「艦これ」の1シーンでも出た伝声管(でんせいかん)は、金属管などを用いた通信装置。船舶や建築物などで利用された。今日では音波の原理を学ぶ教材として科学館などに設置されている。また、シークレットサービスの無線イヤホン(「アコースティック・チューブ」と呼ばれる)は伝声管の仕組みを利用したイヤホンである(機構が耳の部分にないため目立たなくなっている)。
直径の小さい管の中では音波は平面波のような状態で伝搬し減衰が少なくなるという原理を利用する。
映画などの船内の場面で,乗組員が壁に取り付けたラッパのようなものに向かって大声で話しているのを見たことがある方も多いことでしょう。あれは,今風に考えると電気を使ったインターホンのように見えるかもしれませんが,伝声管と呼ばれ,電気を用いず管を通して声を伝えるしくみになっています。昔は,中華料理屋なんかにもあって,1 階の調理場と 2 階のホールが伝声管でつながっており,注文のやり取りをしている店もありました。そのほかにも,児童公園に,例えばウサギの形をした遊具があって耳のところに開いている穴から話すと,離れたところにあるもう一つのウサギの耳から声が聞こえて,会話ができるようになっているものが比較的よく見られます。公園によってはウサギではなく,タヌキだったりキツネだったり…いずれにせよ遊具としては耳が目立たないとダメですね。音波の波長に比べて直径が十分小さい管の中では,音の波面は自由空間中の球面波のように広がることができず,平面波のような状態で伝搬します。これを利用して管内で平面波音場をつくり,平面波垂直入射に対する吸音率などを測定する装置もあります。平面波は減衰が少なく遠くまで伝わります。このことは,空調ダクトなどでは騒音が伝わり易い原因となるのですが,逆にこれを利用した「通信装置」が伝声管です。
この伝声管も音の伝わる様子を体感させる展示として,各地の科学博物館に見られます。なにぶん管の両端にラッパ状の「受話器」をつけただけの簡単な構造のものですから,どこの展示でも管の長さや形状などにいろいろな工夫がなされています。