°/s2)
上昇速度 30°/s (加速度40°/s2)
冷却 水冷式
発射間隔 40 rds/分
電力供給 440V, 3相交流, 60 Hz (275kVA - 20% 最大出力0.4秒)