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野外炊具1号 陸上自衛隊装備

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1軸の小車両に炊具を搭載し、炊事車、炊事トレーラとも呼ばれる。野外で調理するための装備で、車両に牽引されて移動する。牽引走行中であっても炊飯が可能。灯油バーナーを使った炊飯器6基で600人分の米飯を炊き上げることが可能であり、併載する万能調理器具と、車両後部のかまどの使用で惣菜の調理も可能(煮物程度、焦げやすいので推奨は出来ない)その場合約200名分の食事(主食と副菜)が調理可能。味噌汁のみを6釜全てで調理すると1500名分調理が出来る(参考値、1釜あたり最大250名分の味噌汁の調理が可能)2004年に発生した新潟県中越地震の際には、新潟スタジアム横の駐車場に全国各地から100台以上の野外炊具1号が集結し炊き出しを行った。

最大炊飯能力:炊飯のみ:6釜で約600名分(災害対応時、おにぎりで約800名弱分炊飯することもある)主食・副食:汁の同時調理:約200名(焼き物の調理はほとんど不可・2釜で炊飯、2釜~3釜で副食調理、1釜で汁物、残りの1釜は予備および洗い物用の湯沸かし用)汁物のみ:6釜で1500名分(具材などにより多少の前後がある。ワカメのみなら1800名分まで調理可能)焼き物の調理:1釜で1度に数名~10名分、または30名分程度が理想。ただし、通常は焼かないで、煮込むなどの加熱処理をする場合、上記の約200名に該当する。揚げ物の調理:1釜で1度に5名~10名分程度の調理が可能。繰り返すことにより約200名分ぐらいまで対応する。
灯油バーナーの取り扱い:使用後は定期的にメンテナンスを必要とし、演習等で使用後はバーナーを本体から取り外し圧縮空気を使用して内部のカーボンや残油等を処理する必要がある他、各種パイプからバーナー内部のノズルとの接続部が振動等で緩みやすく使用中に燃料漏れを引き起こす可能性がある事から定期的に緩みのチェックを必要とする。また、構造が簡単な事から修繕には基本手順を守れば問題は発生しないが、無理な力を加えてノズルが破損する場合もあり、長期間の演習等においては予備のノズルを常に用意して交換出来るようにしておかなければならない。


灯油バーナーへの着火方法:ガソリン(または灯油)に浸した布(通常は武器の手入れに使われる布の切れ端か、ポータブルストーブの芯がそのまま流用される)のついた鉄の棒(太めの針金)にライターなどで着火してから、それを釜の中に挿し入れる。ガソリンと圧縮空気を適量出してバーナーに着火し、バーナー近辺の温度を上昇させる(これによりバーナー周囲の燃料パイプを加熱し灯油が気化しやすい状態を作り出している)その後バーナーの炎が安定(炎が浮き上がるのを待つと確実)したら、圧縮空気を弱めながら灯油を出し始める。夏季を除き、灯油を先に出してから次に空気を止める方が安定し、確実。灯油の炎が安定したら(夏季3分・冬季5分前後を要する)、ガソリンを止めて灯油だけで燃焼させる。ガソリンを止めて炎が赤くなるようならば再びガソリンをほんの少し加えて燃焼させ、一定の時間経過後ガソリンを止める。この手順にていかなる寒冷地、湿地帯、雨天条件などにおいても安定した着火をさせることは容易であるが、その操作手順を誤ると最悪爆発等の事故になることがある。火力調整は水道などの蛇口と同じで、反時計まわりで強くなるが、縦に設置されているので操作に慣れていないと間違えるケースがある。消火操作を正しく行なわなかった場合に灯油パイプが詰まっていることがあり、その際はガソリンのみで着火、継続燃焼させる場合もある(あくまで緊急避難的運用であり危険なので熟練した隊員が操作することが多い)
着火後バーナー内部のねじの緩みなどで燃料漏れが起こり発火する危険が非常に高いので、極力その場から離れないようにする。発火した場合は、燃料のメインバルブ(車両前部左右に設置)を閉めた後、水道(ポリタンク)の水や消火器で消火する。消火器の使用は炊飯作業などを考慮し、まことにやむを得ない状態に陥った場合の最終手段として用いる。


消火:灯油のバルブを閉めて炎が小さく落ち着くまで待つ。炎が落ち着いたら空気のバルブを開き、エアーでバーナーのパイプに残った燃料を吹き飛ばす。消火後、さらに三度空気を出して石油カーボンを吹き飛ばす。理由は消火と同時にバーナー内部が真空状態になりカーボンが吸い込まれて燃料通路(ニードル弁のオリフィス)が目詰まりを起こす場合があるため。目詰まりした場合は火力調整のバルブを消火の方へねじ込み、戻して再びねじ込む動作を繰り返すと目詰まりがとれる場合がある。改善がない場合は分解し、コンプレッサーなどで空気を送り込み強制的にカーボンを吹き飛ばす方法をとる。分解清掃は芯(ニードル弁のニードル)が折れやすく不慣れな隊員が行うと折ってしまうことが多い。芯のDEPOへの発注は届くまでに時間がかかること(約2年前後)が多いため、分解清掃には細心の注意が必要である。


エンジン:野外炊具1号には小型のガソリンエンジンを搭載しており、主に圧縮空気を生成するコンプレッサー、及びカッターの為に利用される。エンジンが不調になることが多く、圧縮空気を生成するのに時間がかかることがまれにある。圧縮空気を生成出来ない場合、大型トラックからエアホースによる供給が可能の他に自転車の空気入れによる充填も可能、前者は接続部に加工を施す事でホースを接続し、後者の場合は常に要員の一人が乗車して空気入れポンプの操作を行う必要がある。


