水産庁漁業取締船 あらさき 499トン
現在の日本では原則として、都道府県知事が許可する知事許可漁業の漁業取締りは都道府県漁業取締船が行い、農林水産大臣が許可する大臣許可漁業の漁業取締りは水産庁漁業取締船が行うが、水産庁も司法警察権を行使し知事許可漁業への取締り権限を有する。また、水産庁取締船が外国漁船の違法操業に対しては拿捕などの主権行使を行っている。
水産庁では、漁業取締りを目的として、6隻の漁業取締船を保有しているが、日本の周辺海域を管理するためには、極めて貧弱な勢力である。
特に、漁業専管水域を200浬として以降は、極めて広大な海域となっている。
更には、日本の周辺海域は、豊富な好漁場であると共に、諸外国を含めた密漁乱獲が後を絶たない。
その為、水産庁では、不足する所用隻数を、傭船の形で編成に加えている。
当初は余剰となった漁船の転用が多かったが、昨今では、専用の船舶で代替建造も進んでいる。
その装備だが、基本的に銃砲等の武器は搭載していない。
が、放水銃が装備されており、必要に応じて制圧に使用される。
船橋上には探照灯やカメラが装備されている。
このほか、ゴムボートが搭載されており、移乗等に使用される。
煙突には、水産庁を示すファンネルマークが表記されている。
船橋横などには「水産庁」と表記されているが、水産庁保有の船舶にはほとんど記載されていない。
日本では、不法操業など、漁業に関する取締りは、基本的に水産庁の職責である。水産庁は、水産資源の適切な保存及び管理、水産物の安定供給の確保、水産業の発展並びに漁業者の福祉の増進を図ることを任務とする海の行政機関である。テレビ番組などでは不法操業の漁船の拿捕に海上保安庁の巡視船や巡視艇がよく登場するが、領海侵犯の類以外の漁業取締り自体は、あくまでも水産庁に協力しているに過ぎない。水産庁の漁業監督官及び都道府県の漁業監督吏員には漁業法に基づく特別司法警察職員に指名されている者もあり、漁業監督官は行政警察活動として漁船を臨検する権限を持つ。漁業に関する法令にかかる事件については、警察や海上保安庁に頼ることなく逮捕から送検まで水産庁が単独で執行することが可能である。それでも、警察や海上保安庁とは相互に協力関係を保ち、漁業取締りを行っている。
水産庁では、操業の監視や密漁の取締りといった行政警察活動を目的として、6隻の水産庁所有の漁業取締船を保有している。しかし、日本が有する広大な海域を6隻でカバーするのは不可能なため、民間から「やまと」「むさし」「ながと」以下30隻程度の船舶及び航空機をチャーターしており、これらによって、全国の漁場の監視や不法操業の摘発、違法に設置されている漁具の強制撤去処分を行っている。傭船については、船舶の操船は船会社の船員が行い、漁業取締り任務は、乗り込んだ水産庁漁業監督官が行う。船員は、漁業監督官の職務を補助する。
日常の業務は、排他的経済水域をめぐり、監視中に出会う漁船を停船させて立ち入り検査(臨検)することである。日本の排他的経済水域内にいる全ての漁船は、漁業法の定めにより水産庁の立ち入り検査を拒むことは許されない。立ち入り検査とは、漁船に積んでいる漁獲物の重さを計量し、「操業日誌」の記載と比較して整合性を確認する取締行動である。もし、量が合わなければ、密漁の容疑者として船長らを検挙することとなる。検挙を行う際は、現行犯を除いて、裁判所より逮捕令状の発布を受けて執行される。違法漁具の押収についても、洋上で取締船がこれを発見すると、無線で漁業調整事務所に連絡して事務所員を裁判所に赴かせ、令状の発布を受けた旨を連絡されてから執行される。近年は、事件の大半が九州沖または小笠原諸島沖で発生している。ほとんどの密漁者は、検挙されても素直に服従するが、一部の不法操業漁民のなかには抵抗する者がおり、単なる密漁が暴力事件へと発展したこともある。実際に起きた事件の一例には、対馬の沖で違法操業を行なった複数隻の韓国籍漁船が水産庁の停船命令を拒否して追跡を受けた際、そのうちの1隻に乗った韓国人密漁者が開き直って漁船を異常接近させたため、漁業監督官が船首にある砲塔から放水砲を発射して実力規制したところ、放水を浴びて逆上した密漁者が取締船に漁船を自ら体当たりさせて転覆、自沈をした事例がある(双方ともに無事だった)。
水産庁では、海上保安庁とは違って強行接舷や飛び乗りによる実力規制を控えている。立ち入り検査も、針路妨害や警告を実施して対象を停船させてから実施しているため危険度が低いとされ、殉職事故は現在まで発生していないが、容疑者に物を投げつけられて軽傷者が出たことがある。水産庁は監督官に特殊警棒を活用した護身術の訓練を施し、防護のためボディアーマーと安全靴を着装させる。更に安全帽と関節保護用プロテクター、防刃手袋を着装して立ち入り検査に万全を期している。
現行の法令では、水産庁の漁業監督官及び都道府県の漁業監督吏員には拳銃など銃器での武装は全く認められていないため、密漁の容疑者からの暴力を受けた場合は、特殊警棒による護身術で取り押さえる。あくまでも、護身術であって逮捕術ではない。 もしくは船首の砲塔に備え付けている放水砲の発射、音と光による威嚇、ミロク製カラーボール発射装置の使用による実力規制しかできない。なお水産庁では、カラーボール発射装置のことを「銃」と呼称している。
遠洋への進出や、排他的経済水域での長期間にわたる監視活動のため、速力ではなく航続力を重視し、遠洋型の船舶を用いる。船舶には、煙突や船橋に水産庁の紋章が掲示されている。高速を出せる船の数は少ない。長期間にわたる監視活動の中で精神衛生を保つため、乗組員は勤務時間外に船内で一定量を飲酒することが認められている。全国で41隻体制を目指している。
基本的に、以下の装備が備えられている。水産庁が取締目的でチャーターしている船にも、同等の装備が艤装される。
放水砲(船首に砲塔があり、立ち入り検査時に甲板上にいる容疑者の抵抗阻止のために使用)
サーチライト
拡声器
電光掲示板
暗視装置つきビデオカメラ(一部が装備)
取締艇(船に搭載されている高速の複合艇。立ち入り検査時に使用)
尚、水産庁の管轄海域は基本的に外洋であり、領海内については、各都道府県の管理となっている。
隻数
平成15年1月現在とされる資料によれば、32隻の傭船が活躍しているようである。
船舶一覧。
基本的に公式なものがないため、過去の資料の総和であり、現在の状況を示しているものではない。
あらさき、あらつ、いきつき、かちどき、かなえ、かなざわ、くろさき、しんゆう、しんりゅう、せとうち、第17利丸、第18利丸、第27京丸、たつまい、ながと、なのつ、はつたか、はやま、へいせい、みうら、むさし、やまと、雄洋丸、海鳳丸、海嶺、共新丸、昭南丸、新白鷹丸、新寶洋丸、第21興南丸、第22興南丸、第23興南丸、第一京丸、第五平成丸、第五洸洋丸、第十一利丸、第二共新丸、第二十五利丸、第二昭南丸、鷹山、北臨丸、勇新丸、雄山丸、雄翔丸、龍星丸、洸星丸