カッター:野外炊具1号には裁断調理を容易にするエンジンに直結する交換式の低中速回転の回転式カッターを搭載しており、野菜類の輪切り、乱切り、小口切り、ぶつ切り、千切り、及びおろしの作成を得意とする。しかし、カッター自体があまり使われないことにより、操作に不慣れな隊員も多く、また、エンジンが不調になることが多くなることも重なり、利用する機会があるものの、頻繁に利用されない。
皮むき器:カッター横の円筒内部が野菜の皮むき器となっており、エンジンからの動力により回転しジャガイモなどの皮むきが容易に出来るようになっている。皮むき実施時及び整備時に多量の水を必要とする観点(皮むき時は剥けた皮の除去、整備時は付着した固形物等の除去等)から、水源が近くにある場合や水道が確保されている等の管理野営時に用途が限定される。
バリエーション:野外炊具2号 主に小部隊用の炊き出しに使われる。3つのかまどで構成。最大50名前後の炊飯が可能。

一部部隊(第2師団)では野外炊具1号が登場する前に使用されていた野戦釜を使用し、副食等を調理する部隊もある。その際、野外炊具1号の付属品である予備燃料タンクを同時携行しバーナーに直接接続して使用する。野外炊具1号は移動しながら炊飯を行うことも可能。但し、理論上可能であるというだけで前述のバーナーの芯が折れたりねじが緩み火災が発生する可能性が非常に高まるため、安全管理上全く行われない。駐屯地開放等でパフォーマンスとして行われる場合もあるが、炊飯時の内蓋が外れて炊きあがった飯が潰れてしまったり、機器の故障を誘発する危険性(特に火災)が非常に高まるため通常は絶対に行われない。可能であるとしても、圧力釜で閉じることを前提で炊飯ではなく釜の半分程度の水や汁物の加熱の程度しか行えない。一部メディアにおいて火力の調整が出来るようになり焼き物の調理が可能と紹介されたが、旧型でも火力の調整は可能(バーナーの火力調整を操作)ではあるものの、実際には新旧問わず焼き物を大量に供することはない。焼き魚を焼く際に浅釜を使用しても45分以内での200人分の焼き物は時間的・物理的に難しく、かつ使用後の手入れは食物油脂や焦げ付きなどを一切落とさなければならないため、焼き物の調理は推奨されてはいない。現場経験者ならば「焼き物は可能」とは言い切らないはずである。メニューに焼き魚が出る場合は大抵はボイル物である。結論として、焼き物は不可能ではないが運用上無理がある。芸能事務所の石原プロモーションが炊き出し用にこれらと同等の炊事機を所有している。

炊飯要領:1洗米した米を人数分用意する。2内釜2つ上段下段それぞれ均等に米を入れる。3外釜に規定量の水を入れて内釜を静かに沈める。4蓋を閉めて点火する。5止めるタイミングは蓋に手を当てて振動が治まった辺り(香ばしくなる匂いを上手に利用すると、普通の釜では炊けない非常においしく感じるお米が炊けるが、この方法を使用すると、あとで外釜の「おこげ」を取り除くのに鉄たわしを使用することになり、苦労する)目安は20分前後とするも米や水の分量に左右されるので点火後は10分を過ぎたら極力離れない方が望ましい。対流で吹きこぼれ始めてから暫く後吹きこぼれが治まってから5分以内におおよそ炊きあがる。6約20分間蒸らしを行う。各部隊によって炊飯要領は異なるものの、基本的に30分間水に浸した米2リットル分で10名分となる。下段のみで炊飯時は内釜1個で40名分(2リットルを4杯分)を限度とする(炊きあがった後の飯が潰れるため)上段も使用すると外釜1つで合計100名分の炊飯が可能であるが(製造メーカーによる検証)、美味しく炊くには上下釜4杯の80名分を限度とする部隊が多い。


揚げ物の調理方法:外釜も外して、揚げ物調理用の釜を設置する。食用油を投入後、中火で点火を行ない、一度に5~10名分ずつ調理を行なう。
焼き物の調理方法:事実上、焼くことは可能であるが、火が通りきらない為、間接的な調理となり、直接調理を行なえない場合がほとんど。下からの火力しか存在せず、圧力釜であるものの圧力をかけないため、同時に数名~多くても2~30名分程度しか同時に調理を行なえない。肉料理の場合、事前に他の釜で蒸す、煮込む調理を行ない、揚げ物調理用の釜の上で中火~強火で一度に数名分ずつ焼く。焼き物とはいえ、焦げ目をつける程度のことしかできない。魚料理の場合、事前に他の釜で内釜も併用して蒸す調理を行ない、揚げ物調理用の釜の上で中火~強火で一度に数名分ずつ焼く。野菜炒めの場合、内釜に直接油をひいて焼いたり、蓋を閉じて蒸して調理を行なう。肉野菜炒めにする場合は、別途肉に火を通す必要がある。
副食調理に関する補足:マスコミ等に公表されている「200名分の食事を概ね45分で調理可能」はあくまで副食をレトルトパックなどで補った場合の目安であり、炊事車での副食調理は基本的に推奨されておらず(新旧問わず火力調整が難しく、可能としても外釜がそれに対応しておらず、弱火でも食材が焦げやすいため)、副食調理は直径1.5メートル程の大きさの野戦釜等を活用して調理を行う。炊事車本体での調理を行うとすれば比較的火力を気にせずに調理が出来る煮物等とするも焦げやすい事実に変わりはない。

 

 


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